マガジンのカバー画像

御話

42
お話を考えるのが好きです。 不定期であげると思います。
運営しているクリエイター

#お笑い

需要と供給

月明りだけを頼りに、私は極寒の波止場を前へ前へと進んでいった。雨こそ降ってはいなかったが、吹き荒ぶ風はあまりにも強く、一歩一歩踏みしめながら歩みを進めた。
始めの頃はあまりの寒さに身震いが止まらなかったが、今となっては最早、寒さを通り越して痛みさえ感じるようになっていた。
波止場の先端に到着したところで、改めて辺りを見回してみたが、私以外に誰かがいる気配はやはり感じられなかった。
ここら辺は夜釣り

もっとみる

御話のお話 其の弐



プロローグ

 どうもー、こちら前回に引き続いての過酷な文章でございます。
 何をするかと言えば至って単純、「今までの御話を振り返る」です!
 あのね、もう一回説明するのも面倒だし、まあ大して気の利いたことも思いつかなかったから、一回こっちを読んでみてください。

はい、読んでくれましたね。そしたらもう、とっとと本題に入っちゃいましょう。
 いっけー!

「黒松という男」 2022年2月15日

もっとみる

御話のお話 其の壱



プロローグ

 2024年一発目の御話でございます。書いてるのは二か月くらい前なんですけどね。
 何書こうかなって、毎度迷うんですけどね、今回はなんと革命的な箸休め方法を見つけたんですよ。
 しかもこの箸休め方法、今回だけじゃなく定期的に使えちゃいます!

 その方法とは、「今までの御話を振り返る」、です。

 そうなんですよ、今までの御話ってある意味投げっぱなしというか、あげたら、はいおしま

もっとみる

親切講座

「ここ、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫!」
 山本に連れられて雑居ビルの一室までやってきた高木は、不安を拭いきれなかった。
「でも親切講座って、なんか怪しくない?」
「いやいや、俺も前から通ってるところだから。」
「うーん、そう言われても。」
 少し前に山本からいい講座があるという話を受け、冗談半分で来た高木だったが、いざ講座が始まる時間が近づいてくると恐怖心が強くなってきた。
「いいか、こ

もっとみる

3月15日

3月15日 真田千尋編

今日は香苗と一緒に渋谷でお買い物してきたよー!
来月から大学生になるんだし、お洋服とかいっぱい用意しておかないと。
憧れのキャンバスライフ、あれキャンパスライフだっけ?まあどっちでもいいや(笑)
何のサークルに入るか今から迷っちゃう!

そしてついに明日は卒業式。3年間、あっという間だったなあ。
色んなことあったけど、なんだかんだいって一高に通えてよかった!
こんなこ

もっとみる

君の名は?

 こんにちは、この手記を手に取ってくれて、そして読んでくれてありがとう。私はこの手記を未来に向けて書いた過去の人間だ。
 具体的にどれくらい過去かを書くと私の年齢がばれてしまうのでここでは伏せておこう。いつの時代も人は若く見られたいものさ。
 私がこの手記を書くに至ったきっかけは色々とあるが、端的に言えば、今この世界の状況を書き記したいと思ったからだ。
 この手記は地下深くに埋めるつもりなのでよっ

もっとみる

不吉な足音

 かつてこの辺りにはある国が存在した。
 しかし決して覆らない階級制度や独裁政治によって支配されていたその国の民たちは、ただただその日を生き抜くことしかできなかった。
このままでは民たちは死に絶え、いずれこの国も滅びゆくと感じた駿屋陽伝(するやおきつぐ)は、その状況を打破すべく仲間たちとともに立ち上がりついには革命を成功させたのだった。
その革命ののちに建国された駿屋国(するやのくに)では王制が敷

もっとみる

虹色バンブー

 いつもなら近くの公園に集まるのに、今日は違っていた。都会にあるこじゃれた喫茶店、こんな店、自分の意志で入ろうと思ったことなど一度もない。
 大体コーヒー一杯八百円て。今の時代いくらラーメンが高くなったとはいえ、割とガッツリ系のラーメンだって、トッピング付きで食べられる値段である。
「あの、何度も確認しちゃって申し訳ないけど、今日ってネタ合わせの予定だったよね。」
「そうだよ。」
「だよね?じゃあ

もっとみる

おくり神 序章

「もう決まった?」
「まだよ。え、もう決まったの?」
 急かすように机を小刻みに叩きながら、男は頷く。
「早すぎない?」
「お前が決めるの遅いだけだよ。」
「別にそんなことないと思うけど。ちなみに、何にしたの?」
「明太パスタ。」
 女は呆れたようにため息をつく。
「いっつもそればっかり。メニューなんか大して見てないんだから。」
 男は待ちきれなくなったのか呼び出しチャイムを鳴らす。
「ちょっと、

もっとみる

架空作品集 其ノ壱

はじめに

今回は、今までの御話とは一線を画す試みです。
小説の真似事だけでなく、ブログ風に書いてみたり、日記風に書いてみたり、様々なことに挑戦できる場だと思っております。
今回僕が挑戦したのは、今まではただただ妄想で止めていた、架空の漫画やアニメなどです。
そもそも僕には、大学時代の友人に毎日欠かさずに何かしらの文章を送るといういかれた日課があり、その企画??の一つとして、送り始めたのはきっかけ

もっとみる

頑張ってるフリ

 今回は御話とは名ばかりの、ただただ思ったことを連ねる形になってしまうかもしれません。エッセイとかに区分されるんですかね?うーん、違うか。
月一回の御話を楽しみにしてたのに!、という方々、大変申し訳ございませんが、ご容赦ください。
たまにはこういうのもありかな、なんて。
さて、本題に入らせていただきます。

 トリオを組むことになって少し経った頃だったでしょうか。ニシカワシアターくんからあるお誘い

もっとみる

アリ、時々キリギリス 雨の街編 −壱−

 街に近づいてくるにつれて、先程まで晴れ渡っていたはずの空が、みるみると曇り出してきた。
「ありゃあ雨雲じゃないか。」
 テトは空を指さしながらそう言った。
「本当だ。さっきまでは一面青空だったのに。」
 カクリが振り返ってみると、後ろにはまだ真っ青な空が広がっていた。
「心なしか、雨の日の匂いもしてこないか?」
 テトはそう言いながら大袈裟に鼻をひくつかせた。
「てことは、もう近いのかな。」

もっとみる

「10.5巻 外伝 奇跡の軌跡」

「10.5巻 外伝 奇跡の軌跡」

 この物語は、≪神の代弁者≫(メタトロン)のメンバーであり、四聖の一人、【奇跡】の能力者である藤間大和(とうまやまと)が、能力を発現させ、≪神の代弁者≫に入るまでの物語である。

 いつものように目を覚まし、いつものように顔を洗い、いつものように朝食を取り、いつものように着替え、いつものように家を出る。今日もいつもと同じような日常が続くと、藤間大和は思っていた。

もっとみる

アリ、時々キリギリス 雨の街編 −弐−

前回まで。

 先の大戦で人間側、亜人側ともに多大な犠牲を出して以降、両者の間には不可侵条約が結ばれていた。
 人間たちは相変わらず亜人たちのことを劣人(オト)と呼び、また亜人たちも魔力を有する人間たちのことを魔人と呼んで恐れていたが、大きな争いに発展することは、条約が締結されて以降はほとんどなかった。

 それ以降、両者は不要な争いを避けるため、基本的には限られた場所に住み、限られた仕事をするよ

もっとみる