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あしたの小窓から。

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小窓のむこうに、ちいさな「あした」が見える。 ここでは音楽、教育、投資、霊性などについて、考えたり感じたりしたことをつれづれに綴っています。
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2020年8月の記事一覧

明日、朝いちばんの便で。

明日、朝いちばんの便で。

明日が引っ越し当日。
先ほど、業者さんから電話があった。

「明日の積み込みですが、朝いちばんの便でおうかがいします。」

えっ、そんなに急に? とたじろいでしまった。
もう少しおそめの時間にならないかと伝えたが、次の家の積み込みもあって動かせないという。

準備はできている。
荷づくりもほぼ終わり、朝一でも積み込める。

ただ、気持ちがびっくりして付いていかない。
いまの部屋との別れが、あまりに

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有名人と会っていた午後。

有名人と会っていた午後。

40年以上生きていると、過去に知り合った人が有名になることがある。
テレビに出たり、出世したり、社長になったり、SNSでバズったり。そのたび「あの時のあの人が」という驚きがある。

そうした知らせを受けたときは決まって、有名になったその人といた時の記憶がよみがえる。出会った頃の面影がフワッと浮かんで「そりゃ、有名になるわ」という人もいれば「えっ、あの人が!?」という人もいる。

だれが有名になるの

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部屋と段ボールと私。

部屋と段ボールと私。

月末に引っ越しをするので、いま、わが家は段ボールでいっぱいである。

今週とりかかって、二日ほどで家じゅうの物がほぼ段ボールの中に収まった。部屋全体がとてもスッキリして気持ちがいい。「いっそ、いつも段ボールに入れておけばいいかも」とも思ったが、それでは落ち着かないか。

奥さんは新天地に向けて「持っていくもの」と「いらないもの」を丁寧に分けている。僕は気にせず、目に付くものをどんどん段ボールに入れ

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ほか二点。

ほか二点。

今日、近所のショッピングモールの三階フードコートで奥さんと昼食を食べているときに、こんな店内放送を聞いた。

「先ほど、四階、紀伊国屋書店で
 『50歳からはじめる英語』と
 『教養としてのクラシック』、
 ほか二点、
 合計四点お買い上げになったお客様、
 お伝えしたいことがございます。」

本の題名とは不思議なもので、二つ並べるだけで買った ”お客様” がどんな人か、面影が浮かぶような気がする

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言葉は誰かとの間に生まれる。

言葉は誰かとの間に生まれる。

今日は一日(市役所やコンビニの手続きを除いて)誰とも会うことなく過ごした。

そういう日は、ここに書くことが思いつきづらいと気づいた。
頭のなかになんにもないのが分かる。

それで思ったのだけれど、言葉というのは、誰かと会うことで生まれているのかもしれない。

会って話すことで起こるうねりのようなものが、言葉の原資になる。発話されたことのほかに言い足りなかった言葉が山と溜まる。そういうものが、書く

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人の気象。

人の気象。

人の内側には、天気があるのだと思っている。
からっと晴れた人もいれば、ジメジメした人もいる。風通しのいい人もいれば、蒸し暑い人もいる。そんなふうに。

そして、会って話をするとき、人は互いの気象を共にしているのだと思う。相手の内側で吹く風が、僕の中でも吹き、僕に降る雨は相手の内界も濡らす。

こんなことを思うようになったのは、奥さんと暮らし始めてからだ。
うちにいると、奥さんの気象の影響を感じる。

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贈り物の上手な人に。

贈り物の上手な人に。

数日前の僕は、帰り際、サッと席を立てる人にあこがれていたが、今日は、上手に贈り物ができる人っていいなぁと思った。

たとえば、知人になにか特別なことがあった時に、ささやかだけど素敵なものを贈れる人だとか。

なんでそんなことを思ったかというと、 "行きつけの" お茶屋さんでおいしくてセンスのいいお菓子を出してもらったからだ。

フワッとした歯ざわりで甘さも上品。この店の日本茶によく合ったし、包装も

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去り際に。

去り際に。

誰かとしゃべって、盛り上がって、「そろそろ……」というとき、席を立つのがヘタだなぁと自分について思う。

やや居すぎてしまったり、もうちょっといたかったなと思ったり。

それは相撲の立ち会いに似ている。
「いま」という刹那をとらえて立ち上がる点で。

あるいは音楽にも似ている。
第一楽章、第二楽章と続いて、やがて訪れる終止符まで続く語らいの中で、「いま」という終止符を逃して、さっき歌ったフレーズを

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大事なひとを大事にできること。

大事なひとを大事にできること。

今日、行きつけのお茶屋さんで、大事なひとを大事にすることについてしゃべった。盛り上がりすぎて、徹夜コースになりかねない勢いだった。ファミレスの大学生かと思った。

大事なひとを大事にできる。
書くと簡潔だが、実行するのはかなり難しい。
そうしたいと思えば思うほど、そうできない現実に打ちのめされたりもする。

僕自身でいうと、結婚生活がそれにあたる。
結婚当初、奥さんを大事にしようと心から思っていた

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全「すること」がなくなる。

全「すること」がなくなる。

きょうのお昼に、全「すること」がなくなった、と感じた。

奥さんは出かけていていないし、気晴らしに読むマンガもゲームも続かない。それ以外にすることがなにも思いつかない。

急にそうなったので、ちょっと焦った。
こういう時に人は焦るものなのかと思った。

家の外は車の走る音がする。
エアコンだって動いている。
たぶん地球はまわっている。

にもかかわらず、僕だけがぴたっと止まってしまった。DIOの「

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宙空に言葉をほおる。

宙空に言葉をほおる。

乗っている名鉄が堀田から桜あたりに差し掛かった頃、僕の左に座っているおじさんが急に話しはじめた。

「57分に着くから xirekdiw...」

携帯で話しているのかと思ったが、手にはなにも持っていない。まわりに知り合いもいない。おじさんは真っ直ぐ前を向いて、宙空に向かって話していた。

静かな車内に突然声がしたのでギョッとしつつ、「あ、この感じが "つぶやき" か」と思った。

ツイート(つぶ

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"ソーシャル" をやめてみる。

"ソーシャル" をやめてみる。

今日は、行きつけのお茶屋さんで長い時間すごした。
お酒を飲む人が「行きつけ」と言う時の親密な感じにあこがれていたのだけれど、お酒を飲まないぼくら夫婦にそういう場所はない。ところが、ひょんなことから日本茶を飲ませるのに居酒屋みたいなお店を見つけて、常連になり、店員さんたちと妙に親しくなって「行きつけ」ができた。うれしい。

今日はこのお茶屋さんで、他のお客さんも交えておしゃべりした。普段は他のお客さ

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馬と牛。

馬と牛。

8月16日。今日でお盆は終わりだそうだ。
iPhone の天気予報によると、名古屋の気温は39℃に達しているらしく、外に出る気がしないので家でゴロゴロしてスマホアプリでマンガを読みふけっている。

今年は四月に亡くなった母方の祖父の初盆だったから、実家の飾りもすこし豪華だった。その中にきゅうりとなすでできた飾りがあって、そういえばこれってなんだろかと思ったら、母が由来を教えてくれた。

片方は馬、

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親切にされるということ。

親切にされるということ。

このところ、人から親切にされることが続いている。
とてもうれしいと同時に、親切にされるというのは「一歩踏み込まれること」なのだと気がついた。

思ってもみなかった一言をかけられたり、祝福されたり、贈り物をもらったり。そういうとき、親切な人たちは、僕のとっていた距離よりも近くに来て、僕を驚かせる。

びっくりした後、うれしい気持ちがじわ〜っと出てくる。

人と人は、安心して生きていくために距離をとる

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