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換気扇の隙間から。


私の頭部をショットガンで撃ち抜いたなら、最後には背中に伝う血液の冷たさだけが残るのだろうか。
早まる心臓が、肋骨を融解していくようなカタルシスを感じた。

換気扇の風切り音に意識が吸い込まれていく、風など吹いていないが、イメージの中で涼しくなった。
換気扇の下、喧騒のような無音のなか静かにハイになる。

換気扇の隙間から見える暴力的なまでに美しいサーモンピンクの空が好きだ。
血液すら溶けこんでしまいそうな空。
隣に付き添う死も今だけは友達と言える。
僕は臆病な性格をしている。それを行動に移すには覗き穴程度の離人感では足りない。

現実感を捨てた景色は、映画を見ているような気分。スクリーンの奥の風も涼しく思えた。
イメージの中を泳ぐ私すら、ただの景色になった。
水槽を泳ぐ私、それを見ている私は夢を見ている。

換気扇の向こうは銀河が広がっていたっていい。
海の中かもしれない。
新奇な生き物が宙を浮いていたり。
イメージの中はいつも、存在しない懐かしさに包まれている。

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