マガジンのカバー画像

雑文

46
ジャンルレスな雑談記事
運営しているクリエイター

2023年5月の記事一覧

笹の葉の股に蝸牛─ご近所六景。

笹の葉の股に蝸牛─ご近所六景。

ご近所六景。
(ある日のご近所をぐるりひとまわりして見られた景色)

テッセンに鳥居

この垣根のあるお宅は以前から空き家になっていて、それでも庭の花々はひとりでによく咲いている。
垣根に伸びたテッセンの写真を撮っても構わないかどうか、尋ねようにも誰もいないのだが、この、道に飛び出してちょうど顔の高さで咲いている一輪が、「まぁ、どうぞ」と言ってくれたような気が、しないでもなかった。

垣根の奥には

もっとみる
乱れた本に興奮をおぼえる性です。

乱れた本に興奮をおぼえる性です。

本題に入る前に、少し前置きをさせてください。

古書を眺める愉しさは、作られ読まれたその時代時代の息吹を肌で読み取りながら物語を堪能するという、

「五感+時空超え」

という愉しさであります。

加えて、乱丁落丁本の様子にも、ただならぬ人間の息吹を感じます。
「誤植」ひとつ取っても、昔の活版印刷本には文字が逆さまだったり前後していたり、現在の“入力” “データ”ではあり得ない、人力ゆえの印刷ミス

もっとみる
ひとつの詩と三度出会う。(谷川俊太郎『みみをすます』)

ひとつの詩と三度出会う。(谷川俊太郎『みみをすます』)

谷川俊太郎「みみをすます」と初めて出会ったのは、私がほんの子どもだった頃、身内の誰かから買い与えられたものらしい、福音館書店の書籍『みみをすます』でした。
谷川俊太郎『みみをすます』
福音館書店

山吹色というのでしょうか、その表紙に描かれた柳生弦一郎イラストの「顔」は、シンプルですが子ども心に強烈なインパクトでした。
「みみをすます」は全てひらがなで書かれているので、幼い私にその意味が分からなか

もっとみる