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盲点 (1分小説)

「青色の車に変えてから、青い車ばかり目につくようになってさ」

最初、コンビニ前の駐車場にいた少年たちは、夜回りボランティアの私が話し掛けても、うるさそうにすぐ去っていった。

親と私とが、ダブって見えていたのだろう。

しかし、しんぼう強く回を重ねるにつれ、次第に彼らは心を開いていった。

「オレも、彼女が妊娠してから、やたら世間に妊婦が増えた気がする」

今までと同じ風景だけど、ずっと気がついてなかったもの。

人間は、無意識的に興味のあるものや安全をチョイスし、それ以外を排除している。

「行ったことがない近所のカフェ、買ったことがないエレキギターの雑誌、話したことがない工事現場の人。積極的に触れて、心を柔軟にしておくといいよ。きっと世界が違って見えてくるはずだ」

幸せとは、こうした日常の、気づきの積み重ねなのだ。

今日は、ちょっと話し込んでしまった。

「ジュースをおごるから、飲んだら家に帰るんだぞ」

私は、コンビニで人数分を買い、両手に抱えて駐車場へ戻った。

すると。

なぜか、少年たちが、耳をふさいで辛そうな顔をしている。

薬物!?

「どうした、みんなっ」

あわてて駆け寄る。

背後からコンビニ店長の声がした。

「モスキート音ですよ。ずっと鳴らしてたんです」

みんな、私に合わせてくれていたのか。

「幸せとは、気づきの積み重ねですね」




※画像引用 Google















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