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#不倫
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十七話 これからも私についてきて
これからも私についてきて
私は生まれたばかりの赤子を抱きしめた。お湯で洗われピカピカになった、ふわふわしたあたたかい塊。この子は私の愛で命だ。それをもう一度手に入れた喜びと安堵で、泣きそうになった。その日から私は秀吉に言われた通り、乳母ではなく自分の乳を口に含ませた。赤子は、顔を真っ赤にし無心にゴクゴクと乳を吸う。その様子が、愛おしくてたまらない。そばで乳母の大蔵卿局も目を細め、うれしそうに見て
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十六話 欲しいものを欲しいと望み手を伸ばすからこそ、与えられる
欲しいものを欲しいと望み手を伸ばすからこそ、与えられる
この時期、元号が天正から文禄に改元された。
もともと元号が変わるのは、天皇が譲位したり、災いを改めるためだった。だがこのたびの改元は、そうではない。
秀吉から秀次に関白の世襲をしたためだ。それはこれから天皇に変わり、武家が天下を支配する、と世間に知らしめるためだった。
まだ妊娠していない私はその現実に唇を噛み、辛い思いでただ眺めるしかなか
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十五話 子種をよこせ!
子種をよこせ!
鶴丸を失った秀吉は、姉の息子秀次を養子に迎えることを私に告げた。私は「必ずまた子を産みますから、それは止めて下さい!」と嘆願したが、秀吉は耳を貸さなかった。早く妊娠して、豊臣の後継者の座を取り戻さなければ、と私は焦った。だが肝心の秀吉は鶴丸を失ったショックで男としての自信も失い、私の元に通うことも少なくなった。このままではいけない、と私は策を練った。
翌日、私は秀吉と秀次、豊
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十一話 give and takeそれも愛の一つの形
give and takeそれも愛の一つの形
天正17年9月13日、私は鶴丸と共に大阪城に入城した。
秀吉は鶴丸が生まれた時から、彼を自分の後継者に決めた。
そのため山城淀城から大阪城まで、豊臣の権勢を誇るように絢爛豪華な大行列が従った。
大阪城に着いた私は、抱いていた鶴丸を乳母に預け、華やかな輿から降り大阪城に足を踏み入れた。
秀吉は上機嫌で、私達を迎えに来た。鶴丸を見るなり顔中をくしゃくし