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孤独詩わたし。


生暖かい空気、草の匂い、傾いた街灯。
汗ばんだ額と背中に、風が吹いてほしいと願うも、時間が止まったかのような無風と景色が続く。
鳴いている蜩が唯一、時間が動いていることを伝えてくれているみたい。
いつか、微かな感情の浮き沈みで儚く忘れ去られるこの瞬間の景色を食べてしまいたいと思った。
汗ではりつく服の不快感を忘れてしまうくらいにはそう思っている。

写真は撮らないけれど、詩を残してみる。
ぼーっと歩くだけ。それだけでいい気がした。
それが、詩なのだと思ってみる。
詩は景色に見える、記憶のようにも見える。
景色は孤独に見えるし、虫たちの声は私をより一層、孤独へと導くように聴こえる。
詩は孤独と仲がいいね。

美しい風景を眺めていると、その繊細さに心が現実感で満たされる。
死の先にはなにもないと告げられているみたいな美しさ。その絶望にも似た感動に必要なのも詩。
それと、不快感。
部屋の隅、からまる配線の光のほうがよっぽど夢らしいね。

夢みたいなのが好きだ。
目が覚めても存在してる、そんなのが好きだ。
夢みたいな光、夢みたいな友人。
私が忘れている過去をずうっと覚えている友人は、私という人間をどんなふうに映しだしているのだろう。
夢みたいな友人の不思議を考えると、詩を必要とすることなく、じめじめとした不快感すらもが心地よかった。


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