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#note
カミーユの揺りかご:ショートショート
1997年9月のある日の午前、7歳だった私は訳の分からないまま、内戦の傷跡がいまだ生々しいカンボジアの地へ降り立った。
隣国タイの首都バンコクを経由しなければならなかったので、成田空港からジャンボジェット機でやってきた私たち家族は、そこで打って変わり、プロペラ式の小型旅客機に乗り換えていた。ちょうど手に持っていたJALのおもちゃ飛行機と、そう変わらないようなこんな飛行機に乗って、墜落してしま
多美子の逡巡:戯曲(3200字)
登場人物
多美子 エンジニア(助手)
ローリンゲン教授 インテリ教の最高権威
ノベール 正体不明のインフルエンサー
あらすじ(舞台背景)
世界を一瞬のうちに破滅させる兵器の開発に、多美子はエンジニアとして携わっていた。なぜこんな仕事に就いているか。それが神の意志に他ならないと考えているからだ。罪悪感に苛まれることはない。この兵器が産声を上げる前から人類は永く、殺し合いに殺し合いを重ねてきた。そ
真由美の催眠術:ショートショート
『日本は女尊男卑』とか、『女の方がずっと恵まれている』とか、こうした言説にはある程度の真理が含まれている。
しかし真由美は、この真理にあずかれない醜い女だった。
ずんぐりした顔の鼻はぺちゃんこに潰れていて、切れ長の目が人に与える印象は決していいものではない。それでも彼女は、あふれる母性をペットのアメショーにこの上なく注ぎ、保護者としてその責任をまっとうしていた。要するに彼女は心豊かに生きてい