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暗闇に輝く、知の光を求めて! ウィル・ハント『地下世界をめぐる冒険』

 こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

 今日は、ウィル・ハントの『地下世界をめぐる冒険』を紹介したいと思います。

 あなたは「地下世界」と言われて、始めに何を想像しますか?
 わたしが思い浮かぶものは……

『メトロポリス』はフリッツ・ラング監督によるサイレント映画の金字塔。未来都市メトロポリスの地下に住む労働者階級と地上に住む支配階級の対立を描く

『12モンキーズ』はウイルスによって荒廃した未来の地球を描く。テリー・ギリアムは『未来世紀ブラジル』にも地下都市を登場させたが、こちらは地下都市に避難した人類の生き残りをかけた戦いが描かれる

『エンバー 失われた光の物語』は、トム・ハンクス制作総指揮のハリウッド映画。電力が失われた世界で、地下都市エンバーの住民たちが光を求めて地上への脱出をめざす

『方舟さくら丸』は、核戦争後の荒廃した世界を舞台に地下シェルターで繰り広げられる人間模様を描いた安部公房のSF小説。同時代の閉塞感を通して、組織と個人の問題を剔抉する

……でしょうか。ヴェルヌやスウィフト、ケルアックも「地上と地下」というテーマで様々な作品を書いていますし、J・キャメロンや宮崎駿もこういったモチーフを作品世界に取り込むことが大好きですよね!

 しかし、世界には、地下世界のことを映画や小説ではなく、なんとノンフィクションで書いてある本があるのです。
 それが今日紹介する『地下世界をめぐる冒険』です!

 まずは概要からお伝えいたします。

概要

 本書は、世界各地の地下世界に関する様々なエピソードをまとめたものです。ハントは、ニューヨーク地下鉄の地下納骨堂、パリのカタコンブ、カッパドキアの地下都市、マヤの洞窟など、様々な地下空間を実際に訪れ、その歴史、文化、人々の生活などを紹介しています。

 本書は、大きく分けて以下の4つの章で構成されています。(英語版で読んでしまったので、日本語訳の章の区切りと若干ちがうかもしれませんが、おおむね内容は同じだと思います。)

  • 第一部 闇への旅立ち 地下世界への探求の歴史と、著者が地下世界に興味を持ったきっかけについて

  • 第二部 地下の都市と空間 世界各地の地下都市や地下空間の歴史、文化、人々の生活について

  • 第三部 地下の芸術と精神 地下世界にまつわる芸術作品や宗教的な意味合いについて

  • 第四部 地下世界の未来 地下世界の環境問題や、今後の活用可能性について

 そう! 概要をご覧になって分かる通り、単なる地下世界の紹介本ではなく、ハントの鋭い洞察と深い思索に基づいて、かなり掘り下げて地下世界のことが書かれています。

 彼は、地下世界を単なる物理的な場所ではなく、人間の精神や文化の奥深くに通じる場所として捉えています。

 あんまり書くとネタバレしてしまうと思うので、出版社のサイトとかアマゾンの書評のところにあった感想を載っけておきます。参考になれば幸いです。

  • 「地下世界に関する様々な知識が得られるだけでなく、人間の精神や文化について考えさせられる本です」

  • 「ハントの文章は、非常に美しく、読みやすいです。地下世界に対する好奇心が刺激される本です」

  • 「地下世界は、私たちが想像していたよりもはるかに魅力的な場所であることがわかりました」

 これらに加え、購読している朝日新聞に書評も載っていました! 
 こちらも参考にしてみてください。

 洞窟や地下世界に惹(ひ)かれるのは怪しい世界だからだ。見えないものは怪しいのである。地下世界は地獄を指し、「隠す」「見えない」という意味では冥界や死者の国であり、子宮でもあった。著者はそんな地下世界に取りつかれた現実逃避型人間である。洞窟、地下納骨堂、下水道、そんな方向のない世界で自分と向き合う。
 フランスの小村である男が自殺目的で農場のトンネルに入って行って、中で行方不明になったが34日後、奇跡的に助けられた。
 幽霊のように青白い骸骨さながらで生きていた。方向なき暗闇の世界に閉じ込められた男は肉体から離脱したような瞑想(めいそう)的神秘体験によって、帰還後、生きる意欲を得た。
 ニューヨークの地下鉄の壁にグラフィティアートを描くREVSは誰にも読まれない自伝を地下鉄の壁に独特のレタリングで書き続けてきた。REVSは如何(いか)なる人間か誰も知らない。彼を捜し始めて10年後に著者は彼に会うことに成功。書く目的を訊(き)くと、「使命があった」と一言。しかしこの時点で彼の作品は何者かの手によって煉瓦(れんが)で封印されていた。彼は自作を否定したのか? 謎が残る。
 著者の探検した地下世界は、まだ地上のほんの薄い皮膚の一部で、ジュール・ベルヌの地下世界にはほど遠く、肉体的範疇(はんちゅう)から出ていない。地球空洞世界も言及されているが、おとぎ話としてそれ以上踏み込まない。地球物理学が地球の真実を解明し尽くしてはいないはずだ。われわれの人体の内部に宇宙を内包しているように、地球の内部に空洞宇宙が存在していても決して不思議ではない。
 地球空洞を目前にして、いいところまできていながら、一歩が踏み出せず、再び地表の地下に戻ってしまうのは彼の唯物主義的な理性が、地球空洞をファンタジーとして彼の内部に封印してしまったのかな? せめて物質世界の限界を超越してもらいたかったけど。

評者: 横尾忠則 / 朝⽇新聞掲載:2020年10月17日

 日本のポップアートを代表する多彩な芸術家、横尾忠則らしい文体で綴られています。彼のファンである私はこの書評をきっかけに『地下世界をめぐる冒険』を買ってしまいました(笑)

まとめ

 ウィル・ハント著『地下世界をめぐる冒険』は、地下世界に興味がある人だけでなく、人間の精神や文化に興味がある人にもおすすめです。

 本書を読むことで、地下世界の新たな魅力を発見することができます。

 ぜひ、マンホールのふたを開けるように、この本を手に取ってみては?

地下の世界を照らす、驚きの探求がこの本の奥底に隠れています!


【編集後記】
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