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孤独に襲われ夜は、横尾忠則・穂村弘の「えほん・どうぶつ図鑑」を切り取って.

どこへ行っても自分の居場所を探しているような。きっとどこかで「誰か」が私を待っている気がして。それでも目が覚めると変わらない朝。

どうも。初っ端からポエマー気取りましたが、好きな人も恋人もいない時、途方もなくどうしようもない気持ちになる時はありませんか。わたしにはあります!

そんな気持ちに寄り添ってくれたのが、なんと横尾忠則のえほん

絵:横尾忠則 文(詩):穂村弘の『えほん・どうぶつ図鑑』です!

えほん、どうぶつ図鑑!!!!子供向け、ファミリー向けの本ではないのか???と思った方・・・!

ええ。独り身には、なんの関わりもないように一見思えますが、この本を読んでわたしは、ものすごく心が動かされました。これは運命の人を今かと待つ、独り身のための本といっても過言ではありません!

穂村さんの詩がとてつもなく素晴らしい。そして、絵本を使った仕掛け、コンセプトが、その願いを体現してくれます。

この本自体が、独り身を癒す、お家で楽しめる横尾忠則のインスタレーションアートなのです。※もちろん、お子様やファミリー向けにもオススメです

気になる内容は・・・ここで私も涙が溢れた、穂村さんの素晴らしい詩を引用させていただきましょう。

愛し合う夢を見ました。愛し合う夢を見ました。目が覚めると、窓の外はもう夕方でした。わたしにはだあれもいませんでした。それなのに、誰かの目が、わたしをじっとみつめています。鏡に向かうときも。ごはんを食べる時も。わたしはどんな姿をしているんだろう。
故郷の夢を見ました。故郷の夢を見ました。目が覚めると、いつも部屋の中でした。私にはだあれもいませんでした。それなのに誰かの目が、私をじっと見つめています。鏡に向かうときも。ごはんを食べるときも。私はどんな姿をしているんだろう。
故郷を抜け出して、こんなに遠くまで来た。故郷には、今も私の形の空白が残っている。私はどんな姿をしているんだろう。
愛し合う夢を見ました。愛し合う夢を見ました。そこはどこですか?あなたは誰ですか?ここを抜け出して、私はそこへゆきたい。あなたに出逢うために。そして、本当の私を知るために。私を切り抜いて下さい。あなたの鋏で。

あぁ、沁みる。。。

何が良いかって、誰にも共有できない自分の奥底の孤独の気持ちを言葉で表わしてくれているから。

自分の居場所がわからなくなって、故郷を離れて、イギリスに留学して、そして人口が少ない島に来て転職して、前進してみたものの、「心許せる人」「一緒にいて幸せだ」と思える人には出会えず。なんだか孤独です。

時々、懐かしい夢や故郷の夢を見て、涙を流します。でも、目覚めたら、島の静かな一人部屋に一人。「私にはだあれもいませんでした」がとてつもなく響きます。涙。

もしも、今後一緒に添い遂げる人がいるならば、早く自分を見つけ出して欲しい。「私はここにいるよ」と言わんばかりに、まだ見ぬ「あなた」に逢いたいという気持ちは高まるばかり。「私を切り抜いてください!!!」と「安西先生、バスケがしたいです!!!」レベルに切望。

…すみません、寂しさを押し出しすぎました。

気をとり直して、絵本についてですが、コンセプトが詩と連動していて素晴らしいです!穂村さんによると、『えほん・どうぶつ図鑑』にこの作品世界に「閉じ込められていると知らない動物たち」をはさみで切り取って、別の世界へと連れて行ってあげるという…!「バイロケーション」性を楽しみ、そして自分だけの作品(コラージュ)を完成させる仕掛けなのです!!!

例えば、横尾さんが描いたこちらの作品。本体ならば、「ラクダ」や「犬」はこの世界には存在しませんが、はさみで切り取ることにより、動物たちは閉じ込められた世界から別の作品世界へと次元移動できるのです。

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さらに、切り取る箇所が増えるごとに、動物たちの模様が変わってきて、動物そのものも変化していきます。例えば、このアザラシには、「ナポレオンの脚」や「電話」が模様として浮き出てきて、可愛い!!!

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巻末には、「どうぶつたちの部屋」というポケットがあるので、ポケットに切り取った動物たちを収納できます。

一人の夜の孤独に襲われた時は、勇気を持って、はさみで絵本を切り取って、動物たちと別次元への旅を楽しみましょう。いつかあなたも本当のあなたに出会えますように。一緒に頑張りましょう!

このブログの出典は、10月17日まで開催されている「GENKYO 横尾忠則【原郷から幻境へ、そして現況は?】」の展覧会のオンラインイベントの穂村さんの動画からです。横尾さんの絵本を紙芝居に?穂村さんの生声でこの本の詩を朗読をしてくれます!この絵本に惚れたのもの、このトークイベントがきっかけ。その他、横尾作品やGENKYO展の見どころを学芸員の藤井亜紀さんと一緒に紹介してくれます❤︎


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