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ことばに関する雑記

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仕事中、あるいは日常生活の中で、ちょっと気になったことばについて、少し考えてみます。
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#ことば

ワシとタカ、イルカとクジラ

ワシとタカ、イルカとクジラ

日本のプロ野球に “イーグルス” や “ホークス” と名のついた球団がある。「イーグル」=「eagle」=「鷲(ワシ)」、そして「ホーク」=「hawk」=「鷹(タカ)」ということは多くの人が知っているだろう。

実物を見る機会は多くないかもしれないが、テレビの映像で見たことはあるだろう。鋭い眼と大きな翼をもつあの鳥の姿は、おそらく誰でもすぐ頭に思い浮かぶことができると思う。しかしそこに出てきた鳥は

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トルコ、それともテュルキエ?

トルコ、それともテュルキエ?

英国のBBCの英語ニュースを聞いていて気付いた。トルコの大統領選に関するニュースだったが、アナウンサーは同国の国名を “Turkey” と言っている。

別に驚くことではない。トルコはずっと昔から日本語で「トルコ」、英語では「Turkey」だったから。

気になったのは、しばらく前にトルコが国名表記を変更するというニュースを読んだ記憶がかすかにあったからだ。確かに、英語で ”turkey” は「七

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プロパガンダ

 このところ、報道番組などで “プロパガンダ” という言葉をよく聞く。

 東西冷戦真っ盛りの頃、学生運動や労働運動が盛んだった頃、あるいは過去の世界大戦を振り返るといった文脈の中でよく耳にしたような気がする。日常会話で使うような用語ではないが、おそらくほとんどの人は、それなりに意味を理解して使っているのだろう。

 自分なりの解釈では、多くの場合、怪しげな情報で特定の方向に人を誘導しようとするこ

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そちらが “激する” ほど、こちらは “冷める”

そちらが “激する” ほど、こちらは “冷める”

 新聞のテレビ欄、雑誌、ニュースの見出しなどで、”激” の文字をよく目にする。

 「〇〇が激怒」とあるので、〇〇さんはいったいどんな様子で怒りを表しているのだろうかと興味津々で本文を読んでみる。すると、何のことはない、〇〇さんが何か不満を述べていたとか、別の意見があって反論しているという程度のことだ。

 どうみても激怒している様子はない。

 そもそも本当に激怒している人は、しゃべらない。押し

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否定疑問文には要注意!

否定疑問文には要注意!

 ある問診票の質問に答えているときに面食らった。

 「〇〇でアレルギー反応が出たことはありませんか? はい / いいえ」とある。これまでアレルギー反応は出たことはない。そう答えたい。口頭で質問されたら、「ありません」と答えるだろう。でも「はい」か「いいえ」しか選択肢がないと、どちらを選べばいいのか大いに迷ってしまった。

 「ありませんか?」の部分に反応すれば「はい」になるだろう。しかし、「アレ

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ウクライナ侵攻のニュースで思うこと

 このところウクライナ侵攻のニュースにくぎ付けになっている。仕事中もネットラジオやニュース専門局のライブストリーミングを流しっぱなしにしている。

 21世紀のこの時代に、あのような前近代的な戦争行為が実際に起こることには驚くほかない。

 テレビのニュース番組の中で "NATO" についての解説がたびたびなされている。その昔、西側諸国の軍事同盟である「北大西洋条約機構(NATO)」と旧ソ連を中心

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名前が出てこないだけ?

名前が出てこないだけ?

 いつのころからかよくわからないが、広告で見かけるタレントの名前が表示されなくなった。昔はどうだっかわからないが、つい最近まで、タレントの写真があると、その横に小さくその人の名前が表示されていた。気づいていた人は少ないとは思うが。

 理由はよくわからない。肖像権を尊重するということなら、以前は名前が表示されていたのに、今では表示されなくなったことが説明できない。普通に考えれば、昔よりも今の方が

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カンマ vs ピリオド

カンマ vs ピリオド

 仕事で工学分野の文章を扱うことが多いのだが、同じ言語で書かれた文章でも地域や国によって数値の表記が異なることがあって、時に混乱させられる。

 日本では、数値の桁取りの "," (カンマ)は3桁ごとのまとまりを示す記号、"." (ピリオド)は小数点を示す。これは、米国や英国でも同じ。しかし、この表記方法は世界共通というわけではない。だからややこしい。

 例えば、英語の文章の中で "123.45

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「夜には晴れるでしょう」と言われても...

天気予報でたまに耳にする表現、「夜には晴れるでしょう」には微妙な引っ掛かりを覚える。

天気用語には厳密な定義があるようだ。そのうえで公式の予報でアナウンスしているのだから、正しい言い方なのだろう。

「晴れ」ということばでほとんどの人が頭に描くのは、青空だろう。日も差しているはずだ。そもそもこの漢字の中には「日」も「青」も入っている。

だから引っ掛かる。

澄み切った夜空を表すのに「晴れ」以外

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「否定できない」のうさんくささ

「否定できない」という言い回しが苦手だ。

文脈から判断すると、断言はできないが可能性があるということをにおわせ、読み手側に一定の効果を及ぼすことを狙っているのだろう。

断言しているわけではない。だから言った側は責任を負うつもりはない。どうとらえるかは、読んだ側の判断だ。といったかなり狡猾な逃げを打ちながら、ある方向に読み手を誘導しようという魂胆が透けて見える。

「Aである」という文の意味はは

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「せいぜい」頑張ってください

だいぶ前にテレビで観たオリンピック代表選手の壮行会だったか。時の首相が挨拶の中で、「せいぜい頑張ってください」というのを聞いて微妙な引っかかりを覚えた。

大急ぎで言い足すが、このことば遣いはまったく正しい。あらためて辞書を引くまでもなく、力の限り頑張ってほしいと言っているわけだから、何らいちゃもんをつける筋合いはない。しかし何だ、この違和感は。

日常生活で「せいぜい頑張れ」と言うのは、期待して

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アンガージュマン

翻訳の仕事をしていると、実務上よく出てくるのになかなか訳しにくい単語に出くわすことがある。英語の動詞 "engage(名詞形ではengagement)" もその一つだ。関与するとか、噛みあうといった意味なのだが、日本語にするとなかなかしっくりこないことが多い。

機械類のマニュアルなどの工学的な文書で、「歯車が噛みあう」というのはいい。しかし、人や集団などの関係性を表す場面では、約束や交わり、関与

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Playにはご注意

「遊ぶ」を意味する英語でまず頭に浮かぶのは "play" だろう。しかしこの単語は使い方が要注意だと思う。大人が遊ぶという場面で "play" を使うと別の意味にとられる恐れがあるからだ。日本語でも、大人が誰かと遊ぶという場面で、「〇〇とプレイする」とか言われると、ドキッとして変な想像をしてしまう人がいるだろう。英語にもそれに近い語感がある。

子どもが遊ぶのに "play" を使うのは全く問題は

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「すぎる」が多すぎる?

このところよく目にする言い回し「~~すぎる〇〇」が何となく気になる。

美しすぎる○○
美味しすぎる〇〇
楽しすぎる〇〇
......

「~~すぎる」からダメと後に続くのかと思いきや、そうではない。もっぱら誉め言葉として、「〇〇」のところを強調したいときに使う。

よく使われる強調表現「すごく」、「本当に」、「とても」、「超」などは強調したい言葉の前に付ける。それに対して、これは後ろに付けるとい

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