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「ひのえうまの逆バージョン」がほしい

日本で子どもの出生数が初めて80万人を切り、想定よりもかなり早く人口減少が加速しているというニュースが先日あった。

新聞には過去数十年分の年毎の出生数の棒グラフが掲載されている。なるほど、このままいけば危機的な状況になるということがよくわかる。上がったり下がったりしながら全体的に下降傾向といった生易しいことではなく、明らかに右肩下がりの状態が続いている。

それはそれとして、このグラフを見るたびに気になっていたことがある。1966年のひのえうまだ。この年だけ、極端に出生数が落ちているのが目立つ。前年から約25%低下し、人数で約46万人も減少している。次の年には約40%増加して約57万増えているから、この年の異常さがより際立っている。

そもそも「ひのえうま(丙午)」とは何か?いくつかの資料をみて、ざっくりまとめると、元々は中国古来の五行説で、この年は火災が多いという言い伝えがあった中、江戸時代にひのえうま生まれの女が放火魔となったという真偽不明の事件によって、「この年に生まれた女性は気性が激しく、災厄をもたらす」という迷信が生まれたらしい。

この年の2年前には日本で新幹線が開通した。それから5年後には人類が初めて月面に立った。このような科学の時代の中で、古来の迷信が理由で本来生まれてくるはずだった数十万人もの人がこの世に出てこなかったと考えると不思議な気がする。

無事この年に生まれてきた人たち、特に女性は、この迷信のことをどう思っているのだろうか?「そんな迷信でひとまとめにされて、性格まで勝手に決めつけられてはたまらない」と思っているのではないか。抗議の声を上げてもいいぐらいだと思う。ただやりすぎると、「ほら、やっぱり!」と言い出す輩が現れかねないけど。

この年に生まれた女性の放火魔が統計的に特に多かったとか、女性側の理由による離婚率が異様に高いといった統計値でもあれば話は別だが、調べるまでもなくそのような “客観的な” 証拠は見つからないだろう。ネットで調べればすぐにわかるが、この年に生まれた女性の著名人の一覧には魅力的な人たちの顔が並んでいる。

次のひのえうまは2026年になるはずだが、さすがにこの時代になって出生数がまたがたんと落ちるということはないだろうと思うし、そうならないことを願う。

“たかが” 迷信でこれほどの出生率の変動が起こるのなら、それを逆手にとって、特定の年には「こんな才能をもった人が生まれる」というプラスの迷信を人為的に広めてみてはどうだろうか。もしかしたら、少しは出生率の減少の歯止めの助けになるかもしれない。

例えば、2024年は「きのえたつ(甲辰)」ということになるらしいが、その120年前には「サイ・ヤング賞」で知られるサイ・ヤング投手がリーグ初の完全試合を達成した。60年前には東京オリンピックで日本の選手が活躍したし、王選手のホームラン日本記録もあった。こじつけでもなんでも、「次のきのえたつには、優れたアスリートがたくさん生まれる」という逆の迷信を意図的に広げてみるのだ。

十干・十二支の組み合わせは60あるので、過去の良い出来事を拾い上げて、この年には優れた芸術家が輩出される、この年には歴史に残る大思想家が生まれる、この年生まれは大変な人道主義者ばかり、この年に生まれた人はノーベル賞級の優秀な人ばかり...と60通りのパターンを考える必要があるが。

目立って活躍する人が多くいるときに「花の〇〇年組」という言い方をすることがあるが、これはあくまで後になってから言うこと。それとは逆に、「来年はこんなすごい人たちがたくさん生まれてきそうなので、みんなで期待しましょう!」と毎年気運を盛り上げることを習慣にできればよいのにと思う。少なくとも、ひのえうまのような迷信のような悪さはしないような気がするのだが。

ダメかな?

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