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ニッポンのヒャッカ

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日本百貨店のテーマは”ニッポンのモノヅクリ”と”スグレモノ” 。 日本全国から集めた、モノづくりにこだわった職人の手による商品をお届けします。
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東京生まれ、東京育ち。おいしくて、かっこいい煎餅と歩む。―ニッポンのヒャッカ第19回―

東京生まれ、東京育ち。おいしくて、かっこいい煎餅と歩む。―ニッポンのヒャッカ第19回―

クラフト素材のパッケージに英語の文字。

透明フィルムからのぞく、色とりどりのお煎餅。

売り切れ御免。「テレビで観たわよ!」「入荷したんだね」見かけたらチャンスとばかりに次々に手に取っていく。

煎餅業界に彗星の如く現れた、今メディアでも話題の人気商品『SENBEI BROTHERS(センベイブラザーズ)』だ。 

東京都 江戸川区 船堀駅から徒歩10分。閑静な

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「その人自身」を語る帽子のススメ―ニッポンのヒャッカ第18回―

「その人自身」を語る帽子のススメ―ニッポンのヒャッカ第18回―

 岡山県南西部に位置する浅口郡(現浅口市)鴨方町。水が綺麗なことで知られるこの界隈には酒蔵もあり、桃やそうめんなどの産地として知られている。かつてこの地域では麦の生産も盛んだった。
 副産物である麦わらを平たくテープ状の組紐にした「麦稈真田(ばっかんさなだ)」と呼ばれる材料でつくった帽子こそ、麦わら帽子だった。

 そう、ここは麦わら帽子、発祥の生産地。
 この地で1960年に麦わら帽子の生産でス

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個性派ぞろい!布をまとった木目込人形の招き猫―ニッポンのヒャッカ第17回―

個性派ぞろい!布をまとった木目込人形の招き猫―ニッポンのヒャッカ第17回―

 エナメルの皮やスエード、プリント柄の生地が、ぷくっとした丸みのあるボディによく似合う。パッチリと丸くて大きな瞳は、愛らしさと癒しのまなざしそのもの。

大きな鈴はまるでアクセサリーのよう……。

 10センチほどの小さな体ながら抜群の存在感を放つその正体は、柿沼人形店が手がける江戸木目込人形の「招き猫」だ。

 そもそも招き猫といえば、陶器のつるんとした質感がほとんど。

 布でつくられた招き猫

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愛媛の柑橘の香りを届けるハンドクリーム―ニッポンのヒャッカ第16回―

愛媛の柑橘の香りを届けるハンドクリーム―ニッポンのヒャッカ第16回―

 伊予柑、みかん、甘夏、柚子、ブラッドオレンジ、レモン……。
甘酸っぱい香り、さわやかでスッキリした香り、甘く熟れた香り……。
 エッセンシャルオイルからボディシャンプー、バスパウダー、ルームコロンまで、柑橘系の果実果皮から抽出した天然精油を使った芳香アイテムのブランド、「媛香蔵(ひめかぐら)」。その品々はまるで、今、その場でフルーツの皮をむいたかのようなフレッシュでやさしい香りがすることで、人気

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江戸っ子の粋を染めあげた「梨園染」の手ぬぐいーニッポンのヒャッカ第15回ー

江戸っ子の粋を染めあげた「梨園染」の手ぬぐいーニッポンのヒャッカ第15回ー



「うちはもともとゆかたの染め生地屋でした。そのため、うちの手ぬぐいの生地は他の手ぬぐいと違って、ゆかた仕様の、丈夫で目が細かい生地なのです」

 ここは日本橋。
 手ぬぐいとゆかたの製造卸の老舗で、「梨園染」と呼ばれる染物ブランドを手がける戸田屋商店だ。
 「梨園」とは歌舞伎界を示すことば。「梨園染」というネーミングは戸田屋商店のオリジナルだが、手ぬぐいとゆかたと歌舞伎が、いったいどんな関係が

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カツオに惚れ込んだ夫婦が作る、沖縄伝統の滋養食「かちゅう汁」―ニッポンのヒャッカ沖縄編8―

カツオに惚れ込んだ夫婦が作る、沖縄伝統の滋養食「かちゅう汁」―ニッポンのヒャッカ沖縄編8―

汁碗に、たっぷりのカツオ節と宮古味噌を入れ、熱湯を注ぎ込む。
一気に箸でかき混ぜて、湯気がたちのぼる汁をすすれば、
身体はポカポカ温まり、なにやら力が湧いてくる。

かつて宮古島で、風邪を引いたときや疲れたとき、
「元気が出るように」と食べられていた「かちゅう汁」。

宮古島のとなりの伊良部島では、これに生卵を加えたものを
「勝利をつかみたい」ときに飲むと良いとされ、
「勝負汁」とも呼ばれていた、

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「何もない」がある島は、疲れた心を癒す島―ニッポンのヒャッカ沖縄編7―

「何もない」がある島は、疲れた心を癒す島―ニッポンのヒャッカ沖縄編7―

島民約200名に対して、およそ13倍の数の牛が暮らす沖縄の離島「黒島」。

自転車なら2時間ほどで島中をのんびり巡ることができる、外周12.6kmの小さな島だ。

日本の道100選にも選ばれた島のメインストリート「黒島港線」から見えるのは、どこまでも続く牧場の緑と、赤い瓦屋根と石垣の琉球民家。島には信号もなければ、交番もない。空を遮る大きなビルも、ネオンの看板も、深夜まで明るいコンビニも、話題のス

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「鳴子こけし」職人親子が育む、癒しの笑み―ニッポンのヒャッカ第14回―

「鳴子こけし」職人親子が育む、癒しの笑み―ニッポンのヒャッカ第14回―



 東北の山間部に生まれた伝統こけしは、大きく11の系統に分けられ、地域ごとに特徴的な形や、胴模様が育まれてきたという。なかでも雪深い宮城県鳴子温泉は東北最大のこけしの産地で、「鳴子こけし」の里として知られている。

 その鳴子こけしの里で、先祖代々こけしをつくり続けるのが「桜井こけし店」だ。伝統的なこけしをつくる職人として活躍する五代目櫻井昭寛さんと、その息子で六代目の尚道さんに、話を伺った。

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「宮古島の魅力を伝えたい」島の事業者がはじめた新たな取り組み―ニッポンのヒャッカ沖縄編6―

「宮古島の魅力を伝えたい」島の事業者がはじめた新たな取り組み―ニッポンのヒャッカ沖縄編6―

「みやこ下地島空港旅客ターミナル」がオープンした、2019年3月。

宮古島の居酒屋では、こんな会話が繰り広げられていた。

「観光客が増えるのは嬉しいけど、彼らに喜んでもらえるコンテンツを、島はちゃんと準備できるんでしょうか」
「せっかく来てくれても、宮古島の魅力がきちんと伝わらなかったら悔しいですよね」

その席にいたのは、宮古島で観光ツアーを主催する、株式会社プラネット・フォーの中村さんと、

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宮古島の農業を未来へつなぐ、ヤギとアロエの密な関係ーニッポンのヒャッカ沖縄編5ー

宮古島の農業を未来へつなぐ、ヤギとアロエの密な関係ーニッポンのヒャッカ沖縄編5ー

見渡す限りさとうきび畑が広がる、宮古島の風景。
そんな風景の一角に、そのピラミッドは突如現れる。

カラフルなピラミッドの上に乗っているのは「ヤギ」。

ここ「しろう農園」は、宮古島で最大の面積を持つ、有機アロエ農園だ。
なぜアロエ農園に、このようなヤギピラミッドが鎮座しているのだろうか?

その理由を探ってみると、島を想う人々の、ある「願い」が見えてきた。

▲(左から)しろう農園 砂川さん、酒

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タオルの名産地の母たちが作るスタイーニッポンのヒャッカ第13回ー

タオルの名産地の母たちが作るスタイーニッポンのヒャッカ第13回ー

 瀬戸内海の美しい海を臨む愛知県今治市。「今治タオル」で知られる国内有数の高級・上質タオル生産地だ。市内にはメーカー、縫製、刺繍、染色など、さまざまなタオル産業に携わる企業や工場が集まり、100年以上の歴史の中で技術を育んでいた。
 そんな今治に暮らす母たち3人が集い、「今までにない今治発のブランドを作りたい!」
との思いで11年前に起業した会社がある。
 その名は「クレシェンド」。音楽の強弱記号

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なぜ黒糖は白砂糖より高い? 疑問に挑むサトウキビ農家の取り組みーニッポンのヒャッカ 沖縄編4ー

なぜ黒糖は白砂糖より高い? 疑問に挑むサトウキビ農家の取り組みーニッポンのヒャッカ 沖縄編4ー

なぜ黒糖は白砂糖よりも高いのか、考えたことがあるだろうか。

黒糖は、収穫したサトウキビから汁を搾り取り、不純物を取り除いて加熱したもの。
白砂糖は、それをさらに遠心分離器にかけて糖蜜と分離させ、残った砂糖の結晶を精製して作られる。

自然の道理であれば、黒糖よりも何倍も手間のかかる白砂糖のほうが高価になるはずだ。

であるにも関わらず、白砂糖のほうが低価格で販売できる背景には、ある不思議なカラク

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沖縄の食文化を支えるローカル食材「島豆腐」の作り手たちが願うことーニッポンのヒャッカ 沖縄編3ー

沖縄の食文化を支えるローカル食材「島豆腐」の作り手たちが願うことーニッポンのヒャッカ 沖縄編3ー



多くの人が布団の中でまどろむ朝5時、
住宅街のなかにあるその工場は動き出す。

そこで行われる仕事の多くは機械化されているものの、
キモとなる工程は、今も職人が手作業で行っている。

そのひとつが、豆乳とニガリを合わせて反応を待つ、「寄せ」という工程だ。

かるくかき混ぜて時間を置くと、大豆に含まれるたんぱく質とニガリが反応しあい、少しずつ凝固してくる。豆乳の濃度やその日の気温・湿度などによっ

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メガネの町・鯖江生まれの「常識外れの」レンズたちーニッポンのヒャッカ第12回ー

メガネの町・鯖江生まれの「常識外れの」レンズたちーニッポンのヒャッカ第12回ー

 「めがねのまち さばえ」というキャッチコピーを掲げ、地域産業としてメガネ製造に取り組む福井県鯖江市。その町で66年以上続くサングラスレンズ専門メーカー・乾レンズのオリジナルサングラスが、発売10年目にして公益財団法人日本デザイン振興会主催の2019年「グッドデザイン賞」を受賞した。
その名は「オールタイムサングラス®」。
開発のきっかけと乾レンズについて、常務の諸井晴彦さんに話をきいた。

発売

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