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#2000字のドラマ

青いサヨナラ

青いサヨナラ

「大丈夫だよ」
彼はいつもそう言っていた。
「僕を信じて。きっとうまくいくから」

彼との出会いはありふれたものだった。
友人同士が知り合いで、それがきっかけで彼と出会った。
彼の育ちの良さは、つきあいはじめてすぐ気づいたけど、実際に彼がお金持ちの良い家柄の一人息子という事は後から知った。
お勉強も出来て、良い大学も出ていて、いろんな事を知っていた。
彼はもちろんそんなことをひけらかす人ではなかっ

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恋してないけど愛してる

恋してないけど愛してる

付き合っている男性のことは、便宜上「恋人」と呼んでいる。けれど、彼への気持ちは、恋ではないと思う。

最初は、紛れもなく恋だった。付き合う前と、付き合い始めてすぐの頃。メールが来るだけで飛び上がるくらい嬉しくて、にやにやしながら何時間もかけて返事を書いた。待ち合わせ場所には必ず私の方が早く着き、どきどきして彼を待っていた。服を自分で買い始めたのもこの頃だ。ジーンズばかり履いていた私が、大慌てでスカ

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タトゥーの彼女

タトゥーの彼女

昼下がり。大学にあるピロティ下で煙草をぼんやりと吸っていた。
もう一本目に火をつけようとした時、友人が見知らぬ女の子と一緒に喫煙所に現れた。
その友人と他愛もない話をしながら紫煙を浮かべつつ、それまた自然の流れで彼女とも自己紹介を交わすことになった。
「朝倉くんっていうんだ」
その女の子とは初めましてだった。
「この娘、腕にタトゥー掘ってるんだぜ」
友人の一言。彼女は黒いブラウスの袖をまくる。

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揺らしたい

揺らしたい

はじめてのデートは泊まりだった。

友達に、「絶対やめた方がいい。おかしいよ」と言われた。

でも、私は行くことにした。

それまで友達関係だった彼には、一度告白して振られていた。
それでも、諦めきれずにいた。

振られた後も、どうしても彼の言動を目で追ってしまう私の姿を、友達は「痛々しくて見てられない」と言っていた。

そんな日々を送っているなか突然、彼の方から「付き合ってくれませんか?」と言わ

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