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エッセイらしきものばかり

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何がエッセイなのかよく分かっていない人が書いたエッセイらしきものです。
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2022年8月の記事一覧

大人の階段で足踏みしているようです

大人の階段で足踏みしているようです

 よくある常套句のひとつに「最近の若いもんは」というものがあります。噂では古代エジプトがそういうことを書いた文字が残っているとかで、軽く検索するとその手の話がたくさん出てきます。

 よくある常套句ですから、私も子供のころから知っていました。そして、「自分もそんなことを言う大人になるのか、嫌だなあ」と将来を嘆いていました。もちろん、言われた方は嫌な思いをするだろうとの予想は簡単にできましたから、「

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誰にとってもよく分からないサイン会

誰にとってもよく分からないサイン会

 小学生だった頃、私の地元と姉妹都市だった英語圏にある某市からふたりの少年がやってきました。数日間は私のいるクラスで一緒に授業を受けるとのことでした。ふたりの少年はどちらも金髪の白人でございまして、田舎の小学校で話題にならないわけがありません。他のクラスの女の子がわざわざ見に来るなど、ちょっとした騒ぎになりました。

 そのうち、女の子のひとりがこんなことを言い出しました。「サインもらっていい?」

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母乳という都市の闇

母乳という都市の闇

 都市部には犯罪が多いとテレビから教わりました。父親が好きだった警察24時の類が原因だと思います。夜の都心で顔面をモザイク処理された男性が警官と激モメしているのを見て、都会は怖いところだと震えあがったものです。ネットに公開されている犯罪統計を見ると、実際に都会は犯罪が多くなっています。それも繁華街であるほど多い。人が多ければ悪い人も多くなる。よく考えたら当たり前の話です。

 都市は怖いなあとはマ

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避難訓練付コンサートで怒られない

避難訓練付コンサートで怒られない

 友人から「コンサートに行かないか」と誘われたんですが、「合間に避難訓練することになるけど」とよく分からない補足をしてきたんです。詳しく聞くと、いわゆる警察音楽隊のコンサートなのですが、救急安心センター事業の周知を目的としたイベントのようなんです。救急安心センター事業とは救急車を呼ぶべきか迷った時の受け皿として立ち上がった事業でございまして、「#7119」にかけると専門家が状況を把握し、救急車を呼

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財布が盗まれたと思っていたんです

 高校生だった頃、学校で財布泥棒が発生していました。体育などで教室に誰もいなくなった時を見計らって盗んでいるとされ、学生に注意喚起がされていました。

 心配性の私は注意喚起する前から窃盗犯には備えていたつもりでしたが、泥棒発生の一報を受けて防犯に一層力を入れることにしました。なるべく貴重品は肌身離さずを基本とし、もし貴重品を置いて教室を離れる際はカバンの奥底の更に奥底へ突っ込むなどして泥棒に見つ

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通行止めイルミネーション計画

通行止めイルミネーション計画

 いつものジョギングコースの一部が通行止めになりました。工事をするというのが理由です。結構な規模の工事なのか通行止めの期間は年単位でございまして、ジョギングコースの変更を余儀なくされました。

 通行止めになった区間は地元住民の生活道路となっていたため、通行止めになると同時に近くに迂回路ができました。臨時の迂回路なので道の両脇は工事現場にありがちな、警告色で彩られた柵が建ち並ぶ細い道ではありますけ

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やりたくないけど、できないと悔しい

やりたくないけど、できないと悔しい

 小学生だった頃、学習発表会で劇を披露することになっていたんです。その年、私たちが披露する演目はブレーメンの音楽隊でした。

 ブレーメンの音楽隊と言えばメインキャラはロバ・犬・猫・鶏というアニマルな面々ですが、私のクラスには30人以上の生徒がいました。メインのアニマル4なれなかった生徒は、悪役である泥棒たちになるか、もっと端役の何かになるか、もしくはちょっとしたナレーションをしゃべるだけになるか

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夢占い師が困る夢

夢占い師が困る夢

 その昔、あまりにも変な夢ばかり見ていたため、ネットで夢についてあれこれ検索していたところ、「夢占い」というものがあると知りました。見た夢の内容によって本人の心理状態を推測したり、今後の運命を予測する占いです。夢に犬が出てきたらそれは信頼できる人を表してるとか、夢の中で怒っていたら現実でもイライラしているとか、そんな感じの占いですね。もちろん、夢でいろんなものが出てきたら、それらを総合して占うよう

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埴輪を追いかけた先で祭が開催されてたんです

埴輪を追いかけた先で祭が開催されてたんです

 友人と共に車で千葉県の北東部を走っていました。もう本当に移動自体が目的の小旅行です。途中で海岸に立ち寄って砂浜で貝殻を投げつけ合ったり、道の駅で現地の名物丼を食べてむせたりしながら、車は芝山町に差しかかっていました。

 大都会が鎮座する関東地方もここまで来ると、のどかな風景が広がっています。あちらこちらに田んぼや雑木林が見られる。自然には困りませんが、刺激は不足する。私も友人も口数が少なくなり

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心の中の3歳児

心の中の3歳児

 子供はうんこが大好きです。母は幼少期の私が同級生と一緒にうんこを連呼しながら下校している様子を見て衝撃を覚えたそうです。

 人は成長するにつれて「うんこの連呼はよくないんだ」と思うようになります。私もそうなりました。しかし、「三つ子の魂百まで」のことわざ通り、いくら大きくなっても油断すると私の心の中の3歳児が暴走するんです。

 最近もありました。思えば、いい大人がカチカチ山の話をしてる時点で

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怪談のたまご

怪談のたまご

 知人から聞いた話です。

 知人は路線バスに乗って家路を急いでいた。しかし、その日は多くの用事をこなして疲れていました。乗り慣れたバスの車窓から見えるのは何百回と見た退屈な景色。知人は座席でウトウトするようになりました。

 しばらくして知人は妙な気配を感じて目を覚ましました。そして固まりました。自分以外のバスの乗客が全てお坊さんになっていたからです。

 もちろん、落ち着いて考えれば分かる話な

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貴重でも何でもない

貴重でも何でもない

 その昔、長期休みに実家へ帰っていた時の話です。私の他にも姉家族が帰省の最中でして、当然ながら私は甥っ子の遊び相手としてこの身を差し出すことになりました。

 子供の遊び相手ってのはなかなか体力のいる任務です。当時の甥っ子は確か3歳かそこらでした。もうやることなすこと全て楽しいみたいで、ゲームを始めたかと思えば庭に出てボールをあっちこっちに蹴りまくり、そうかと思えば私の肛門にこぶしを突っ込もうとし

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人知れずスイカを埋めに行った話

人知れずスイカを埋めに行った話

 毎年、スイカをくれる友人がいるんです。友人もスイカが好きで、知り合いの農家から買い付けているそうなのですが、その中でふたつみっつを私に融通してくれるんです。

 このスイカがまたうまいんです。甘くて水分豊富、夏が暑ければ暑いほど果汁が身体にしみます。暑い中を帰宅して、そのままスイカを包丁で真っ二つに割り、スプーンでシャクシャク食っているとあっという間になくなる。夏の日の贅沢です。

 今のような

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人んちの庭を通らされた

人んちの庭を通らされた

 10年くらい前のある夏の暑い日、38度の熱が出てしかも喉がものすごく痛くなったため、仕事を休んで病院に行こうと思ったんです。でも、私にはかかりつけの病院なんて便利なものがありませんでしたから、とりあえずネットで検索して近くにある診療所へ行きました。

 その診療所は住宅地の中にありまして、中に入ると昔ながらの診療所といった感じの雰囲気でした。名前を呼ばれて診察室に入ると、白髪が目立つニコニコした

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