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「Deseo」シリーズ

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「Deseo」と書いてデセオと読む。 そしてスペイン語では「欲望」という意味を持つ。
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#物語

送り火(Deseo)

送り火(Deseo)

神無月のとある場所。
あれ、季節外れの送り火が。

今宵集いし莫迦共に。
独り酌す者がいた。

あいあい よいそれ 寄っといで
黄泉の國から寄っといで

老いも若きも寄っといで
彷徨う霊をも寄っといで

亡霊妖(あやかし)皆歓迎!
至福のひとときどうぞお過ごし!

さぁさぁ盃 交わせれりゃ
あれよあれよと酔っ払い

ここに集いし無謀者に
ちょいとひとかけ音頭を鳴らそう!

「急急如律令」

そぅれ

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送粉者(Deseo)

──私は

多くの人間を手玉に取ってきた。
全てが在り来りでそこら中に有り触れて見えた。

少し『魔法』を掛けてやると。
皆、目の色を変え近寄ってくる。

「何奴も此奴も全て同じだ」

「抱き締めてやろうか」と言わんばかりで差し出す岩のような手で撫でられる為に生まれてきた女どもに。呆れ興味も無さそうな納戸色の目で、視線を向け薄笑を浮かべると、白い人生を諦め悟られぬように屍のように、生きる灰色の長髪

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英雄なんかに成り果てた(Deseo)

英雄なんざは成り飽きた。
神だの教祖だの教師だの。

廃墟に佇む神様成り飽きた。
己を赦してやれよと投げかけた。

救い続ける呪いを解いてやれ。
随分足掻いてきたもんだ。

与えられなきゃ切り捨てられる。
長年見てりゃそれを感じる。
与えられるから大切にされる。
神サマ、お前もそう思うだろう?

胡座をかいて座り、チラリと後ろを見ては嗤う語り手は、京の宮にある神社に住んでいるとある妖である。

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