SENSEN

技術系産業翻訳者として20余年。 たまにはオリジナルの文章を発信したいという思いから、…

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技術系産業翻訳者として20余年。 たまにはオリジナルの文章を発信したいという思いから、徒然なるままにエッセイを書いています。

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  • つぶやきノベル

    これらの作品はフィクションです。 ふと頭に浮かんだことを短い小説風につぶやいています。

  • ことばに関する雑記

    仕事中、あるいは日常生活の中で、ちょっと気になったことばについて、少し考えてみます。

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    日常生活の中でふと頭に浮かんだことを雑記としてまとめています。

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    旅にまつわる雑記をまとめています。

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鏡に映る真実

山本琢磨は書斎のデスクに座り、じっとスマホの画面を見つめていた。指先に僅かな汗がにじみ、緊張が体中を駆け巡る。今日は重要な日だ。数か月かけて周到に準備してきた計画を実行に移す日である。 ターゲットは山本のビジネスパートナー、田岡修一。山本は田岡の成功と影響力に嫉妬し、自らの立場を守るために田岡を排除しようと密かに決意したのだ。 その夜、山本は田岡の自宅を訪れた。表向きは新しいビジネスプランについて話し合うためだったが、実際には彼の計画を実行するためだ。山本は事前に田岡のス

    • ASAPは怖い?怖くない?

      仕事柄、英文でメールのやり取りをよくする。 この仕事を始めた当初は、初めにきちんと挨拶の文言を入れなければと思い、肝心の内容よりも挨拶文に悩んだこともあった。さすがに「貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」のようなことを英文で書こうとは思わなかったが。 慣れてくると、そのようなことにあまり気を使う必要はないことがわかってきた。そもそも、相手から送られてくる英文メールも、「Hi」で始まっていきなり用件が書かれている。全く初めてやり取りする相手なら少し改まった表現を使

      • よく聞こえるけど、聴こえないこともある

        ある由緒ある神社を訪れたときの話である。境内を散策していると、神社内の徒歩ツアーの看板が目に入った。普段は立ち入れない場所を神社の神職にある人が案内してくれるという。日に数回決まった時間に案内してくれているらしい。いわば神社のバックステージツアーいうことか。 せっかくなので参加することにした。 ツアーの予定時間に集合場所で待っていると、神職の衣装を着た人がやってきた。録音や撮影などは遠慮してほしいといった簡単な注意があった後に数人の参加者とともにツアーが始まった。 ツア

        • 脳内は化学物質がいっぱい?

          十数年前からジョギングを趣味にしている。”ランニング” と呼ぶほどしっかりと走り込むというわけではなく、時々歩いて景色を眺めたり、自動販売機で買ったドリンクを飲んだりしながら、散歩の延長のような感覚で続けている。 そのようなのんびりした走り方でも、たまに ”ランナーズハイ” の状態になっていると感じることがある。その時は、身体がやたら軽く、頭の中がすっきりして、「このまま永遠に走り続けられるかも」という気分になる。 おそらく、身体がこの “ハイ” になった状態を忘れられず

        鏡に映る真実

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        記事

          セルフレジに慣れる日は来るかな?

          セルフレジの導入が徐々に進んでいる。 全てがセルフレジという店はまだ多くはないようだが、例えば、スーパーマーケットなどで、人のいるレジとセルフレジがそれぞれいくつか並んでいるという店は普通に見かけるようになった。もしかすると、セルフレジの比率は徐々に高くなっているのかもしれない。 労働人口の減少という社会情勢の中で人手の確保が困難になってきていること、省力化によって人件費を圧縮していかざるを得ない経済的側面などを考えると、この動きが止まることはおそらくないだろう。 しか

          セルフレジに慣れる日は来るかな?

          ワシとタカ、イルカとクジラ

          日本のプロ野球に “イーグルス” や “ホークス” と名のついた球団がある。「イーグル」=「eagle」=「鷲(ワシ)」、そして「ホーク」=「hawk」=「鷹(タカ)」ということは多くの人が知っているだろう。 実物を見る機会は多くないかもしれないが、テレビの映像で見たことはあるだろう。鋭い眼と大きな翼をもつあの鳥の姿は、おそらく誰でもすぐ頭に思い浮かぶことができると思う。しかしそこに出てきた鳥はワシか?それともタカか?となると途端に自信がなくなってくる。 気になったので辞

          ワシとタカ、イルカとクジラ

          “人の記憶はあてにならない” のはけっこう怖いことかも

          テレビ番組を観ていると、時々、過去のテレビ番組や映画などの一場面が流れることがある。 特に自分にとって印象的な場面だとつい見入ってしまう。そして、たまに、懐かしさとともに、「あれ、こんな内容だっけ?」という違和感のようなものを覚えることがある。 自分の頭の中にあったまさにその通りのものが再現されれば懐かしく思うだけだが、自分の記憶と違う部分があると頭の中に疑問符が浮かんでしまう。 違和感を覚える場合は、テレビに流れる再現映像が間違っているのかな?とふと思ってしまう。しか

          “人の記憶はあてにならない” のはけっこう怖いことかも

          仕事のやり方が “昭和” というつもりはないけれど...

          ある不動産関係の手続きを役所でする機会があった。 事前にネットで必要な手続き方法をしっかり検索する。まず、手元に準備しておく必要のある書類を細かくリストアップした。行政用語・法律用語では見慣れないものが多いが、ネット上には専門家による詳細な解説があって、何とか解読できた。ありがたい。 市区町村レベルの手続きに進む。 今ではどの地方自治体でもホームページがしっかりあって、必要な証明書類がどうすれば入手できるかを細かく案内してくれている。ただ、ほとんどの手続きはフォーマット

          仕事のやり方が “昭和” というつもりはないけれど...

          生成型AIともっと仲良くなりたい

          仕事の合間に生成型AIを試している。何となく “勘どころ” みたいなのはわかってきたが、まだ十分に使いこなせるところまでには至っていない。 雑談をする相手ならいいけど、すっかり仕事を任せるのはまだ怖い、まじめで物知りな新入社員を相手にしているような感じだ。 時々、noteに雑文をアップしているが、実はタイトルにはほとんど気を配っていなかった。ぼんやりとテーマが頭に浮かんだら、とりあえずのタイトルを付けて本文を書き始めるか、本文が完成してからタイトルを考える。場合によっては

          生成型AIともっと仲良くなりたい

          AIと迷惑メール:不完全な日本語

          ときどきメールボックスの「迷惑メール(Junk mail)フォルダ」をチェックする。迷惑メールでないメッセージが間違って「迷惑メール」フォルダに入ることがあるからだ。 ほとんどの迷惑メールは、本文を読むまでもなく、件名を見ただけでわかる。取引をしたこともない銀行名で「〇〇銀行が不正利用を検知」とか「口座利用を停止」とか脅されても、怖くもなんともない。使ったこともないアプリ名で、「情報を更新」と知らされても、勝手にどうぞと思ってしまう。わざとらしく、【緊急】とか【重要】と入れ

          AIと迷惑メール:不完全な日本語

          トルコ、それともテュルキエ?

          英国のBBCの英語ニュースを聞いていて気付いた。トルコの大統領選に関するニュースだったが、アナウンサーは同国の国名を “Turkey” と言っている。 別に驚くことではない。トルコはずっと昔から日本語で「トルコ」、英語では「Turkey」だったから。 気になったのは、しばらく前にトルコが国名表記を変更するというニュースを読んだ記憶がかすかにあったからだ。確かに、英語で ”turkey” は「七面鳥」だし、それに付随する語感もあまりいいものではないように思うので、表記を変え

          トルコ、それともテュルキエ?

          「罪と罰」、そして「無罪と無罰」

          あるテレビ番組で、数年前に起きた事件の被告人が心神喪失を理由に無罪判決を受けた経緯について、法律の専門家が解説しているのを観た。専門家として、法律の条文と判決の関係についてわかりやすく説明するものだった。 しかし、その際にスタジオにいるコメンテーターたちとのやり取りでは、何となく話が噛み合っていないように感じた。 刑法第39条の「心神喪失者の行為は、罰しない。」の趣旨は理解できる。しかし、実際に被害者はいるし、犯罪行為があったことも裁判所は認めている。それでも、犯罪自体が

          「罪と罰」、そして「無罪と無罰」

          「ひのえうまの逆バージョン」がほしい

          日本で子どもの出生数が初めて80万人を切り、想定よりもかなり早く人口減少が加速しているというニュースが先日あった。 新聞には過去数十年分の年毎の出生数の棒グラフが掲載されている。なるほど、このままいけば危機的な状況になるということがよくわかる。上がったり下がったりしながら全体的に下降傾向といった生易しいことではなく、明らかに右肩下がりの状態が続いている。 それはそれとして、このグラフを見るたびに気になっていたことがある。1966年のひのえうまだ。この年だけ、極端に出生数が

          「ひのえうまの逆バージョン」がほしい

          訴状が届いたらコメントしてほしい

          新聞を読んでいたら、たまたま同じ日の紙面に、前から気になっていた表現が三か所もあるのに気づいた。 1つは、ある団体が行政の決定に対して異議を唱え、その決定の取り消しを求めて提訴したというもの。その報道に関する行政側の担当者の話。「訴状が届いていないため、コメントは差し控える」。 2つ目は、ある法人が、短期の雇用契約を繰り返すのみで永続的な契約に切り替えないのは違法と非常勤職員が提訴したもの。記者から質問を受けたその法人の回答。「訴状が届いていないのでコメントは差し控える」

          訴状が届いたらコメントしてほしい

          “議長” にもいろいろ

          “議長” を英語にすると、まず思い浮かぶのは “chairman” だろうか。近年では、性差を感じさせるこの語を嫌い、”chairperson” や “chair” を使うのが標準的になっているかもしれない。 “chair” というのはもちろん「椅子」のことだ。会議の進行を促し、結論を導く役割として権威をもって議長席の椅子に座る人ということなのだろう。 なぜ、議長のことが気になったかというと、先日の米国下院で議長がなかなか決まらないという英語ニュースを聞いたからだ。日本語

          “議長” にもいろいろ

          偏差値に対するもやもや

           “偏差値” ということばを聞いたことがないという人はほとんどいないだろう。日常のやり取りでも、「偏差値が 65 の進学校」とか、「自分の偏差値は 48 なので、もう少し上げていかないと...」といった使い方をしていると思う。  数十年前、自分が受験生だったころにもこのことばはあった。模擬試験などの成績表を見ると、自分の得点の隣に平均点とかと並んで偏差値が出ていた記憶がある。  偏差値 50 が中心で、そこから離れるほど、学力が高い、あるいは学力が低いという指標になる。だ

          偏差値に対するもやもや