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「萩尾望都 〈大泉サロン〉 関連レビュー」 一覧

刊行から二ヶ月たった今もなお、萩尾望都の長編エッセイ『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)をめぐって、少女マンガ界隈は騒然としている。その「火消し」に走っている業界関係者も少なくないようだ。
それほどに萩尾のこの一書は、関係者やファンにとっては、まさに「紙の爆弾」だったのであり、刊行とほぼ同時に、広く少女マンガ界隈を巻き込んで、激震を走らせたのだ。

同書は、今や伝説と化しつつある「大泉サロン」に関して、これまで語ることのなかった中心的メンバーの一人である萩尾望都が、初めて口を開いたエッセイ本として告知され、事前に注目を集めていたものだけに、その驚くべきスキャンダラスな内容によって、刊行とほぼ同時に、広く耳目を集め、話題の的となった。

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私が、同書に関する「Amazonカスタマーレビュー」を投じたのは、刊行の数日後であったが、すでにその段階でも多くのレビューが寄せられて、そのそれぞれに、レビュー読者から多くの「役に立った」(※「いいね」にあたる)のレスポンスが寄せられて、注目度の高さを窺わせた。

しかし、それらのレビューを読んでいて、私は端的に「こんな、萩尾の言い分を鵜呑みにした、ファンレビューばかりではダメだ」と思い、すでに本年(2021年)4月23日に投じていたレビュー「〈残酷な神〉が支配する…」に付け加えるかたちで、元レビューに数倍する長さの補足論文「汝、頑ななる者よ」を、三日後の同月26日に増補した。

元の論文「〈残酷な神〉が支配する…」は、『一度きりの大泉の話』での「萩尾望都の書き方」に問題を認めながらも、そうした点については、あくまでも間接的に、含みを持たせたかたちで論評していた。
しかし、そのようなお上品な(誰も傷つけない)書き方では、多くのファン読者には、萩尾書の問題点はとうてい理解されないようだと悟り、意を決して、かなり直截に萩尾望都という「人」を批判的に分析した、補足論文「汝、頑ななる者よ」を投じることで、萩尾神話(あるいは「信仰」)の解体を目論んだのである。

この補足論文が加えられた後、目に見えて「役に立った」のカウントが動き出した。それは、私にとっても前例のないほどのものであった。
やはり、萩尾書の内容に違和感を覚えた人が少なくなかったのだな、と確信したし、萩尾書に対し何か不愉快なものを感じても、それをうまく言語化できないとか、「少女マンガの神様」を批判するようなレビューは書きにくいと感じた人たちが、そうした思いの代弁者として、私のレビューを支持したのではないかと思った。

下にご紹介したのは、私がこれまで、萩尾望都に関して書いた「Amazonカスタマーレビュー」の一覧である。

これを読んでいただければ、私が単なる「萩尾望都否定派」などでないことは、容易にご理解いただけると思う。

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(1)中川右介『萩尾望都と竹宮惠子 大泉サロンの少女マンガ革命』レビュー
 大泉サロンの〈楽園喪失〉(初出:2020年4月19日)
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R3U6SRO59XY8LN


(2)萩尾望都『半神』レビュー
 保護皮膜の生んだ〈解離感〉:私的・萩尾望都論(初出:2021年1月11日)
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R3U4O1M760OUAJ


(3)萩尾望都『一度きりの大泉の話』レビュー
 〈残酷な神〉が支配する【補論追加版】(初出:2021年4月23日)
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R67490076AKQA


(4)萩尾望都『トーマの心臓』レビュー
 『トーマの心臓』から『一度きりの大泉の話』を貫く本質(初出:2021年5月29日)
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R1H5DERYS99N2


(5)萩尾望都『バルバラ異界』レビュー
 〈二律背反〉する欲望の果てに(初出:2021年5月30日)
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R17DXFNIV3TB7Z


(6)『別冊NHK 100de名著 時をつむぐ旅人 萩尾望都』レビュー
 萩尾望都への〈依存と自立〉(初出:2021年5月30日)
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R2RJ1G9QE6FHUD


(7)中島梓『コミュニケーション不全症候群』レビュー
 予言的な30年前の〈社会心理学的考察〉 初出:2021年6月6日)
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R2HYO6GYTJ5W5B

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私と萩尾望都の関係については、主に(2)の中で語られている。要は、30年ほど前に読んだがピンと来なかったものの、ずっと気にはなっていた。
それが(1)の中川書に触発され、もう一度、萩尾望都に挑んでみようと、『半神』『トーマの心臓』『バルバラ異界』を購入し、『半神』を読んだ段階で(2)を投じた。
その数ヶ月後に、(3)の『一度きりの大泉の話』が刊行され、前記論文を投じた。
さらにその後、(3)の萩尾書にタイミングを合わせて刊行されたのであろう(6)が刊行されたので、これを読む前に、積読にしてあった『トーマの心臓』(再読)と『バルバラ異界』を読み、そのうえで(6)を読んで、3冊分のレビューを投じたのである。
また、補足検証的な意味合いで、昔「少年愛ブーム」についての分析書として教えられるところの多かった、中島梓の(7)を再読して、関連レビューとして投じた。

萩尾望都と「大泉サロン」の問題に興味のある方は、是非とも、上記のレビューを一読願いたい。
現段階で、ここまで忌憚なく、この問題を論じたものはないはずだ。

萩尾望都が死んでからなら、私よりも有能な人が、もっとつっこんだ研究論文を書くだろう。しかし、私は、萩尾が生きているうちに書かれたものだからこその意味が、これらにはあると思っている。

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【補足】(2021.10.20)


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