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マットレスの短歌集|短歌
軀から染み出す重みに労いを
流れる疲れは庭の運河に
踵から伝う痺れに賞賛を
ふきんに吸わせて塵箱に
背骨から垂れる自責に健忘を
成る丈濾して差し色に
おでこから弾ける言葉は丁重に
レコードにして繰り返し
脾臓から溢れるときめき粉々に
欠片じゃなくて塊が
ランダムオープンエンディング|詩
ランダムオープンエンディング
葬式用にエンドロールには
浮かぶ限りの人の名を
平仮名ばかりは野暮だから
ローマ字表記で一様に
写りのいい写真から
人生のハイライトといたしまして
義を取る記憶は賽の目切りに
名脇役の発表を
好きなものを振り返りながら
人生が私の物語だったこと
言葉にして伝えます
参列者の皆様には泣いていただきたく
折に合わせて音楽を
そして謝ります
いつも自分
そういえばメモに作詞したラップがあった
現実よりも不確かな夢は
実現しないことだけが確かで
それでも陽の光を浴びるより
ここにこのままいたい日和
感動するけど逆にそれだけ
きっとこんなもん退屈な思考に
Coffee made in Brazil を装填
変転の感性は稀な嗜好品(思考、コーヒー)
温めただけの今日この朝食
欠点があるという強固な長所
一泊ニ食の二人の時間
毎日繰り返す連泊延滞
たまには一人にこの倦怠感
共有ばかりは理想
いつかフラットシューズを履いて|詩
あなたの持っている絵の具を使ってみたい
私の画材で良ければ好きに使っていいから
あなたしかもっていないその色を
私の世界に足したい
だからあなたを選んだ
一緒にいてみることを選んでくれてありがとう
私達は恋に落ちるには
既に賢すぎて臆病すぎるみたいだけど
一緒に恋に降りていけたら
傷つかずにたどり着けるって
賢すぎるから思うんだ
あなたの絵の具は独特で
私の絵の具だって珍しいはず
背伸びして
手触りは手間の中に|詩
私がまだ現金を使うのは
財布に入れやすいようにお釣りを渡す店員さんに
小さな会釈で応えたいから
私がまだ現金を使うのは
金属臭くくすんだ五百円玉の
ざらついたときめきをいつか
懐かしく子供たちに話したいから
私がぬるま湯で手洗いしているのは
この服を大切にしていることを
私に知らせたいから
私がぬるま湯で手洗いしているのは
濡れた生地の手触りと
もったりとした石鹸水に
私を紹介したいから
東京ポリエステル|詩
お父さんの肩車
このあたりのおしろは
いまよりずっと大きくて
このまちは
ずっと小さかった
だんだんと知っていく
この街は思ってたより広くて
お父さんは思ってたより小さかった
父に連れられて靴屋
皮のサンダルは新品
遠出した原宿も特別な街になる
卒業と同時に街を出た
今は何処にでも行ける
あの大きなお城は税務署だった
コンサータ記録|随時更新
【18mg】2024.3 初服薬の日
手と空間の輪郭線を感じる
手が冷たく痺れる
足の裏が少し痺れる
ふっくらしている
足の裏の輪郭がわかる
踊り出したくなる
頭を振ると透明な澱み
何かを見ても思考が過去の記憶に飛ばない
タイピングが追いつかない
透明のまどろみが見える
淡水に海水が混ざる様な
ジャンプ力が1.2倍
頭が格段に軽い
マラソンを走り切って疲れが抜けた後
何も考えないことができる