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書評:ホール・ケイン『永遠の都』
世界文学と呼ばれるべき大衆小説 〜ロマンス、人間共和の凱歌、誇りと恥辱、そして生命〜今回ご紹介するのは、イギリスの小説であるホール・ケイン『永遠の都』という作品だ。
この作品についてであるが、ネットで検索しても「ホール・ケイン」も「永遠の都」もWikipediaにすら出てこない。
本作は20世紀初頭のいわゆる大衆小説で、当時イギリスでは人気作だったのであるが、未だ世界文学の一角として認められるに
書評:ジョージ・オーウェル『一九八四年』
オーウェルが描いたディストピア作品の金字塔今回ご紹介するのは、イギリス文学よりジョージ・オーウェル『一九八四年』。
イギリスの作家、ジョージ・オーウェルの代表作であり、ディストピア作品の金字塔と目される作品である。
世界が3つの超大国によって治められる架空の時代。その中の1つ、オセアニアにおける監視社会の実態と、その支配に疑問を持つ主人公の顛末を描いた作品である。
一挙手一投足が「テレスクリ
書評:ジェーン・オースティン『高慢と偏見』
イギリス文学上の高慢な女性が携えた魅力とは?今回ご紹介するのは、イギリス文学よりジェーン・オースティン『高慢と偏見』。
イギリスの女流作家ジェーン・オースティンの代表作であり、5人姉妹を取り巻く愛憎劇をプロットとした、非常に読み応えのある作品だ。
実は大きな事件などはほとんど起こらないにも関わらず、心情の起伏と登場人物の相関関係と会話によってのみ、読者をぐいぐいとその世界に引き込んでいく、不思
書評:マルセル・プルースト『失われた時を求めて』
文字通り「自分自身」の内なる宇宙を旅する体験となる、プルースト文学の耽読今回ご紹介するのは、フランス文学よりマルセル・プルースト『失われた時を求めて』。
本作は長編かつ難解で、読みづらいことこの上なく、名実ともに世界文学の中でもラスボス感の漂う作品と言っていいだろう。
この作品は私の読書人生においても長らく鬼門であった。20代の最終盤に一大決心をし読み進めた。半年間、ほぼ全ての土日を費やし、そ
書評:アレクサンドル・デュマ『三銃士』
『三銃士』に見られる史実に基づくリシュリューの政治手腕今回ご紹介するのは、フランス文学よりアレクサンドル・デュマ『三銃士』。
アレクサンドル・デュマ(通称大デュマ)の代表作と言えば、『モンテ・クリスト伯』か『ダルタニャン物語』だろうか。
後者については、日本ではその全編よりも一部である『三銃士』が良く読まれているのかもしれない。
かく言う私もその1人である。
『三銃士』は大デュマの大作『ダ
書評:マシャード・デ・アシス『ドン・カズムーロ』
「猜疑」のみを起因に転落していく人生の恐ろしさ今回ご紹介するのは、ブラジル文学よりマシャード・デ・アシス『ドン・カズムーロ』という作品。
日本では、「ブラジルの漱石」とまで言われるほど、実はその技量に対する評価が高いそうである。
本作は、主人公サンチアーゴと幼馴染で恋仲であるカピトゥーとの顛末を描いた作品である。物語の後半近くまであまり大きな展開もないのだが、最後に大きな「謎」が待っている。