マガジンのカバー画像

FAMILY

77
運営しているクリエイター

#エッセイ

夏仕様の吾輩

夏仕様の吾輩

吾輩は犬である。名前はポッキー。

マルチーズとトイプードルの遺伝子を持つ、齢1歳のアダルトな犬である。6月の福岡は暑い。これからもっと暑くなることは、この世に生を受けて一年しか経たない吾輩でも想像に難くない。

おとんとおかんが吾輩の毛をカットしに連れて行ってくれた。もふもふのかわいい吾輩を短髪のシュッとしたイケメンにイメチェンしようというおかんの魂胆が見え見えである。任せてくれたまえ。吾輩はか

もっとみる
ハピバオレ!

ハピバオレ!

吾輩は犬である。名前はポッキー。

むしの日に生まれた犬。それはまさしく吾輩のことである。6月4日で齢一歳となった。人間年齢にすると17歳。世が世なら、吾輩は成人である。そう、もうオレ、大人。

誕生日の朝、吾輩は散歩中、橙色のいい匂いのする丸いものを見つけた。こっそりと口に咥え持って帰ろうとしたところ、例の如くおかんに見つかった。いつもはのっそりと歩いているおかんだが、吾輩の盗み食いを見ると、途

もっとみる
俺のはいつも、兄ちゃんのお下がり。

俺のはいつも、兄ちゃんのお下がり。

薄手の長袖のシャツ一枚がちょうどいい気温だった。
朝晩は少し肌寒くも感じたが、昼間は少し歩けば体が温まり、袖を捲りたくなるほどのいい天気。

今朝も相変わらずバタバタしていた。小学五年生の息子が、出勤時刻5分前に今週の時間割を出してきた。持ち物の欄を見て、私はガックリと肩を落とす。

裁縫道具。

昨日言って欲しかった。小学五年生になると裁縫道具が必要になる。学校から購入申し込みの封筒が届いていた

もっとみる
「いってらっしゃい」に添えるもの

「いってらっしゃい」に添えるもの

「いってらっしゃい。気をつけてね」

母は私が出かける時は必ずそう言って、私を見送ってくれた。私は角を曲がる時、絶対に振り返ると決めていた。

だって母は、私が見えなくなるまで、手を振ってくれていたから。

🚶

「なんで、昨日のうちに準備しとかんと?」
「うるさい」
「ギリギリになったらお母さん遅刻するやん。早くして〜」
「ちょっと待って! すぐ終わる〜」
「頼みますよ。早くしてくださ〜い」

もっとみる
親孝行はもう済んでいる

親孝行はもう済んでいる

臨月。

出産予定日の10日前。朝の5時。
夫を送り出すために、私は台所で夫の弁当の準備をしていた。

「あ」

よくわからない初めての感覚を股に覚えた。
何かが、おかしい。私はすぐにトイレに駆け込んだ。何だか水のようなものが漏れているような気がする。

もしや、破水?

破水といえば、イメージ的にはバシャっと、バスタオルが必要なくらい股から羊水が漏れるイメージだけど。チョロチョロ漏れてるんだよな

もっとみる
賑やかな食卓での会話_あれは、宇宙との交信だった。

賑やかな食卓での会話_あれは、宇宙との交信だった。

夕刻。

平日の夜7時に、珍しく家族四人でダイニングテーブルを囲んだ。
いつもならば高校2年生の長男と小学5年生の次男は、呼べども呼べどもリビングに顔を出さない。なぜならば、ゲームを優先しているからだ。
夜7時半ごろになって、ゲームのキリのいいところで、やっと息子たちがリビングに顔を出すのが我が家の日常だ。

しかし、今日は違った。

メニューが鶏の唐揚げだったからだ。
我が家の平日メニューは曜日

もっとみる
吾輩はおかわり上手である。

吾輩はおかわり上手である。

吾輩は犬である。名前はポッキー。

猿荻家のアイドルであり、マルチーズとトイプードルの遺伝子を持つものである。吾輩には最近気づいたことがある。吾輩にはもう一軒、出入りできる家があるようだ。家もおかわりできるらしい。

そこには、じいじとばあばが住んでいる。最近まですっかり忘れていたが、猿荻家の面々が2、3日不在にしていた折に、吾輩はじいじとばあばに預けられていたのだった。こたつもあり、ソファーもあ

もっとみる
左右靴下ばらばらだけど、500点獲得。

左右靴下ばらばらだけど、500点獲得。

朝っぱらから息子がゲンナリしていた。

なぜならば、その日は土曜日なのに授業がある日だった。小学5年生の息子は、爽やかな土曜日の朝の空気をぶち壊すほどの憂鬱さをまとって、リビングに登場。

「お母さんの小学生の頃はねぇ、土曜日はいっつも授業やったんやけど」なんて、擦られまくった昔話は口にしない。時代が違うんだから、そんなこと言われても、息子だってどうしようもない。

私だって、職場の大先輩方から「

もっとみる
吾輩はグルメである。

吾輩はグルメである。

吾輩は犬である。名前はポッキー。

猿荻家のアイドルであり、もうすぐ一歳になるマルチーズとトイプードルの遺伝子を持つものである。
吾輩はかなりのグルメである。味のわかる男であり、この家の母親のように口に入ればなんでもいい、腹に溜まれば何でも良いと言うような適当さや雑さはない。

吾輩はグルメなので、朝晩に定期的に出される謎の茶色いカリカリとした食べ物はあまり好きではない。エイヨーがあるからと、おか

もっとみる
シングルベッドは満員です

シングルベッドは満員です

6畳間にシングルベッド三台。

これが我が家の寝室の状況だ。
そのベッドの上に夫、次男、私とそして愛犬ポッキー(マルプー/オス)がトドのように横たわって眠っているのが猿荻家の夜11時から朝5時半までの現状である。

次男は小学五年生なので、もう一人部屋を与え、一人で寝ていい年頃ではある。
しかし彼は、中学校入学までは一緒に寝ると言って聞かない。そのため私は、あとわずかな川の字で眠る時間を楽しむこと

もっとみる
ジムの価格は130円

ジムの価格は130円

学校から帰宅した高校二年生の長男が言った。
「お母さん、俺、ジムに行ってくる」

「ジ、ジム?」
私は思わず聞き返した。

私にとってジムとはひと月単位で契約するようなものであり、「公園に行ってくる」みたいな感覚で行くものではない。
友達に誘われて彼はジムに行くと言うが、変な勧誘をされないだろうか、と私の心にモヤモヤとした心配が込み上げてきた。

家に引きこもり、永遠にスマートフォンで荒野行動をし

もっとみる
味方ができたと嬉しかったのよ

味方ができたと嬉しかったのよ

母が私を産んだのは、何歳の時だったのだろうか。

今年70歳を迎える母。
私が今年44歳になるので、私を産んだのは26歳の時になる。私は長子なので、母のはじめての出産。

母は福岡生まれ福岡育ち。
独身の時は事務職の仕事をしていて、夜にはバーテンの真似事もやっていたと聞いたことがある。お酒が大好きで、友達とワイワイ賑やかに過ごすのが好きな人。

父は徳島生まれ徳島育ち。
インテリアデザイナーをして

もっとみる
ちっちゃいコトは気にするな

ちっちゃいコトは気にするな

それワカチコワカチコ〜

って言いたくなった人は多分、いや間違いなく、すでに友達。チーム友達。
ワカチコ? 何それって思った人は正解。友達になりたい。
いや、如何にいわんや、言わんやろと思った人、最高です。ありがとうございます。お友達になっていただけますか?

ちっちゃいこと〜はでお馴染みといえばゆってぃだが、別にここでゆってぃの話をしたいわけではない。

そもそも、ワカチコって何?
ワカチコの

もっとみる
たぶんあれは、マイクポップコーンだった。

たぶんあれは、マイクポップコーンだった。

5月3日(金)祝日。

その日私は、福岡空港のすぐそばにあるベスト電器スタジアムにいた。サッカー観戦をするためだ。

サッカー観戦をするとは言ったものの、私はサッカーのルールを知らないし、選手も知らない。たぶん私は会場内で一番サッカーに興味がない観客だったのではないかと思われる。しかし贅沢にも結構いい席に座っていたと思う。メインスタンドの前から5列目。

サッカーに興味がない私がサッカー観戦をする

もっとみる