見出し画像

【企画記事】ガラスの巡り合わせと約束

みなさん、こんばんは。禧螺です。

今日もnoteをご覧いただき、ありがとうございます。


私の住む地域では、昨日から、大粒の雨が降り注いでいます。

ただの雨ではなく、大粒の雨です。

一度、床上浸水を経験したことで、こうしてnoteを書いている最中も、雨の降る音が大きくなってくると、ちょっとドキドキしてしまいます。

クリエイターのみなさんも、自分の安全確保を優先的にされてから、noteでを読んで心を落ち着かせるとか、楽しい気分に浸ってくださいね。


本日は 第二回目「かいてみてほしい」 を進めていきます。

今日の記事の詳しい概要は、下の記事をご覧ください↓

文章、絵、創作等、様々な提案をいただき、心から感謝申し上げます。

誰かからお題をいただけることも、その方と一緒に創作活動ができているみたいで、楽しませていただいています。

本日のお題は、 秋さん からいただきました!


いただいたお題は、

2000字程度の小説で、テーマは せつない夏

です。


それでは、参ります。


なお、次回の更新は、お盆をはさむため、

17日(火)か18日(水)の投稿

となります。

もうしばらくお時間をいただくことになりますが、よろしくお願い申し上げます。




あなたと出逢ったあの夏の日は、生涯のガラス細工になった。


私はその夏、死ぬ予定で、実家に帰省した。

職場で陰湿ないじめとパワハラを受け、心身の健康を崩してしまい、やっとのことで実家に帰って来た。

両親には、いつもの「明るく元気な私」としてやり過ごしたが、もう生きていく気力は残っていない。


実家の裏、歩いて10分ほどの所に、古びた井戸がある。

そこは、「この世で生を全う出来ず、井戸に身を投げた女性の幽霊が、生きた人間をあの世へ連れて行かれてしまう」という噂があった。

今夜はお祭りで、誰が夜に出歩いてもおかしくない。

自分の最期の言葉となる「お祭り、行ってくるね。」を心を込めて言ったあと、真っ直ぐに井戸に向かった。

到着後、フェンスをどけて、ためらいなく身を投げようとしたその時、後ろからものすごい力で引っ張られ、その反動で地面に尻餅をついた。

地面に尻餅をついたはずなのに、上半身は水を被ったかのように、とても冷たい。

後ろを見ると、体中に苔が生え、所々に血の跡が付いている女性と瞳が合った。

この女性が井戸の幽霊だと悟ったけれど、疑問が残った。

どうして突き落とされないのか。

「あの…突き落としてくれないんですか?」

死ぬつもりできたのに、これでは話が違う。

「はぁ?!あのねぇ、誰でも見境なく、人を井戸に突き落とすようなことなんてしないわよ!!どうして人を殺して、悦に浸ってないといけないのよ?!幽霊違いなんじゃないの?!」

「全く、失礼しちゃう!!」と、言いたいことだけ言って、そっぽ向いてしまったその女性を、あっけにとられながら見ていた。

私の様子から、ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、彼女が声をかけてきた。

「そんな思いつめた顔をして、どうしたの?」

「私……今日ここで、死のうと思って来たんです。噂で、幽霊が井戸に突き落としてくれるって聞いたので…」

そう真面目に応えると、彼女は頭を抱える真似をした。


それから奇妙なことに、幽霊の女性に向かって、自分が受けた職場のいじめやパワハラについて、溢れ出る言葉の流れのままに話した。

こんなこと、死んでしまった人に話すなんて、頭がおかしいのではないかと思われてしまうだろう。

でも、キレイな言葉で、分かってもらえるようになんて、伝えることが出来なかった。

思い出して話せば話すほど、涙が出て、苦しくて、こんな選択しか出来ない自分が情けなった。

だけど、死ぬならなんでもいいやと思ったやけくそ感からか、自分じゃないような表現がたくさん出てきて、どうやって話をまとめたらいいのか分からない状態で、話を聴いてもらった。

彼女は、私の横で一緒に座って、時々視線を合わせて、頷いて話を聴いてくれていた。

その温かな眼差しと眼が合うたびに、この人が生きていてくれたなら、どれだけ心強かっただろうかと思う。

つい夢中になって話していた状態から我に返ると、女性が瞳に涙を溜めていて、次の瞬間に力強く抱きしめられた。

「そっか、それでここまで来たんだね。…あなたは、自分のこころの痛みに向き合えているから、きっと未来で、その癒しを待つ人が大勢いるはずよ…。」

頭を優しく撫でられることは、大人になってから全然なかったけれど、その手の温もりがちゃんと伝わってくる。

すると、彼女の身体が光り出し、空へと舞い上がりはじめた。

わけが分からなくて、私は戸惑った。

「えっ、これはどうなって…」

「多分、誰かを愛しいと、心の底から再び思うことが出来たから、空に帰る準備が出来たのだと思うの。私は、やりたいことができないまま、怒りと悲しみの中で死んでしまったけれど、あなたとの縁が出来たから、きっとちゃんと空からあなたのことを見守れるし、助けられる。それに、あなたと私は、どこか似ているのかもしれない。」

彼女は満面の笑みでそう語る。

「そんな、あなただけが救われるなんて…!」

「私も一緒にあなたと未来へ行く。その時の未来まで、待っていて!」

また一人にされた私は、結局死ぬことが出来なかった。

「自分のこころや、人のこころを大切にできる仕事がしたい」と強く思い、次の日にすぐ退職を決め、その年の暮れに、一旦社会から離れた。


あれから2年後、この夏から、実家の近くで、ある人に弟子入りをして、ガラス職人の見習いになった。

あの夏の日と同じ日に、師匠の家族写真を見て驚いた。

私が井戸で会った女性は、師匠の祖母に当たる人だった。

気になって聞いてみると、当時、彼女もガラス職人だったらしいが、周囲の激しい反対と無理解に苦しみ、夫と子どもを残して、井戸に身を投げてしまったのだそうだ。

ガラス職人たる彼女は「人のこころに触れるように、ガラス細工を作っていきたい」と、常日頃からそれを信条にしていたのだと言う。


「生きている間に、お会いしたかったです…」

そう呟く私の手には、師匠が「なんとなく、持っていて欲しい」と言う理由だけで譲られた、彼女の道具が握りしめられている。

あの夏の切なさは、こころの中で、永遠に続いている。



秋さん、2050字くらいになってしまってすみません。


秋さんは、様々な創作企画を立ち上げておられ、note内でのサークルはもちろん、実際に文学フリマでも多くの作品を手がけていらっしゃいます。

秋さんの記事を元に知ったクリエイターさんが何人もいて、特に小説を書かれるクリエイターさんに関しては、多くの方を知っておられるし、ご自身の記事内で丁寧に紹介されていて、掲載されている方のnoteホームへ遊びに行かせていただくことがあります。

マガジンに紹介してくださっている作品は、読み応えがあり、単に楽しむことも出来ますが、いろいろな考えを巡らせながら読んでいける作品に多く出会えるので、noteの開拓方法がいまだに定まらない私には、心強い存在です。


はじめは「文学に特化された方なのかな」と思っていたのですが、近頃耳にしない日はない、東京オリンピックのことや、新しい日常とよばれるニューライフスタイルのことにも言及されています。

ある日はご自身の意見を書かれていたり、またある日はそれらを題材にした小説を書かれていて、いろいろな方法で、現状に対してご自身の考えを表現されている姿を見て、私も一つのテーマに関して、いろいろな表現を使っていきたいなと思いました。

同じ文章でも、自分の考えを書くことと、創作として表現すること、あるいは説明文的に書くのは、全く違う雰囲気を帯びるということを、体感させてくれるnoteの世界観をお持ちです。


このマガジンから、いろいろなクリエイターさんを知ることができます↓


秋さんの、2021年8月13日現在の最新記事はこちらです↓


秋さん、リクエストありがとうございました!



トップ画像は Haruka_Hs様 からお借りしました!

ありがとうございました!


みなさんからのスキに、今日も創作欲が湧いてきます。

この記事にお時間をいただき、ありがとうございました!


それでは、今日はここまでです。

みなさん、よき創作日和を!



クリエイターの活動費として、使わせていただきます。 また、日本を中心とした、伝統文化を守り後世にも残して参りたいですので、その保護活動費としても使わせていただきます。