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トウキョウ百景

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東京生まれ東京育ちの30代。 太と環は、それぞれの東京で生まれ育ち、二十歳の時に東京で出会いました。 2人が見てきた東京の景色、東京での物語を、紹介していきます。 ぼくらが育…
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#東京

目白で気が引き締まっているのは私です

目白で気が引き締まっているのは私です

「次は目白。目白です」
山手線のアナウンスが告げる。まだ一駅しか乗っていないのにな、と惜しく思う。そして胸が高鳴り始める。
浅くなり始めた呼吸のままエスカレーターを登り切り、改札を出て右へ進む。そして20歩くらい歩けばすぐに門が見える。学習院大学だ。

私は大学1年〜3年くらいにかけて、よく学習院大に行っていた。それはバレーボールの練習をするためだ。私が通っていた大学と学習院大は提携のようなことを

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浅草の喫茶店で会いましょう

浅草の喫茶店で会いましょう

大阪から友達が遊びにきた。宗(たかし)は私が大阪にいる時に知り合い、いつもお笑いだの人間関係だのの話しで笑い、最後はだいたい「かつみさゆり」の話をして帰るという、変わった友達だ。波長がとにかく合うので、私が大阪に行く時、宗が東京にくるときは大抵遊ぶ。

宗が遊びにきた時、東京らしいところと考えて、東東京を選んだ。下町であるそのあたりであれば、東京っぽさが満載で楽しめると思ったからだ。私は東京出身だ

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同級生と芝公園駅に向かいながら、僕は東京タワーを変顔で見上げた

同級生と芝公園駅に向かいながら、僕は東京タワーを変顔で見上げた

高校に入学して間もない春、同じサッカー部の同期が練習中に大怪我して入院することになった。
まだまだ、隣にいる同期が良いやつなのか、はたまた相性が合わないやつなのか、探り合っているような時期である。
そんな関係性だったけれど、誰かしらの発案でとにかく病院にお見舞いに行こうぜという話になり、10人近くで学校帰りにゾロゾロ赴くことになった。

場所は、御成門にある病院だった。
地下鉄で向かう途中、お互い

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口コミが少ない練馬駅前のラーメン屋

口コミが少ない練馬駅前のラーメン屋

「某口コミサイトで評価3.5以上のお店は美味しい」
という話がよく聞かれるようになってからというもの、自分の外食先を選ぶ基準は少なからず変化したと思う。
外出先でご飯屋さんをパッと調べた時に、自然と数字でフィルターをかけてしまうようなこともよくあった。

ただ、数字の高さや「百名店」みたいな評価をアテにし過ぎるのは、あまり良くない。
期待感たっぷりで入店して、「これだけ期待させておいてがっかりだよ

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雑司ヶ谷にあるお墓は怖くない

雑司ヶ谷にあるお墓は怖くない

友達の学がカナダから帰ってきて、東京で遊んでいた。あちこち歩き回っていた私たちは、池袋から逸れ、なぜか雑司ヶ谷のお墓に足を踏み入れた。雲一つない秋晴れで、午後の陽光が眠気を誘うような日に来るようなところではないと感じつつ、次の目的地に向かうためには通るしかなかったのだ。

雑司ヶ谷にあるその名も「雑司ヶ谷霊園」は、東京ドーム一個分とか言いたくなるような広大な霊園で、碁盤の目のようにお墓が整然と並ん

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新宿は、朝とともに僕を迎え入れてくれた

新宿は、朝とともに僕を迎え入れてくれた

この世にはたくさんの「東京」という曲がある。「東京」がタイトルの一部になっている、歌詞の内容が「東京」のことを歌っている、みたいなやつまで入れると数え切れないほどある。
大御所からインディーズまで「東京」を歌い、今もなお「東京」は量産されている。

人によってお気に入りの「東京」があるのではないかと思うけれど、僕が1番好きな「東京」は、2014年にきのこ帝国がリリースした楽曲だ。
2014年は、僕

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吉祥寺のライブハウスを出ると、月が綺麗に見えていた

吉祥寺のライブハウスを出ると、月が綺麗に見えていた

いまから10年前。
大学4年生になったばかりの4月に、無事に働き先が決まった。
それと同時に、本来であれば最後のモラトリアムを、何も考えずに謳歌するような期間が始まった。
しかし、僕にはひたすら焦燥感があった。

本当にこの会社で良いんだろうか。
転勤がずっと付き纏うけど、本当に良いんだろうか。
面接で会った偉そうなおじさんたちみたいに、僕はなるんだろうか。
もらうことができる給料は見えたけれど、

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