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機械分野の話

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記事一覧

故障検出の話

本稿では概要について説明します。具体的な故障検出方法については、また別記事にて解説します。

故障検知とは故障または異常とは、運転中のシステムの特性が予期せざる理由によって変化することです。システムの特性が変化するとシステムの出力(観測値) も変化するため、出力を常時監視することによって故障を検知することができます。つまり故障検知とは正常時と故障時の観測値の差違に基づいています。しかし故障箇所や故

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最適設計の話

最適設計とは最適設計とは、設計対象の数理モデルを構築し、そのもとで設計変数や制約条件、目的関数(最小化あるいは最大化したい評価指標)を設定し、各種のアルゴリズムを用いて数理的に適解を探索する作業のことです。

従来、設計者が行っていた設計案の提案と検証という反復プロセスを最適化アルゴリズムによる数理処理で代替することで、設計者が思いつかない解を合理的に生み出すことが期待されています。

最適設計の

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熱音響現象の話

熱音響現象とは熱音響現象とは音と熱の相互作用です。その現象にはエネルギー変換とエネルギー輸送の2つの形態があります。

エネルギー変換では、熱から音波あるいはその逆に音波から熱へエネルギーが変換されます。ここでいう音波とは、純然たる音波ではなく、発生する振動流れに付随して生じる音の意味です。

熱音響効果1本の長い管の軸に沿って大きな温度勾配があると管内気体は振動します。これが熱音響効果です。詳細

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騒音設計と快音設計の話

従来、製品から出る音は悪いものとの認識があり、騒音を抑えた製品開発が行われてきました。

しかし騒音レベルが同じであっても「聴感」は異なります。また、あまりに騒音が小さいと製品が機能していないと感じる場合もあります。

そこで製品から出る音を悪いもの(騒音)と捉えるのではなく、音を製品の価値の1つと捉えて製品開発を行う考え方が生まれました。これが快音設計です。

騒音設計と快音設計の違い騒音設計で

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音響解析の話3

音響解析の話3

前回までのお話です。
音響解析の話1
音響解析の話2

幾何音響理論幾何音響理論は音の波動性を無視して扱うもので、直接音と反射音の間の干渉や、回折などの波動現象は起こらないとし、光と同じように直進および幾何学的反射のみで音の伝搬を記述します。

この幾何音響理論の代表的な解析手法には音線法と虚像法があります。

【音線法】
音線と呼ばれる単位エネルギーの進行経路を用いてその反射履歴を追跡する計算手

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音響解析の話2

音響解析の話2

音響解析の話1の続きです。

音響解析の理論音響の支配方程式は「波動方程式」と「空気の体積弾性係数」から構成されます。

【波動方程式】
波動方程式は音波、水面の波紋、電磁波など様々な媒質の振動現象を記述する基本方程式で、主に流体力学、弾性体力学の分野に該当します。

【空気の体積弾性係数】
弾性とは、外力を加えると変形し外力を除くと元の形に戻る性質です。つまり体積弾性係数とは物質の圧縮性を表す量

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音響解析の話1

音響解析の話1

音響解析の目的は「騒音低減」と「快音設計」です。

例えば、設計時に予期していなかった騒音が発生したとき、その製品はエネルギーの一部を無駄に音の発生で消費しており、本来の性能を100%発揮していないことになります。またその騒音からその製品の品質に対するイメージも損ねます。

一方、オーディオ機器のようにユーザーの嗜好に合わせて心地良い音を届ける快音設計もあります。

音響解析の例【ノイズ低減のマイ

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物理量・工業量・感覚量の話

物理量・工業量・感覚量の話

人は様々な尺度で自然界を分類します。例えば火、水、木、土、金属がありますが、これは中国の哲学が発端です。

某マーベル映画では時間、空間、精神、力、物質、魂で分類しています。

一方、私達の現代社会では物理学がその役目を果たしています。素粒子から宇宙まで、あらゆるスケールの現象を統一的に説明しています。

物理学とは物理学とは、物質の性質や振る舞い、またそれらを司る普遍的な法則を観察事実にもとづい

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少し専門的な熱設計の話

本稿では、熱設計と熱回路網について解説します。

熱設計について熱設計とは、熱計算を行い設計段階で必要な熱対策を盛り込むことです。

特に最近の電気・電子機器では小型化と高性能化の傾向が続いた影響で、熱問題は避けられない状況となっています。 そのため熱問題が発生してからの対策では遅く、設計段階から機器の温度上昇を予測しようという機運が高まりました。

これを「熱設計」と呼びます。適切に熱設計する

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少し専門的な熱解析の話

少し専門的な熱解析の話

水や空気の流れはなかなか視認できません(※)。

さらにそれら流体が持つ熱の「伝わり方」となると、想像することさえ難しくなります。

今回はこれら熱の動きを視覚化する「熱解析」について解説します。

(※ 温度を色で識別する技術の話)

熱解析の種類熱解析は大きく分けて2つあります。
* 熱流体解析
* 熱応力解析

熱流体解析では、流体と気体を対象とし熱の伝わり度合いを解析します。

反対に熱

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少し専門的な電磁気学の話

少し専門的な電磁気学の話

本稿では電磁気学について話を進めます。

ただし電磁気学の理論については、既に解説記事が多く今更扱う内容ではありません。そこで今回は、筆者が思う電磁気学の1番の特徴について説明します。

電磁気学のイメージ皆さんは電磁気学にどのようなイメージをお持ちでしょうか?

(完全に私見ですが)電磁気学は「座標や方向」が重視された学問だと思います。例えばgrad、rot、divといったベクトル解析の記号が出

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少し専門的な流体力学の話2

少し専門的な流体力学の話2

今回は流体解析に関するお話です。

流体解析とは、空気や水などの流体の流れをシミュレーションによって解析する技術です。

空調機による部屋の気流解析や天気予報の気圧解析、他にも建築、車両設計、石油工学、外科学、気象学など様々な業界で幅広く利用されています。

最近でも咳の飛沫の飛散シミュレーションで使われています。

流体解析とはコンピュータを用いて計算する流体解析を一般にCFD「Computat

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少し専門的な流体力学の話

少し専門的な流体力学の話

流体力学とは、文字通り力学的な視点から流体の運動を扱う学問です。

その中でも特に「加えられた力」と「それによって生じる変形の速さ(流速)」との関係が考察の対象となります。

流体(空気や水)が豊富な地球に居る以上、切っても切り離せない学問といえ次の土台となっています。
船舶工学、航空工学、宇宙工学、化学工学
水理学、河川工学、海岸工学、応用力学
環境工学、建築環境工学、流体素子

流体力学はキー

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摩擦の話

摩擦の話

摩擦は無視されがちです。影響がそれほど顕著ではなかったり、あるいは運動方程式を簡単にして解きやすくするためです。しかし、接触がある限り摩擦は必ず発生します。それは原子レベルのミクロな世界においてもです。

摩擦現象は意外と身近に溢れています。例えば、釘が抜けない原理も摩擦力にあります。このようにスルーされがちな摩擦ですが、少し理解を深め見方を変えるだけで、普段何気なく見過ごしていた現象も新鮮な気持

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