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15秒で読める小説

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15秒で読める!140字創作小説
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2021年11月の記事一覧

【140字小説】焼きそば屋さん

【140字小説】焼きそば屋さん

「疲れたなぁ!」

仕事帰りのお母さんがそう呟いた日だけ、僕の家に焼きそば屋さんが現れる。

「へいらっしゃい!お肉増量!卵も乗せちゃうよ!」

あっという間に美味しそうな焼きそばがテーブルに並ぶ。

焼きそば屋のおじさんは、ちょっとお母さんの顔に似ていた。

【140字小説】蛾ん虫(ガン無視)

【140字小説】蛾ん虫(ガン無視)

「こんばんわ」

深夜、もぞもぞ蠢く者達が俺の布団を囲んでいた。

「私達は貴方の撒いた殺虫剤のせいで蝶になれなかった芋虫です」

「蛾になれなかった芋虫もいるぞ〜」後ろの方でそんな声もする。

芋虫達の吐く糸で蛹にされた俺は、永い永い蝶の夢を見る。

「蛾はどうした〜」

【140字小説】独裁スイッチ

【140字小説】独裁スイッチ

「ドラえもんに独裁スイッチっていう道具があるの」

_うん。

「嫌いな奴を消せるスイッチなの」

_うん。

「私それ持ってたら1番にアンタ消すわ、うざいから」
そう言ってニヤニヤと友香は笑った。

私は黙って帰宅し、独裁スイッチを取り出して友香を消した。

【140字小説】rainy season

____朝は久しぶりに気持ちよく晴れてたのに。

1人でお弁当を食べていると、ガラス窓を雨粒が勢いよく打つ音。

その音は大勢の囁きに変わり、やがてクスクスと嘲笑に変わり…あぁまた私はずぶ濡れだ。

教室を抜け出し服が乾くのを待つ。

どうせこの場所は1年中雨季なのだけど。

【140字小説】真夜中我が家奇譚

【140字小説】真夜中我が家奇譚

夜中、尿意で目覚める。

時計のカチコチという音が耳につく中ドアを開ければ、長いタイルの廊下が伸びていた。

…あれ、寝室の時計って静音仕様じゃなかった?
…ウチの廊下はフローリングじゃなかった?

考えないようにしてトイレを済ませ、布団に戻ってぎゅっと目を閉じる。

【140字小説】炎上必至

【140字小説】炎上必至

___SNSってすぐ炎上するから怖い。

響子は身震いしながらTwitterアプリを閉じた。

___今まで時事問題や主義主張を多く呟いていたけれど、これからは無難に食べ物とペット写真だけUPしよう。

そう決めた響子はカニバルの女。美しい成人男性を自宅の一室で飼育している。

【140字小説】深海リビング

【140字小説】深海リビング

取り込んだ洗濯物を山積みにすると、息子が寄ってきて音もなく畳み始める。

私は何故だか海底の鯨の死骸に集まるグソクムシを思い浮かべる。

その一瞬、我が家の狭いリビングは確かに深海なのだ。

暗くて寒くて静かで暗い…………

「終わったぁ!」
元気な声で我に返る。

【140字小説】ひぐらし

【140字小説】ひぐらし

カナカナカナ…
ひぐらしの声。

プールからの帰り道。

「ひぐらしが鳴くと夏休み終わっちゃう感あるねー」私は横を歩く友人に言った。

「違うよ、あれは私を呼んでる声だよ」

その瞬間、湿度を帯びた重苦しい風が吹き抜ける。

新学期、友人は…香奈は登校してこなかった。

【140字小説】隣人

【140字小説】隣人

お早う、新しい町!新しい1日!

憧れの新築戸建て。広く機能的な玄関でおろしたてのサンダルを履きドアを開ける。差し込む朝日。

目の前を白いバンがゆっくり通過した。後部座席一杯に目だけギラギラ光る青白い子供達。バンはお隣の駐車場に停まった。

…お仕事、何してんねやろ?

【140字小説】助言

【140字小説】助言

ずっと何かを忘れて生きてるでしょう?

忘れてる事すら忘れてるくらい朧げな何か。

そうして浴室で1人、
目を閉じ髪を洗っていると
脳裏にぼんやり浮かんでくる何か。

…それ以上考えないで!

“何か”が輪郭を取り戻したら
きっと貴方が目を開けたとき
後ろに立っているから。

【140字小説】ずっと探してる

【140字小説】ずっと探してる

おおお…

あの素敵なおうちはどこですか?

坂の街の上のほう。

白壁に緑色の屋根が映える。

手入れされた庭。

毛並みのいい大きな犬。

駐車場にはお洒落な黄色い車が

停まってる。

僕が昨日さらわれて殺された

あのおうちは一体どこですか?

おおお…おおお怨

【140字小説】ノンフィクション

【140字小説】ノンフィクション

雨が降っている。
遠くでサイレンが鳴っている。
前にもこんな夜があったような。
それとも映画で観たワンシーンの記憶だろうか。
映画の中では殺人鬼が侵入して家人を…。
___ガシャン
暗い玄関の方で何かが割れる音がした。

【140字小説】クリームソーダ

【140字小説】クリームソーダ

青い海に白い入道雲。

「クリームソーダみたいね。」

って言ったら彼氏が

「クリームソーダは緑色っしょ。」

と鼻で笑った。

悲しくなって、最近話題のソーダショップに連れて行きカラフルなソーダの中から青いのを選んで奢らせて、別れた。

色々がはじけて消えた夏の一日。

【140字小説】貴女に捧ぐ

【140字小説】貴女に捧ぐ

「私はッ!貴女の為にこの身を捧げますッ!たとえ地獄の業火に焼かれようとも人は!愛する者の為に己の力を極限まで引き出しッ!焼け焦げる寸前、まさにその瞬間!命を賭して最も上質な飴色のオーラを纏うッ!」

___あー…これは私に惚れた人…もとい玉葱の最期の台詞。