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何か食べたい

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食べ物関係の小噺
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丼

もう20年近く前の話になるが、Flashアニメを作り公開するのが流行っていた時期がある。ワタクシと同世代か少し近い方なら「懐かしいなぁ」とお感じになられるのでは無かろうか。

そのFlashアニメ全盛期の傑作のひとつに【ゴノレゴ】と言うシリーズがあった。
某アサシンのそっくりさん・ゴノレゴが巻き起こすおかしな日常(?)を綴った作品で、どちらかと言えばギャグに当たる。その第一作目で、ゴノレゴが牛丼チ

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「ごちそうさま」

「ごちそうさま」

度々カムアウトしているが、ワタクシは北海道の函館市出身である。
ワタクシが青春時代を過ごした時の函館と言う街は、個人経営の飲食店や喫茶店が頑張っている反面フランチャイズの外食文化が平成・令和よりも盛んでは無かった。それこそワタクシが学生の頃の函館には、マクドナルドもモスバーガーも吉野家も無かったのである。
昔の職場で、この事を話題に出したら当時の社長に嘘つき呼ばわりされて激しくなじられた事がある。

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美味し魚

美味し魚

「近頃は野菜の味が変わった」と言う声をしばしば聞く。
品種改良が進み、それまでの品種よりも苦みや辛味が抑えられ甘味が増した野菜が増えているのだと言う。トマトは甘くなり、キュウリは苦みが抑えられ、ピーマンやブロッコリーも以前より数段味が良くなった。
果物もまた然りで、例えばイチゴ。近頃出回っている品種は皆粒が大きい上にとても甘くて、そのままかぶりついても良い位に味が良くなった。
ワタクシが子供の頃は

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鶏肉が好き

鶏肉が好き

昔から、鶏肉が好きで良く食べる。

子供の頃は、母が作る唐揚げや、父が作るコーラ煮が楽しみのひとつだった。
母が作る唐揚げは所謂【ザンギ】と呼ばれる北海道スタイルのもので、醤油ベースの漬けダレに鶏肉を漬けて揉み込んでから、片栗粉をはたいて揚げる。
コーラ煮は、手羽元をコーラで煮込むシンプルな料理だが、煮えた鶏肉にかぶりついた時の独特な甘さが楽しかった。鶏肉を煮込んだ汁はひと晩経つとゼラチン質で固ま

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フグは食べたし命は惜しし

フグは食べたし命は惜しし

嘗て奉職していた職場の近くに高級寿司店があった。
フランチャイズ乍ら朝の早くから店を開け、大勢の客で賑わう大きな店だが、ワタクシは結局、一度もその店の門を潜る事無く前述の職場を離れた。
その店のショウウィンドウに大きな水槽があり、活きた魚が多数放たれて鰭を動かしていたのを今も覚えている。

多くはアジであったりタイであったりするのだが、いつかの冬のある日、寒さの為かフグの需要が盛んの様子で、大

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生卵

生卵

映画【ロッキー】で、シルベスター・スタローン演じるボクサーの主人公が自身の運命を賭けた一戦の前に、大きなジョッキに大量の卵を割り入れてそれを一気に飲み干すシーンがある。
英語圏では生卵をそのまま食す行為は野蛮な奇行(平たく言えば下手物扱い)と考えられており、海外ではこのシーンがスクリーンに映し出された時には客席から悲鳴が上がったそうである。
【ロッキー】のこのシーンは【主人公が背水の陣を覚悟した上

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スロウ・クッキング

スロウ・クッキング

何の気無しにnoteの新着記事を眺めていたら、猪肉をラフテー(沖縄料理のひとつで、豚の三枚肉を皮つきのまま濃口の味つけで炊いたもの)にする内容の記事があって、その中に概ね以下のような記述があった。

「ジビエは【スロウ・クッキング】が基本です。美味しくジビエを食べる為には、下処理の手間暇を惜しんではいけません」

成る程…と思った。

畜肉は調味料と調味器具さえあれば大抵短時間の調理で美味しく味わ

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片手で卵を割る

片手で卵を割る

ワタクシは両手を使って卵を割る事が出来ない。

自律神経失調症が出始めて四肢弛緩を発症するようになってから、左手のコントロールが上手く行かなくなった為だ。
両手で卵を割ろうとすると左手の力が強過ぎて卵を潰してしまい、崩れた黄身が白身に混ざってどろりと零れ落ちる結果になる。
オムレツやスクランブルエッグを作るなら未だしも、目玉焼きを作る時にこうなると興醒めも甚だしいものがある。黄身が半熟の目玉焼きを

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アボカドのビシソワーズ

アボカドのビシソワーズ

そう言えば、アボカドが日本でメジャーになったのはいつ頃の話であっただろうか。

アボカド。クスノキ科に属する南米産の植物で、暗緑色の外皮に包まれた雫型の実をつける。和名は【鰐梨】(わになし)。熟した果実は包丁を入れるとすいすいと切れ、中にはピンポン玉よりやや小さい位の丸い種が入っている。黄色みがかった緑色の果肉は脂質に富みかなりねっとりとした食感で甘みは殆ど無い。その性質から【森のバター】とも呼ば

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シュラスコの思い出

シュラスコの思い出

ブラジルと聞いて、皆様は何を連想するだろうか。
常夏の国、リオのカーニバルで踊り狂う麗しのボニータの群れ、サッカー、大河アマゾンに育まれた豊かな大自然…etc、etc…。

そんなブラジルは、実は世界有数のコルネ(食肉文化)の国である。
日本人がコメを食べるのと同じ感覚で、ブラジルの人々は肉…特に牛肉をよく食べる。1日の食事のうち3度に2度は肉中心の献立だと言う。

ブラジルの肉への依存度を示す以

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蛇料理

蛇料理

まだワタクシが東京都・文京区に住んでいた頃、文京区の隣の台東区・上野御徒町に蛇料理専門の店があった。漢方薬屋も兼ねていたかと記憶している。立地は確か御徒町駅からそんなに遠くは無い場所だったと思う。今もあるのだろうか。

大抵の人が対面すると「おわっ」となる蛇だが、実は食材としての歴史はかなり長い。ただ、どちらかと言うと常食よりは【薬喰い】の側面の方がかなり強い。マムシの黒焼きの滋養強壮効果は頓に有

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パンを珈琲に浸しながら

パンを珈琲に浸しながら

子供の頃に食事の面で厳しく躾けられると、大人になった時に反動で刷り込まれたタブーを破りたくなる瞬間がある。
我が実家は母方の祖父と祖母がそうしたテーブルマナー(?)に煩かった影響もあり、母が食事のマナーに大変厳しかった。
例えば、お茶漬けは「呑兵衛の食べ物だから」と言う理由で成人するまで殆ど禁じられて居たし、サラミソーセージは「鼻血が出るから」と言う理由で少ししか食べさせて貰えなかった記憶がある。

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酔中の粋

酔中の粋

今は健康上の理由から酒を嗜まなくなって久しいが、若い頃は割と独りで飲み屋に行くのが好きだった。

ワタクシは元々、気の置けない間柄の人間とでも無ければ、他人と共に酒宴を囲むと言う事が出来ないタチである。
理由は、社会人成り立て〜20代の頃に務めていた職場が悉く体育会系で、しかも飲み助の集まりばかりだったからだ。つまり当時無理矢理参加させられていた宴席での経験がトラウマになってしまっている訳である。

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目黒の田楽

目黒の田楽

古典落語の演目のひとつ【目黒の秋刀魚】は、市井の事を知らぬ殿様がサンマの美味しさに気づいた事にまつわる珍事がテーマになっている内容である。最近の寄席で演じられているのかは寡聞にして知らないが、目黒区が近頃秋になるとサンマを焼いて観光客に振る舞うイベントを行っているのを鑑みるに、名前だけは知っている…と言う方も多いのでは無かろうか。

ところで、これは最近になって明らかになった事だそうだが、江戸時代

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