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鶏肉が好き

昔から、鶏肉が好きで良く食べる。

子供の頃は、母が作る唐揚げや、父が作るコーラ煮が楽しみのひとつだった。
母が作る唐揚げは所謂【ザンギ】と呼ばれる北海道スタイルのもので、醤油ベースの漬けダレに鶏肉を漬けて揉み込んでから、片栗粉をはたいて揚げる。
コーラ煮は、手羽元をコーラで煮込むシンプルな料理だが、煮えた鶏肉にかぶりついた時の独特な甘さが楽しかった。鶏肉を煮込んだ汁はひと晩経つとゼラチン質で固まってゼリー状になると言うのも、コーラ煮と言う存在で知った。

時には鶏もも肉の骨つきを買ってきて、シンプルに塩と胡椒だけで味をつけてオーヴンでじっくり焼いたものが食卓に上る事があった。鶏肉と共にオーヴンに入れられた野菜が鶏肉の脂を吸って柔らかく焼き上がるのがまた素晴らしかった。皮目の焦げた金褐色と火が通った白い柔らかな肉のコントラストは忘れられない。凝った味つけは無かったが、頗る美味だったと記憶している。北海道は牧畜が盛んな土地柄だが、鶏の飼育にも向いていたのだろうか。

長じて進学した農業高校では、しばしば実習でスモークチキンの仕込みを行った。ブラジルから輸入された冷凍の丸鶏に下処理を施し、マリネ液に数日漬け込む。
それを燻製窯に吊るして桜のチップで燻すのである。
一度だけだが、学校で飼育していた採卵用の鶏の内、歳を取り卵を産まなくなった老鶏を屠って羽を毟り、同じようにスモークチキン用に仕込んだ事があった。
ワタクシは直接鶏をシメる事は無かったものの、首を刎ねられて吊るされた鶏の生命力の強さは今も印象に残っている。
少し話がズレるが、アメリカでは首を刎ねられた後、呼吸用と経口食摂取用の特殊な管を首に挿入する事により、1年余り首が無い状態で生き続けた【マイク】と言う鶏が居た事が知られている。

鶏の肉程、世界中で食べられている肉資源も無いだろう。
牛を聖獣と見做し食べないヒンドゥー教徒も、豚やイノシシを穢れた生き物と見做し食べないイスラーム教徒も、鶏は食べる。確か鶏肉は、宗教的な【タブー】が存在しない数少ない畜肉では無かったかと思う。

明治時代に海外から様々な料理が日本に齎され、それにより日本の食卓に変化が訪れたのはこの場で語るまでも無い話であるが、現代日本で人気が高いメニューであるカレーライスもこの頃日本に入ったものである(江戸時代にも紹介された事があるそうだが、定着しなかったようだ)。
この時に齎されたカレーはインド式のそれでは無く、イギリスでアレンジされたとろみのあるルウのそれである。
当時のイギリスカレーは具材にヒツジの肉を用いたマトンカレーが主流だったそうだが、日本ではヒツジの肉の入手が難しかったのか、代替品として鶏肉が用いられた。
丸鶏でスープを取り、別に茹でた鶏肉を裂いて、カレー粉と炒めたタマネギを合わせて練ってからスープで伸ばし、最後に茹でた鶏肉をルウに合わせて仕上げる(そう言えばCoCo壱番屋の定番メニューに【チキン煮込みカレー】と言う品がある)。現代も、チキンカレーは人気のカレーのひとつだ。
当時のイギリスのカレーはマトンカレーが主流だった、と先に述べたが、明治維新の頃のヒツジの肉は品種改良が進んでいない事もあり、今のヒツジ肉よりかなり臭みが強かったそうだ。もしもヒツジの肉を使ったカレーライスがそのまま日本に定着していたら、現代のカレー人気にも影響があったのでは無かろうか。

そんな事をつらつらと書いていたら、いつかの冬のある日の出来事を思い出した。

その日は殊更冷えが厳しい日だった。体の温まるモノが食べたいと思ったワタクシは、近所のスーパーマーケットを物色していた。

その日は、たまたま鶏肉が大安売りだった。
早速ワタクシは鶏肉と、ピーマンと、タマネギと、ホールトマト等の調味料を買ってきて、スープを拵えて食べた。
美味しかったし、体も温まった。

アメリカでは【チキンスープを食べると風邪をひかない】と言う俗信がある。これを検証する為に、一年間チキンスープだけ食べて、傷病疾患の感染と自然平癒のバランスを調べ上げた医学者がアメリカに居るそうだ。体を張ったスケールの大きな実験である。

折角なので、この時に作ったチキンスープのレシピを記載してシメとしたい。因みに四人前換算である。

【材料】
鶏もも肉 700~900グラム
タマネギ(握り拳より大き目のモノ) 2個
ピーマン(肉厚なモノが望ましい) 5~6個
ニンニク 1~2片
トマトジュース 200cc
ホールトマト(400ccのモノ) 2缶
水 500cc
塩 適量
胡椒 適量
固形コンソメ 1〜2個
バター(マーガリンでも可) 適量

1.鶏肉は食べ易い大きさに切り、塩を振って下味をつける

2.タマネギは皮を剥いて適当な大きさに切る

3.ピーマンは半分に切ってから種を取り除き、これも適当にカット

4.熱した鍋にバターを溶かし、包丁の背で潰したニンニクを入れて、香りが出るまで炒める

5.ニンニクに火が通ったら鶏肉を入れ、色が変わるまで炒める

6.次にタマネギを入れて更に炒め、タマネギがやや透明になったらピーマンを入れて軽く炒め、塩、胡椒で味をつけ、水を入れてひと煮立ちさせる

7.沸騰したらコンソメを入れて更にひと煮立ちさせ、ホールトマトとトマトジュースを入れ、鶏肉が煮えるまでやや弱めの中火で煮込む

8.適当な器に盛り付けて出来上がり

簡単なので一度お試しあれ。

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