思惟。

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思惟。

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夢の中、外の現実。

カウンターテーブルで、横一列に、僕の姿形をした四人が座っている。 みんな、目を閉じて話している。 動く口から、泡に消える声。 みんな、夢を見ている。 夢は現実に持ち…

思惟。
10日前
3

換気扇の隙間から。

私の頭部をショットガンで撃ち抜いたなら、最後には背中に伝う血液の冷たさだけが残るのだろうか。 早まる心臓が、肋骨を融解していくようなカタルシスを感じた。 換気扇…

思惟。
2週間前
3

孤独詩わたし。

生暖かい空気、草の匂い、傾いた街灯。 汗ばんだ額と背中に、風が吹いてほしいと願うも、時間が止まったかのような無風と景色が続く。 鳴いている蜩が唯一、時間が動いてい…

思惟。
1か月前
9

夢の中の夕食

死後、君の膣を唐揚げにして食べるという約束を交わした。 蝸牛が交尾するように交差した小指は、少しの力を加えると、ほどけそうなほどに情けない。 その瞬間の熱だけを大…

思惟。
2か月前
3

空間が痒い

昔、触れたもの全てが痒くなる感覚があった。 日常生活に支障をきたすほどだったので、おそらく強迫性的ななにかだったのではと勝手に思ってる。指先で触れたものと神経が…

思惟。
2か月前
5

言葉と無音

目を閉じる。かち、かち、と一定のリズムで時間がイメージになっていくにつれて、暗闇の中で、物体が動きはじめる。 大きいと思っていた秒針の音は、無音のそこはかとない…

思惟。
2か月前
5

溶ける目

脳で捉えたものをそのままの純度で伝えることは難しいように思える。同じものを見ているようで薄い皮膜に覆われて、まったく別のものが見えていたり。薄いが弾力はある、眼…

思惟。
4か月前
3

吐瀉物まじりの。

体調を崩した。音が煩わしい。 鬱色の細菌が視界を覆う。 感情に消費される体力すら大きく感じた。 そう分かってはいながらも、自身の生存を蝕むほどに愛を求めてしまうの…

思惟。
5か月前
3

温度のない手

広島にてクリスマスを過ごした。 とは言っても、その意識は二人の歩く温度に容易く溶けていった。 別れ際、そういえばクリスマスだったねと思い出す。 綺麗に整えられたま…

思惟。
8か月前
5

だって、猫だから。

お前の言葉は吐瀉物に混ざった毛玉みたいだったから目の前で吐いてみせた。 喉の奥に絡まる言葉を拒否するように洗い流すと喉がキリキリとした。 それから彼と連絡をとるこ…

思惟。
8か月前
7

多分、どうでもよかった。

部屋が荒れたのは、好きと思える人間がいなくなってからだ。堕落して、惰性で積み重なるプラスチック容器のひとつも片付けられなかった。 唯一、動けたのは壁にあなたの写…

思惟。
9か月前
5

水族館の記憶

同じ景色を見ていても、見えている色はお互いに違っているのが好きだな、と。 撮影した三枚の写真を見て思う。 その写真の二枚は水面を泳ぐ光ときた。 写真とは記憶の抜け…

思惟。
9か月前
5

-18℃の精子

私の精子は、冷凍庫に保存されているらしかった。 電話越しに告げられる届かない気色の悪さに、僕自身を呪った。特に悪気はないらしい。 趣味、だそうだ。 食や風景を写真…

思惟。
9か月前
6

摩擦にも似た優しい熱

「愛はどこにも行かない」 そんなセリフをどこかで聞いた。 フィクションの世界か、友人の言葉だったか。 もしくは、かつての恋人の声だったか。 あるいは、すべてが…

思惟。
9か月前
12
夢の中、外の現実。

夢の中、外の現実。

カウンターテーブルで、横一列に、僕の姿形をした四人が座っている。
みんな、目を閉じて話している。
動く口から、泡に消える声。
みんな、夢を見ている。
夢は現実に持ち込めないらしい。
街の明滅する光が、のぼる泡に重なる。
初雪が上に昇っていくようだった。

顔を見合わせているというのに、誰もが独り言みたいに口を動かしている。
深夜、電子レンジの唸る音で目が覚めた時、それがなぜだか心地よかったことを思

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換気扇の隙間から。

換気扇の隙間から。

私の頭部をショットガンで撃ち抜いたなら、最後には背中に伝う血液の冷たさだけが残るのだろうか。
早まる心臓が、肋骨を融解していくようなカタルシスを感じた。

換気扇の風切り音に意識が吸い込まれていく、風など吹いていないが、イメージの中で涼しくなった。
換気扇の下、喧騒のような無音のなか静かにハイになる。

換気扇の隙間から見える暴力的なまでに美しいサーモンピンクの空が好きだ。
血液すら溶けこんでしま

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孤独詩わたし。

孤独詩わたし。

生暖かい空気、草の匂い、傾いた街灯。
汗ばんだ額と背中に、風が吹いてほしいと願うも、時間が止まったかのような無風と景色が続く。
鳴いている蜩が唯一、時間が動いていることを伝えてくれているみたい。
いつか、微かな感情の浮き沈みで儚く忘れ去られるこの瞬間の景色を食べてしまいたいと思った。
汗ではりつく服の不快感を忘れてしまうくらいにはそう思っている。

写真は撮らないけれど、詩を残してみる。
ぼーっと

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夢の中の夕食

夢の中の夕食

死後、君の膣を唐揚げにして食べるという約束を交わした。
蝸牛が交尾するように交差した小指は、少しの力を加えると、ほどけそうなほどに情けない。
その瞬間の熱だけを大事にした、刹那的に忘れ去られていく口約束だと思っていた。

壊れたチャイムの乾いた音が部屋を走る。
「宅配便ですー」
スズメの声をよそに扉を挟んだ抑揚のない機械的な声に目を開くと、視力を失った電球が無情な瞳でわたしを見つめていた。
ここが

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空間が痒い

空間が痒い

昔、触れたもの全てが痒くなる感覚があった。
日常生活に支障をきたすほどだったので、おそらく強迫性的ななにかだったのではと勝手に思ってる。指先で触れたものと神経が繋がったかのような感覚。物体に限らず、指先で触れた空気中すらもが痒くなった。
空間が痒い。
空間を埋めたい。
空間に見つめられてる。

言葉と無音

言葉と無音

目を閉じる。かち、かち、と一定のリズムで時間がイメージになっていくにつれて、暗闇の中で、物体が動きはじめる。

大きいと思っていた秒針の音は、無音のそこはかとない大きさを知るほどに小さくなっていくような気がした。

暗闇だと思っていたまぶた裏は、アリス症候群のように伸び縮みする新奇な空間に変わっていた。

この空間に言葉などないが、言葉によく似ている。
相手に反射しなければその言葉の大きさも、形も

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溶ける目

溶ける目

脳で捉えたものをそのままの純度で伝えることは難しいように思える。同じものを見ているようで薄い皮膜に覆われて、まったく別のものが見えていたり。薄いが弾力はある、眼球な膜。
その内側を描きたい。外ではない内こそが本当に伝えたいなにか。
沈黙は、それを鮮明に映すことがある。
言葉を介さずとも伝わってしまうもの、言葉にしなくても伝わるものは、より一層その人らしさを感じられる。瞳の奥で静かに、かつ大胆に繰り

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吐瀉物まじりの。

吐瀉物まじりの。

体調を崩した。音が煩わしい。
鬱色の細菌が視界を覆う。
感情に消費される体力すら大きく感じた。
そう分かってはいながらも、自身の生存を蝕むほどに愛を求めてしまうのは人間らしくもあるな、と。
愛を享受することにも体力を消費し、嬉しさのあまり白いゲロを吐いた。
口からごめんね。
愛してる。
口だけでごめんね。

温度のない手

温度のない手

広島にてクリスマスを過ごした。
とは言っても、その意識は二人の歩く温度に容易く溶けていった。
別れ際、そういえばクリスマスだったねと思い出す。

綺麗に整えられたまえがみの方と待ち合わせをする。
僕も今朝に、長く伸びた触角が邪魔だったのでばっさりと切ってみたらこっちのほうがいいじゃん、と。

方向音痴なため、待ち合わせ場所のスターバックスに辿り着けず、迎えにきてもらうことに。
その間、焼き芋を購入

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だって、猫だから。

だって、猫だから。

お前の言葉は吐瀉物に混ざった毛玉みたいだったから目の前で吐いてみせた。
喉の奥に絡まる言葉を拒否するように洗い流すと喉がキリキリとした。
それから彼と連絡をとることはなくなった。
当然のことだ。

この石には、このくらいの力を加えると、おおよそこれだけ飛ぶだろうという感覚で生きている。
最近は慎重になりすぎて自発的な会話は少なくなった。つまるところ投げる石も見当たらない。
頭の中で考えれば考えるほ

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多分、どうでもよかった。

多分、どうでもよかった。

部屋が荒れたのは、好きと思える人間がいなくなってからだ。堕落して、惰性で積み重なるプラスチック容器のひとつも片付けられなかった。
唯一、動けたのは壁にあなたの写真を貼る時くらいだけど、孵化しない卵をあたため続けているような気分だった。もう、四年あたためている。

先日、とうとう部屋にゴキブリが出た。
壁から外れた写真の目の部分で、テープに絡まり這っていた。
どうしよう。この嫌悪感の先にあなたがいる

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水族館の記憶

水族館の記憶

同じ景色を見ていても、見えている色はお互いに違っているのが好きだな、と。
撮影した三枚の写真を見て思う。
その写真の二枚は水面を泳ぐ光ときた。
写真とは記憶の抜け殻のようなもので、のちに見返すと、鮮明に残った抜け殻に感情の宿し所が分からなくなる。
写真に残しすぎるのは、後々何も残らなかったりするんだと思った。

僕は勝手に、"抽象的に生きる"と言ってるけど、どの景色にも共通しそうな写真を見返して、

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-18℃の精子

-18℃の精子

私の精子は、冷凍庫に保存されているらしかった。
電話越しに告げられる届かない気色の悪さに、僕自身を呪った。特に悪気はないらしい。
趣味、だそうだ。
食や風景を写真に収めることと同義だという。
僕という人間は昔から人を覚えることが苦手だったし、かと言って、誰かの記憶に残るような人間でもなかった。
そこに保存されている僕という人間像は時の流れとともに薄れ消えていくのではないか、忘れ去られるただの記念な

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摩擦にも似た優しい熱

摩擦にも似た優しい熱



「愛はどこにも行かない」
そんなセリフをどこかで聞いた。
フィクションの世界か、友人の言葉だったか。
もしくは、かつての恋人の声だったか。
あるいは、すべてが夢の中だったのかもしれない。
道中、川端に座って風鈴のように足を揺らすと脈打つ生水の冷たさに走る胸の痛みが今も鮮明に懐かしかった。
私は、目を閉じて真っ黒な川に白昼夢を浮かべた。

夢路

アルコール混じりの冷水が喉を伝う。

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