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#匂いの記憶
オープン・フェア・スロー──お香と社会の3つの「隙間」
こんにちは、お香の交差点OKOCROSSINGを運営している麻布 香雅堂代表の山田です。
お香をはじめとする和のかおりの専門店・香雅堂を手伝い始めておよそ10年が経ちました。思うところがあって初めてこのような文章を書くに至っています。みなさまにあまり馴染みのないと思われるお香業界の今をさまざまな観点で紹介しながら、お香の未来について考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
香木・香
「永遠へ」 〜 明治神宮、命の森の匂い ~
猛暑に焼けつく8月の週末、久しぶりに明治神宮の森を散策した。庭好きの友人との都内”探庭活動”は究極のマイクロツーリズム。とは言え、この暑さでは鎮守の森の日陰無しには15分と歩いていられない。
今年創建百周年を迎える明治神宮は、私たちが愛してやまない大都会の緑の聖地。ファッションの街原宿の駅のすぐ隣に、東京ドーム15個分の広大な敷地の荘厳な森が広がっていることを、一体どれだけの人が意識しているだろ
「梅仕事」 ~ 梅雨のおくりもの ~
雨の匂いが近づき店頭に青梅が並んだ週末、今年も「梅シロップ」の仕込みをした。
真夏の外出から帰って飲む、冷たい水と氷で割った梅ジュースの美味しさ。細胞のひとつひとつが音をたてて喜ぶような命のご褒美を愉しみに、毎年いそいそと仕事にかかる。
俳句の季語にもある「“梅仕事”という言葉に馴染めない。」FBで見かけたそんな一言を意外に思ったのは、軽く腕まくりするような仕事始めと、終わった後の達成感をむし
「Vinyl」 ~ 12インチ聞香(もんこう) 〜
コロナウィルスの声が聞こえ始めた2月の初め。法事帰り、人気の少ない京都寺町通りを歩きながらふと目に付いた店に入った。雑居ビルの2階、本か雑誌で見かけた名前。何の店だったかよく覚えてはいないが、古書かレコードかそのあたりだ。
狭い階段を上がってドアを開いたとたんに、懐かしい匂いが鼻をかすめた。古本屋とはひとくせ違うホコリ&カビ臭さは、塩化ビニール「塩ビ」のそれだ。
狭い店内にはレコード盤が入った
「水際」 ~ 塩素と陽射しとちょっとハナミズ ~
余白の匂い
香りを「聞く」と言い慣わす世界に迷い込んで十余年。日々漂う匂いの体験と思いの切れ端を綴る「はなで聞くはなし」
土曜の朝のクリニックはすっきりと空いていて、窓の下の見慣れたアーケードも整然と開店の時間を待っている。待合室の棚から手に取ったコミックでは、高校生の帰宅部コンビが川沿いの階段に腰かけてとりとめのない会話で時間を潰している。やんちゃそうな方のモーレツな関西弁がページから溢れ出す