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読書記録

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ジャンル問わず。読んだ本の記録、紹介。
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2023年4月の記事一覧

死と生~読書記録274~

死と生~読書記録274~

2018年、京都大学名誉教授である佐伯啓思先生による著。

人間究極の謎に迫る!
「死」と日本人、そこから探り出されたものとは?

「死」。それは古今東西、あらゆる思想家、宗教家が向きあってきた大問題である。
「死ぬ」とはどういうことなのか。「あの世」はあるのか。死後に何が起きるのか。
「自分」がいなくなったら、「世界」はどう認識されるのか――。
先人たちは「死」をどう考えてきたのか、宗教は「死」

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オウムからの帰還~読書記録273~

オウムからの帰還~読書記録273~

1996年に出版された、オウム真理教元信者・高橋英利氏による手記である。

995年4月23日。オウム疑惑が怒濤のように渦巻くさなか、実名と素顔をさらしてテレビに生出演した元出家信者がいた。高橋英利。教団科学技術省に所属していた青年である。幸いにして教団の暗黒部には関わっていなかったが、彼は危険をかえりみず、勇気をもって自分の知るかぎりのことを率直に語り、教団に対する疑念のすべてをぶつけた。その番

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猫と話しませんか~読書記録272~

猫と話しませんか~読書記録272~

イギリス出身のミステリー作家・パトリシア・モイーズが1978年に書いたエッセイだ。

パトリシア・モイーズは、イギリスの推理作家。 ロンドン警視庁のヘンリ・ティベット 警部とその妻エミーが活躍する推理小説シリーズを執筆。

この本はミステリーではなく、彼女がいかにして飼い猫とコミュニケーションをしていくかのエッセイである。
内容としては、題名通り。猫と人は会話できるのである。
表紙の写真にあるのが

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なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか~読書記録271~

なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか~読書記録271~

2013年に書かれた宗教学者・島田裕巳先生の著書。
八幡神社そのものの説明というよりは、日本に数多くある神社の説明である。

日本は、八百万の神々の国である。
実に多くの神社があり、それぞれの神々について丁寧に書かれている本であった。
1つの神社にいくつもの神が祀られているなど当たり前なのだ。
面白い事に、面積としたら狭いのに、御朱印は幾つも頂ける神社もあったりする。
普段、Twitterなどで、

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浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか~読書記録270~

浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか~読書記録270~

宗教学者の島田裕巳先生が2012年に書かれた著書である。

本のタイトルからして、浄土真宗について深掘りしているのかと思ったら、全く違った。
6世紀からの日本の仏教諸宗派についての説明であった。
そこは大変詳しいので敬服したい。

日本の仏教は、主に遣唐使で有名なように、優秀な人間が中国に学びに行き、中国のものを伝えたのだとされている。
だが、その中でも日本式に変えられていった。
それが、本寺垂迹

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無罪~読書記録269~

無罪~読書記録269~

2011年 推理作家・深谷忠記氏によるミステリー小説である。

息子と妻をシンナー中毒の通り魔に殺された新聞記者の小坂は、ある大学准教授の家を見張っている女性に出会った。准教授の妻は11年前、我が子2人を殺しながら心神喪失と判断され、無罪判決を受けていた―。無罪判決が下された時、本当のドラマが始まる。愛する息子と妻を通り魔に殺された男。我が子を殺しながら、心神喪失で無罪となった女。刑法第39条の壁

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ネコ・星新一~読書記録268~

ネコ・星新一~読書記録268~

世の中に「ショートショート」というジャンルを生み出した星新一が書いた作品の1つに「ネコ」がある。

1966年(昭和41年)に発行された「きまぐれロボット」に収録されている。

林の奥で暮らすエス氏は、猫をとても寵愛していた。
猫と日々を過ごすある日、自宅の外に何者かがやってくる。
外にそれを確認しに出るエス氏だが、その来訪者の姿を見た瞬間に気を失って倒れてしまった。
来訪者の正体は、常識を超えた

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罪なきものまず石を投げうて~読書記録267~

罪なきものまず石を投げうて~読書記録267~

日本のクリスティーと呼ばれた、仁木悦子さんが1960年に書いた短編だ。

現在、こちらの短編集にて読む事が出来る。

昭和35年秋、「別冊小説新潮」に載ったものです。どのようなことからヒントを得て書いたのか、今となっては記憶していません。ただ、風変わりな名探偵を登場させてみたいと考えて、主人公の牧師とその娘をつくりだした事は覚えています。この2人の対比だけでは、まだありふれたホームズとワトソンもの

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火の鳥・太陽篇~読書記録266~

火の鳥・太陽篇~読書記録266~

手塚治虫先生の名作「火の鳥」。
その中でも、太陽篇は実に奥深い。宗教という禁断の題材を扱っているからだろうか。

そもそも、若い頃に読んだ本を又読む気になったのは、近頃SNSで話題になっているコオロギ食の記事やらツイートを読みながら、
「そういえば、火の鳥にそういうのがあったな」
と想い出したのだ。

これが、問題の場面である。

この話。主人公は2人というか輪廻転生で生ま代わる。
1人は飛鳥時代

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死について考える~読書記録265~

死について考える~読書記録265~

1987年、作家・遠藤周作のエッセイである。
「本当に苦しいでしょうね」「やがて私たちもそうなるんですから」生き残る者のこの言葉はまもなく地上を去っていく者に理解と人間的連帯とを示し、ある程度の慰めを与える。だが、それは死んでいく者の苦しみの半分を慰めてあげても、あとの半分を鎮めはしない。その50パーセントをも鎮めるためには…。著者が遺そうとした心優しいメッセージ。(版元紹介より)

この頃、遠藤

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芭蕉物語~読書記録264~

芭蕉物語~読書記録264~

東京大学名誉教授で国文学者の麻生磯次氏による松尾芭蕉の伝記本である。

私は、こちらの本を図書館の小学生向けの伝記コーナーで借りた。
難しい地名や人名にはふりがなもあり、わかりやすく書かれた本であるが、内容はとても濃く、芭蕉の生涯が詳しくわかったのだ。

伊賀の上野で生まれ、京都に出て俳句を習い、その後江戸に。

芭蕉は今でいうとアスペルガー症候群なのではないだろうかとも思うのだ。
結婚なんぞに興

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私の大好きな探偵 仁木兄弟の事件簿~読書記録263~

私の大好きな探偵 仁木兄弟の事件簿~読書記録263~

ミステリー作家・仁木悦子さんの作品の主人公、仁木兄弟が登場するシリーズの短編集。

編集されたのは、戸川安宣さん。
戸川さんは、ミステリー小説出版で有名な東京創元社の元社長で現在は相談役だ。

ここでは、戸川氏の解説を紹介したい。(ところどころ省略している。申し訳ない。)

本書の著者、仁木悦子は昭和32年(1957年)、仁木兄弟の活躍する長編推理小説「猫は知っていた」で一躍注目を集め、「日本のク

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地方消滅~読書記録262~

地方消滅~読書記録262~

2014年、元建設省官僚で岩手県知事の増田寛也氏の著書だ。

このままでは896の自治体が消滅しかねない―。減少を続ける若年女性人口の予測から導き出された衝撃のデータである。若者が子育て環境の悪い東京圏へ移動し続けた結果、日本は人口減少社会に突入した。多くの地方では、すでに高齢者すら減り始め、大都市では高齢者が激増してゆく。豊富なデータをもとに日本の未来図を描き出し、地方に人々がとどまり、希望どお

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