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シン映画日記『テリファー 終わらない惨劇』

TOHOシネマズ錦糸町にて、ホラー/スプラッター映画『テリファー』の続編『テリファー 終わらない惨劇』を見てきた。

『THE MUMMY VS FRANKENSTEIN マミー VS フランケンシュタイン』のデイミアン・レオーネ監督・脚本作品で、2016年製作の『テリファー』の完全続編に当たる作品で、前作の生還者であるヴィクトリアも作中で出てくるが、主人公を女子高生と中学生の弟に変え、ハロウィンパーティーに参加しようとする少年少女の視点での物語とシリアルキラー「アート・ザ・クラウン」による惨劇を併せた極上のホラー/スプラッター映画に仕上がっている。

ピエロ姿のシリアルキラーが連続殺人を起こしたマイルズ・カウンティーの惨劇の1年後に、シエナとジョナサンの姉弟は、ハロウィンの夜に行われるパーティーに出るための衣装の準備に追われる。そんな中で、ジョナサンは学校であるトラブルを起こし停学処分を受けるが、その際にジョナサンは怪しいピエロ姿の男と遭遇してしまう。

前作『テリファー』の「マイルズ・カウンティーの惨劇」の影響を残しつつ、女子高生のシエナとその弟のジョナサン視点の物語を中心に据えることで、ハロウィンの日の学園青春模様とシリアルキラーが出るスラッシャー映画を見事に融合させ、デイミアン・レオーネ監督が幼い頃から見てきた70〜80年代ホラー映画を現代に上手くアジャストしている。

一番の特徴は執拗的な人体破壊や動物の死骸等を使った痛々しく、気持ち悪い描写・造形。ただ刺し殺すだけでなく、如何に辛うじて生かしながら被害者の人体、特に眼球、脳、内臓など、通常自ら弄り回せない部位を明らかにより痛そうにもてあそぶサディスティックなやり方でじっくりと壊していく。動物の死骸も敢えて気持ち悪い見せ方で見せる。テレビでは絶対放映禁止と考えられる限りの殺戮を138分存分に味わえる。

ただ人体破壊が凄まじいだけでなく、ある意味真の主演とも言えるデイビット・ハワード・ソーントンが演じるアート・ザ・クラウンの素晴らしさも特筆したい。セリフが一切なく、その全てをパントマイムと表情のみで表現した演技はこの上なく不気味。尤も、『13日の金曜日』のジェイソンも『悪魔のいけにえ』のレザー・フェイスも基本的にはセリフがないスラッシャー・キャラクターだから、アート・ザ・クラウンはそのスラッシャー・キャラクターの伝統を継承しつつ、ピエロのような戯けた動きと間合いで以て独自のキャラクターを築いた。特にパーティーグッズを取り扱う玩具屋でのレジカウンターでのやり取りはイチオシのコメディシーンになっているし、わりと前半にあるコインランドリーのシーンも不気味さ満点ながらコミカルさもある。

 

それとこれに応える襲われる側のキャラクターもしっかり立っている。クラブでのハロウィンパーティーに行きたい好奇心がありながらアルコール等に躊躇するシエナのうぶさや、彼女とは真逆に酒も男も開けっ広げでビッチな友人に狙いすまして変なTシャツを着る彼氏など、学園にしろクラブにしろ見所満載。また、シエナがハロウィンパーティーで纏うコスチュームはどことなくアメリカのファンタジー・テーブルトークRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の世界観があったり、さらに彼女の顔の右側のメイクがデヴィッド・ボウイの「アラジン・セイン」に近かったりし、これらは主人公シエナの亡き父親が描いた理想でもあり、そこに亡き父親が過ごした70年代カルチャーが込められていて、設定の奥行きの深さを痛感する。

この映画で繰り広げられる残虐描写はフロリダ産デス・メタルのカンニバル・コープスのアルバムジャケット使われるイラストレーターのヴィンス・ロックが描くアートワークの世界観に非常に近く、個人的にこの辺りを高校の頃から嗜んでいた筆者には非常に懐かしい。映画そのものにはフロリダ産のデス・メタルはかからないが、音楽担当がマリリン・マンソンのバンドの現ギタリストのポール・ワイリーであるので、BGMの一部にインダストリアル系のメタルが聞ける。一見、長尺のスラッシャー映画でありながら、細かく吟味すると50〜60年代のスリラー/ホラー映画をテレビで見ているシーンも含めて、あらゆる年代のサブカルチャーが散りばめられており、超過激な残虐描写と合わせて138分の間まるで飽きない。これぞ怪物級のスラッシャー映画!!

 


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