「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第38話「妖怪肉餃子・前編」
「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」登場人物
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売れない画家の草野ハルオと、占いサイトを運営する妹のサクラは、関東近郊の芸術家たちが集まる風来町のオンボロ屋敷に住んでいた。
2人が助けた迷い猫のコムギは、恩返しにと夜空の流れ星に願った。
すると、オンボロ屋敷に棲むヤモリは不思議な力を得て、桃色ヤモリくんとなったのだった。
真夏のある夜、ハルオたちは、ひょんな事で知り合った平和を愛する妖怪カッパくんや、近所に住む人気陶芸家のゴダイさんと共に。
悪の妖怪ぬらりひょんと、戦う冒険の旅へとでる事になったのだった・・・。
「妖怪カッパ」くんと「悪の妖怪ぬらりひょん」とは
妖怪カッパくんとは、争う事を嫌い、平和に静かに暮らしたいと願っている妖怪である。
悪の妖怪ぬらりひょんとは、闇の世界から日本や世界を操り、人々を争わせ、世界を思いのままにしようとする悪の妖怪である。
「カッパの長老が住む遠野へ」その12「 妖怪肉餃子・前編」
前回のあらすじ
カッパの長老が待つ遠野を目指す、ハルオの運転する車は宇都宮辺りを走っていた。
すると、陶芸家のゴダイさんが、餃子を食べたいと言い出したのだった。
こんな時間に、開けている店があるとも思えなかったが。
遠くに、灯りが見えたので店かと思ったら、その灯りは、交通検問の灯りであった。
車に乗っているヤモリくんとカッパくんを、イベントの被り物と誤魔化して何とか乗り切ったハルオたちは。
夜明けの近い道を、ゴダイさんが、食べたいと言う餃子の店を探しながらオンボロ車を走らせていた。
「 妖怪肉餃子・前編」
ハルオの運転する車は、宇都宮の郊外に差しかかっていた。
ハルオが、
「ゴダイさん、この辺りにはもう餃子のお店もなさそうですよ。
それに、こんな時間にやっているお店もないでしょうからね」
と言うと。
「ハルオ君。ほら、あそこに明かりが見えるよ！」
とゴダイさんが言った。
ハルオが、車のスピードを落として目を細めてみると。
どうやら本当に、何やら赤い灯と、のぼり旗のような物が側道の奥にぼんやりと見えた。
ゴダイさんは、
「ハルオ君。きっと、あれは餃子屋さんだから行ってみようよ」
と言った。
それを聞いてハルオは、こんな時間にやっている餃子屋さんなんて変だなと思ったが。
ゴダイさんが、どうしても行ってみようと言ってきかなかったので。
しぶしぶと、行ってみる事になった・・・。
ハルオたちは嫌々だったが、その店に近づいてみると。
何とそこは、本当に餃子と書いた、のぼり旗のたった餃子屋だった。
しかも、24時間営業の餃子屋だと書かれている。
ハルオたちは、何台かの車が止まっている店の駐車場に車を止めた。
そして、車から降りて店の方へ行こうとすると、車のトランクの中から声がした。
「おーい、俺も連れて行ってくれ。俺も、腹が減ったよー。」
とトランクの中の、妖怪火車が言った。
ハルオの妹のサクラが、トランクを開けて
「そうか、貴方がいたのよね。
でも、妖怪が、お腹がすくなんて知らなかったわ。
それに、その格好で店の中に入って行ったらオカシイいでしょう。
だから、お土産を買ってくるから、そこで大人しく待っていてね」
と言って、火車が付いてくるのをなだめた。
車に火車を置いて、ハルオたちは、店に近づくと外観をしげしげと眺めてみた。
店は、赤やピンクの電飾で装飾されていてドクドクしい感じだった。
それから店の前には、丸々と肥えた笑顔のブタが、大きな皿にたっぷりと餃子を乗せた絵が描かれた看板があって。
如何にも怪しい雰囲気であった。
店の前で、皆が入るのを躊躇していると。
ゴダイさんは、そんな事はお構いなしに
「みんな何しているの? さあ、入った、入った」
と言いながら店のドアを勢いよく開けて入って行った。
みんなが、おそるおそると、ゴダイさんの後について中に入った。
すると、店の中は、意外にも落ち着いた雰囲気だった。
しかし、店内に入った直ぐの場所には大きな壺があった。
その、すぼまった壺の口からは、大量の水がコンコンと溢れだしていた。
そして、近くにある張り紙には、
「ようこそ、肉餃子の店へ。
この水で、手や顔をゴシゴシとよく洗ってください」
と書かれていた。
それを見た、ゴダイさんは。
「ほほう、衛生管理も中々しっかりとした店じゃないか」
と言ってほほ笑んだ。
みんなが、その水で、手や顔を洗っていると。
ぷーんと、なんだか酒のような匂い辺りに漂った。
すると、ゴダイさんが、
「この水は、アルコール消毒に成っているのかな」
と言って頷いていた。
みんなが洗い終わると。
壺の横に、もう一つドアがあって。
そこを開けて中に入ると、カウンター席とテーブル席があった。
カウンター席には、丸々と太った外の看板に描かれている、ブタのような顔と体格の客が何人も並んで座っていた。
そして、ハルオたちを見ると。
口々に、
「上手そうだなー。あー、早く食いたいなー」
と、口からたれる、ユダレをすすりながら言った。
ハルオたちが、テーブル席に座ると。
ゴダイさんが、
「ここの餃子は、よっぽど上手いんだろうなー」
と言って笑った。
そして、ゴダイさんは、カウンターに向かって餃子を人数分注文した。
すると、カウンターの向こうにいる、これまた看板に描かれているような大男が、これまた大きな中華包丁を振り上げながら、何か大きな肉を切っている様子で。
「はいよー、肉餃子人数分ね。ブヒー、ドンドン、ドンドン」
と嬉しそうに言った・・・。
この続きは次回、
第39話note連載小説(不定期)
「カッパの長老が住む遠野へ」その13へつづく
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