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なぜ黒糖は白砂糖より高い? 疑問に挑むサトウキビ農家の取り組みーニッポンのヒャッカ 沖縄編4ー

なぜ黒糖は白砂糖よりも高いのか、考えたことがあるだろうか。

黒糖は、収穫したサトウキビから汁を搾り取り、不純物を取り除いて加熱したもの。
白砂糖は、それをさらに遠心分離器にかけて糖蜜と分離させ、残った砂糖の結晶を精製して作られる。

自然の道理であれば、黒糖よりも何倍も手間のかかる白砂糖のほうが高価になるはずだ。

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であるにも関わらず、白砂糖のほうが低価格で販売できる背景には、ある不思議なカラクリがある。

実は、輸入糖と国内産糖の間には、2〜5倍ほどの価格差がある。この価格差をそのままにしておくと、輸入糖ばかりが市場に溢れてしまい、国内自給率が下がってしまうことになる。これを避けるために、政府は国内の製糖産業に補助金を出し、国内産糖の価格調整をしている。

この制度の「枠組み」に当てはまらないのが、昔ながらの手作りの黒糖生産農家なのだ。

そのため、原料価格についても、製糖加工費についても黒糖農家には補助金が入らず、手厚い補助を受ける白砂糖に比べて、高価な価格で販売せざるを得なくなっている。

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「黒糖は、価格調整のカラクリもあって白砂糖よりも敷居が高い存在になってしまっています。けれど、黒糖に含まれるミネラル成分は、天然の甘味料として豊かな風味をもたらし、その栄養分は健康にとっても良いものです。そんな魅力ある黒糖を、もっと身近な存在にし、たくさんの家庭の食卓で使ってもらいたいと、私は願っています」

そう語るのは、宮古島でサトウキビ農家を営む、オルタナティブファーム宮古の松本さん。

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松本さんがそんな理想を叶えるために始めた活動のひとつが、「体験農場」だ。

サトウキビの手刈り収穫、手動絞り器を使った生ジュース作り、黒糖蜜を煮詰めた黒糖づくりなどを通し、サトウキビの力強さ、みずみずしさ、美味しさを体験してほしいという。

「収穫したてのサトウキビは野菜や果物と同じ“生鮮の作物”。ビタミンやミネラル豊富で、その優しい甘さはよく『まるでスイカや梨みたい!』と驚かれるほどです。でも、その味を知っているのはごく一部の人たちだけ。それってすごくもったいないことですよね。この美味しさを、もっとたくさんの人に知ってほしいと思って、体験農場を始めたんです」

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また、体験農場だけでは手の届かない範囲にいる各地の消費者に向けて、
松本さんは、新しい黒糖商品の開発にも意欲的に取り組んでいる。

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たとえばこの「美ら蜜 Nuts & Fruits Pot」。黒糖蜜にココナッツオイルとラム酒を加えてトロピカルで芳醇な香りに仕上げ、アーモンドやくるみなど、全9種類のナッツとフルーツを漬込んだ一品だ。

バニラアイスにかけて食べるのが一番のオススメだが、ヨーグルトやパンケーキなど、ジャムやシロップをかけて食べるものであれば何にでもよく合う。

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同じ黒糖蜜を使った「美ら蜜シリーズ」には、沖縄県産生姜や島唐辛子、シークワーサーを使ったジンジャーエールや、コーラ、また、バタートースト用シロップなどもあり、有機サトウキビ栽培で作られた黒蜜糖の美味しさを、さまざまな角度から楽しむことができる。

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また、黒糖を味わうだけでなく、作る楽しさも体験できるのが、こちらの「おうちで作る できたて黒糖」。

パウチされているのは、黒糖作りの最終工程「焚き上げ」を80%終えた状態の「黒蜜糖」。
この黒蜜糖を10分程度加熱・攪拌することで、焚きたて黒糖が完成するのだ。

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白砂糖よりも栄養価が高く、自然の旨味も豊富な黒糖。

松本さんが丹精込めて手掛けたサトウキビから作った商品や、「黒糖の魅力を知ってもらいたい」と始めた活動は、そんな黒糖の魅力を存分に伝えてくれる。

ひとたびその魅力に気づけば、これまで積極的に黒糖を手に取ってこなかった人も、その手は自然と黒糖に伸びるようになるはずだ。

その手はきっと、宮古島に黒糖作りの文化を残す力につながっている。

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