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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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#宗教

『宗教音楽の手引き 皆川達夫セレクション』(樋口隆一監修・日本キリスト教団出版局)

『宗教音楽の手引き 皆川達夫セレクション』(樋口隆一監修・日本キリスト教団出版局)

「バロック音楽のたのしみ」をラジオで聞いていた。クラシックを知った頃だった。まだ私も信仰を与えられていなかった。その後、「音楽の泉」も時々耳にした。
 
2020年4月、皆川達夫氏が92歳で亡くなった。Eテレの「こころの時代」で2005年に放送された「皆川達夫 宇宙の音楽(ムジカ)が聴こえる」が再び放送された。
 
音楽史家として、西洋音楽について限りない知識をお持ちである。さらに、日本のキリシタ

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『宗教と子ども』(毎日新聞取材班・明石書店)

『宗教と子ども』(毎日新聞取材班・明石書店)

当然、と言ってもよいと思う。2022年7月8日の安倍元首相銃撃事件から、毎日新聞社に、ひとつの取材が始まった。
 
宗教とは何か。これを問うことも始まった。特にその狙撃犯が位置しているという「宗教2世」という存在に、世間が関心をもった。次第にその眼差しは、彼らを被害者だという世論を巻き起こしてゆく。そして、子どもに宗教を教えてはいけない、というような風潮が、「無宗教」を自称する人々により、唯一の正

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『世界はラテン語でできている』(ラテン語さん・SBクリエイティブ)

『世界はラテン語でできている』(ラテン語さん・SBクリエイティブ)

twitter.comで見かけてフォローし、ラテン語を中心とした古代語にまつわる話を日々堪能してきた。誠実な姿勢に好感がもて、またもちろんその専門的な見識に教えられることが多かった。そうした声がひとつの本になる、というので期待した。いろいろあって即購入とは動けなかったが、セールの表示を見て、すぐに動いた。電子書籍で入手した。
 
twitter.comとは異なり、ある程度ボリュームのある記述となる

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『キリスト教の本質』(加藤隆・NHK出版新書708)

『キリスト教の本質』(加藤隆・NHK出版新書708)

さて、どうしたものか。この本について書かなくてはならない。
 
まず、我ながらよくぞ最後までこれを読んだものだ、と自分を褒めてやりたい。若い頃、こうした本を読んだとき、途中で壁に本を投げつけたことがあった。人間、まるくなったものだ。
 
若いときには、憤りをそのまま出していた。だが今回は、怒りはなく、憐れみの思いが膨れ上がってくるのを感じた。どうしてこの人はこんなになってしまったのだろうか、と。最

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『亜宗教』(中村圭志・集英社インターナショナル新書)

『亜宗教』(中村圭志・集英社インターナショナル新書)

たくさんの著書がある。宗教関係が中心である。宗教学者と呼んでよいのか、評論家と呼べばよいのか、私には判断がつかないが、見識の広さには驚くばかりである。聖書はもちろんのこと、コーランに仏教から神道、ギリシア思想とくると、もう宗教一般とするしかないのかもしれない。
 
その宗教というもののレベルからすると、本書のターゲットは、少しずれる。だから「亜」の字をつけているが、著者の造語である。具体的にそれが

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『みんなの宗教2世問題』(横道誠編・晶文社)

『みんなの宗教2世問題』(横道誠編・晶文社)

2022年の安倍晋三元首相の殺害事件により、背景にあった統一協会の組織と信者、その家族との関係が、一躍有名になった。それを受けて、信者そのものというよりも、その信仰活動による被害者として逃れられない位置にいる、子どもたちのことが取り沙汰されるようになった。いわゆる「2世」問題である。
 
以前からずっと統一協会問題に関わり、組織の批判と人的救出に尽力してきた弁護士やジャーナリストの声が、もはや他人

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『「神様」のいる家で育ちました』(菊池真理子・文藝春秋)

『「神様」のいる家で育ちました』(菊池真理子・文藝春秋)

2022年の流行語とすらなった「宗教2世」であるが、本書はサブタイトルに「宗教2世な私たち」という形で、その実態を訴えることとなった。この言葉が世間に知れ渡ったのは、2022年7月の、安倍元首相の殺害事件を通してである。その容疑者の身の上を表す言葉として、それが浮かび上がった。
 
本書は、その前に書き上げられている模様。だから、決して「ブーム」に乗って売ろうとしているわけではない。尤も、本来集英

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『ボクはこんなふうにして恵みを知った』(河村従彦・いのちのことば社)

『ボクはこんなふうにして恵みを知った』(河村従彦・いのちのことば社)

コロナ禍の2020年秋、感染拡大が穏やかになったころ、久しぶりに映画館に出向いた。妻が観たいと言った「星の子」である。芦田愛菜が久しぶりに実写映画に出演したという話題性もあったが、そのテーマが大変気になった。
 
それは、赤ん坊だったちひろの病気が治った、いのちの水に関する新興宗教にのめりこんだ親のもとで、中学三年生となったちひろが、その宗教信仰に引っかかりをもつという物語である。しかしいわばそれ

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『人口減少時代の宗教の危機と対応』(勝本正實/いのちのことば社)

『人口減少時代の宗教の危機と対応』(勝本正實/いのちのことば社)

教会関係者の誰もが心に懐きながら、口に出すことをためらうことを、言ってくれたものだと感心する。私もどちらかというと、この側面を正面から論じるべきだと考えている。そう、教会の未来は暗い。閉塞感という言葉で打ち出した本もあったが、それどころの話ではない。閉塞ならばまだ存続する。だが消滅するとなると、話が大きく変わってくる。

ユニークな著者である。キリスト教の牧師相当の方であるが、仏教を深く学んでいる

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