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15秒で読める小説

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15秒で読める!140字創作小説
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記事一覧

【140字小説】凄いんだか凄くないんだか

【140字小説】凄いんだか凄くないんだか

「お前さん死相が出ておるぞ」
休日の雑踏でふいに声を掛けられた。振り返ると、胡散臭い老婆がニタニタと俺を見上げている。
「死にたくなければこれを3千円で買え_」
俺は札を差し出す老婆から逃げる様に立ち去ったが、内心かなりビビっていた。
なんであの婆さん死んでる俺が見えるんだ…⁉︎

【140字小説】炎上

【140字小説】炎上

「お子さん、何年生ですか?」
「いいえ、可燃性ですよ」
「え?」
「え?いやだから、人間は可燃性なんで。燃えちゃうんで。危ないからそのライター仕舞ってくれます?」
「あ、失礼しました。煙草を吸おうとしてつい。で、何年生なんですか?」
「可燃性だっつってんだろ」
「え?」
「は?」

【140字小説】虚無感

【140字小説】虚無感

彼のポストにいいねを押すと、その後思い出したように私のポストにいいねが返される。彼が絶対いいねと思わない様な内容のポストなので、単なるお礼の意味合いなのだろう。
この流れは常に同じ。私がいいねをして、彼がいいねを返してくる。
もう私からいいねしないよ。きっと永遠にさよならだね。

【140字小説】日曜日の朝

【140字小説】日曜日の朝

「住み慣れた町を離れるってのは本来なら辛いものかい?僕はあまり。近所付き合いがなかったから愛着が全くないんだもの。実際こうやって引っ越す僕を見送る人は誰もいないだろ。…次の町では離れる時に辛いと思えたらいいな。」
男は野良猫にそう言うと立ち去った。
静かな静かな日曜日の朝だ。

【140字小説】分かってる

【140字小説】分かってる

「もしも好きな年齢に戻れるなら何歳に戻る?」
長い夏休みがある小学生かな?
毎日がお休みの赤ちゃんかな?
お金と自由がある大学生かな?
…そんな楽しい想像を巡らせながら、私は長い間病院のベッドに横たわっている。
戻れない事は分かってる。
そして進めない事も、勿論分かっているよ。

【140字小説】多様性

【140字小説】多様性

冬のさなか、軒先にアゲハ蝶の蛹を見つけた。厳しい寒さに耐え、この小さな虫は一体どんな事を想いながら春待ちしているんだろう。そっと耳を近づけてみた。
「あー出たくない ずっとこのまま冬ならいいのに 頼むから春来ないで あーほんま外とか無理」
…蝶にも色んなタイプの子がいるんだな。

【140字小説】もう一度

【140字小説】もう一度

接客業をしていて気づいた事がある。
ご機嫌な家族は全員ご機嫌で、無愛想な家族は全員無愛想。親の雰囲気が子にも影響するのか、親の性格が子にも遺伝するのか。細かい原理は分からない。
ただ、僕ももう一度だけ頑張ってみようと思うんだ。我が家の冷たいドアノブを回し、ご機嫌に「ただいま♫」

【140字小説】メリクリ

【140字小説】メリクリ

クリスマスなんて結局ただの1/365日だ。フツーにバイトして(いつもよりちょっと浮かれた家族連れやカップル客が多かったけど)、フツーに小雨の降る寒い夜道を歩いて、誰も待ってないワンルームに帰るんだ。
…って…あれ!?私の部屋に電気点いてる。もしかしてサンタさ…って消し忘れかーい!

【140字小説】M氏の受難

【140字小説】M氏の受難

「生きてるだけで偉い」
「辛いなら逃げていいんだよ」
笑顔で優しい言葉をかけてくれる人達。

…馬鹿か!ただ生きてるだけで偉い訳ないだろ!辛いからって逃げてていい訳ないだろ!

俺は哀哭した。この国は変わっちまったんだ。

…誰か厳しい言葉をくれ!叱咤激励してくれ!どうか冷たい目で罵ってくれよ!

【140字小説】部長、どんだけ

【140字小説】部長、どんだけ

在宅勤務のWEB会議中、堅物の部長が乱入した娘ちゃんにデレデレになっていた。

翌日
「ね、昨日の部長可愛かったね」
「意外な一面、的なね」
「鬼部長の別の顔発見だね」

…でも他の子は知らない。私と2人きりの時だけ部長が見せてくれる、もっと別の顔。

…とそこにいる3人其々が心の中で思っていた。

【140字小説】今日も

【140字小説】今日も

「イクメン、カジダンアピールうざ。当然の事なんだから黙ってやりなさいよ」
今日もソファーに寝転んだママは、ネトフリで海外ドラマを見ながらパパに言った。パパは「ごめんごめん」と笑いながら、今日も僕をおぶって夕飯を作ってる。
あっ、今日もパパがママのお皿にだけ微量の何かを入れたぞ。

【140字小説】陰謀論

【140字小説】陰謀論

科学の進歩は凄まじい。
Bluetoothのワイヤレスイヤホンはやがて必要なくなるだろう。
近々、脳波判別機能搭載スマホが登場。貴方の脳波を認識しダイレクトにペアリング可能となる。イヤホン無しで脳内に音楽が流れ込むのだ。
…便利すぎて怖い?怖くないし安全だし我々は何も企んでいませんよ。

【140字小説】リーマンの呟き-ハロウィン編-

【140字小説】リーマンの呟き-ハロウィン編-

「ジャックオランタン」なんて単語、つい数年前まで謎の呪文の様に感じるだけだったが。今となっては「ああ、あのカボチャをくり抜いたハロウィンの飾りか」と即理解できるようになった。慣れって怖いな。
そんな風に俺達は、有無を言わさず始まった「インボイス制度」にもすぐ慣らされていくんだろう。

【140字小説】ここに潜む何か

【140字小説】ここに潜む何か

「全ての友達、こんにちは!」
「この髪型のアイデアは素敵です」

最近Twitter上でAIみたいな文を呟く奴が増えた。ほんのり感じる言葉の違和感。俺の気にし過ぎ?

という呟きをしたら即FF外からリプがきた。

「この素晴らしいアプリはTwitterではありません、Xです」