中村将大
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セルフ考古学|はじめて上京した日の追憶
9月はどうしてもノスタルジックな気分になる。通常、季節は徐々にうつろいゆくものだけど、夏から秋にかけてだけは、舞台の幕間のようにシーンが一気に切り替わる。8月末日までが夏。9月になるともう秋という具合。それは、自分自身の誕生日が8月の終わりにあることも影響しているだろう。とりわけ今年の8月最終週は台風の影響で雨がつづき、あけて9月、ひさびさの晴れ間はすっかり秋めいていた。
それから、自分にとって
丹野杏香 作品集「採集I 野山にて」ブックデザインのはなし
丹野杏香さんのイラストレーション集「採集I 野山にて」。ブックデザインを中村が担当いたしました。6月15日から愛知・豊田市HUUKUで開催される、同名の展示にあわせ刊行されたもの。展示案内・会場ロゴタイプは古屋郁美さんの仕事。
A5版変形・52頁/本文墨1色/小口折り製本
印刷は精興社
和文書体は秀英明朝M
欧文書体はエリック・ギルによるPerpetua
版型はThe Nonesuch ‘Sel
活字書体のブラックネス——追記|Theaster Gates: アフロ民藝|森美術館|
『シアスター・ゲイツ: アフロ民藝展』の追記。展示で印象ぶかかったことのひとつは、英文キャプションにフレディック・ガウディ系の活字書体が採用されていたこと。これにゲイツ自身の意図がどのくらい反映されているのかは不明ですが、まぁ、無関係であることはなさそうです。
ガウディ活字は膨大に存在しますが、筆致や小文字の「e」を参考にすれば、おそらくそのなかでケナリー系とされるものだと推測しています。Gou
Theaster Gates: アフロ民藝|森美術館
このしばらく、さまざまな場面で「民藝」ということばを目にするようになりました。いわば本流となる柳宗悦の系譜はもちろん、ことなる領域における援用まで。当事者たちの手をはなれ、それがひとつの「みいだしかた」と捉えられはじめているのかもしれません。
森美術館で開催されている『シアスター・ゲイツ: アフロ民藝展』。今回の展示にかぎらず、これまでのゲイツ自身の活動をみれば、たしかに民藝なるものをみいだすこ
デザイン教育のデザイン——3: デザイン基礎過程の考察と実践
「デザイン教育のデザイン」として、筆者が2009年から2021年まで携わった美術系専門学校4年制デザイン学科の教育プログラム、その設計プロセスについてこれまで三回にわたり記事を公開しました。想像以上に読んでいただいていること、とてもうれしくおもいます。
前回はそのデザイン教育プログラムの最終系を紹介しました。そのプログラムにおいて基礎過程を構築することが、ひとつの課題となったこともあわせてお話し
デザイン教育のデザイン——2: デザイン教育プログラムの設計と可視化
「デザイン教育のデザイン」として、筆者が2009年から2021年まで携わった美術系専門学校4年制デザイン学科の教育プログラム、その設計プロセスについてこれまで二回にわたり記事を公開しました。
前回はその基礎となるデザインの定義。またコミュニケーションデザインという学科の冠について検討し、またその要としてタイポグラフィ系授業を設定したことについて、お話をしています。
最終的なデザイン教育プログラ
デザイン教育のデザイン——1: デザインの定義をする
(続き)この美術専門学校に着任した2009年ごろ。当時のデザイン教育の状況を振り返ってみます。いわゆる大手美術大学出身のデザイナーは、それまでと変わらず活躍していました。一方、慶応義塾大学 湘南藤沢キャンパスや早稲田大学 文化構想学部など。いわゆる総合大学においてもデザイン領域と呼べるプログラムが実施され、そうした卒業生の活躍もかなり目立つようになりました。
またウェブデザイン——特にAdobe
デザイン教育のデザイン——はじめに
はじめに
2009年4月に新卒で入職し、その後、2021年3月までの11年間。東京都内にある美術専門学校の4年制デザイン学科教員を勤めました。ここでは授業を担当したり、非常勤講師の窓口をしたり、日々、学生の面倒をみたりすることが、その主な仕事でした。しかしこの11年をあらためて振り返り、筆者としてそこでもっとも印象に残っている仕事は、デザイン教育プログラムの設計と実施でした。
これは、いつの間