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そらのうた

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#詩

9月を目前に控える君へ

9月を目前に控える君へ

言葉は人を傷つける
図らずも知ってしまった君へ

部屋の隅
両耳をイヤホンで塞いでいる君へ

小宇宙
スマートフォンを握りしめる君へ

君がもし笑えないなら
無理に明るく振る舞ったり
不器用な作り笑顔を浮かべたり
自分を騙さなくて良いと伝えよう

君がもし前を歩きたいなら
片隅で弛んだ身体を動かしたり
表情筋を鍛えるような笑顔を作ったり
ささやかな一歩に止まない喝采を送ろう

君はまだ朝を迎えてい

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しゃぼん玉(リライト)

しゃぼん玉(リライト)

息を吹きかけて
しゃぼん玉は空を泳ぐ

風が付き添って旅をする
流れに委ねながら仰ぐ世界

ふわふわと夢心地
破裂が待ち構えても上へ

海に映る波光を眼下に
お月様今宵もこんばんは

浮くほどに故郷の地上と距離が生まれても
先の見えない未来と気まぐれに変わる空模様
何かに脅かされても今はこのまま宙を目指して
#ポエム #poem #詩 #詩のようなもの #創作 #自由詩

海の声

海の声

張り裂けそうな胸の痛みを
分かってほしいと嘆くのは
あまりにも簡単だった

静寂を崩す波音は
時に強く
時に優しく
断続的に
浜辺に押し寄せる

濁りを知らない透き通るそれが

詩的な言葉は
音と色と自然と情で成り立つ

君は詩そのものだった
藍色に近い青い波が
声をかけてくれる
その日常に救われていた

有り難さに気付いた今
目を閉じて耳を傾ける
いつもの海が聴こえる

気持ちを綴った手紙を

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月の道

弱さを切り出して
弱さを分け合って

それを僕の右手と君の左手に乗せて

温もりで溶けて行き
残り香が月へ昇り始めて
不安感に付随する浮遊感は離れて
僕らは今地に足を付けた

不思議
今なら水面に浮かぶ
月の道さえ歩ける気がする
#詩 #詩のようなもの #物語 #自由詩

光の筋

注がれる光の筋は
光芒の二文字へ凝縮される

君にとっての僕は
普通名詞に収まるかい?
固有名詞として展開されるかい?

歌は詞があるから成り立つの
いつだったか君は得意気に口にした
新緑に風が吹き込まれて刹那揺れた

何かを構成するには
不要なもの
不可欠なもの
その二つが点在して

君との出会いは
君からの言葉は
君の魅せる表情は
埋まらない欠片を
ぴったり当てはめた

僕にとっての君が光芒で

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青空

青空

青空が怖い
どこまでも続いてゆく
空の青さ 壮大さ

自分がいかに矮小で
取るに足らない存在か
気付いてしまうから

指先で大気をなぞる
世界が若さに沿ってくれると信じていたの 

一秒経つ毎に
砂時計を逆さにする毎に
青空は相対的に美しくなる

ああ
空の青さが眩しいから
目を背けたくなる時こそカーテンを開けるの
#ポエム #詩 #自由詩 #空 #日記

星の詩(リライト)

人類の憧れ

古代人の標

死者の代名詞

願いを託す対象



薄らと宙に浮かぶそれに
手をかざしても届かないそれに
幾多の人が眼差しを向けて
数多の願いが込められて



星が宙を翔る一瞬

両手を組み刹那祈りを捧げる

叶うとはつゆほど思わなくとも

その行為に心癒す慈愛に似たものがある



遠く離れた恋人

想像力の源泉

過ぎ去りし辛い過去

点を見つめて私は何を思う

点と点が

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しゃぼん玉

しゃぼん玉

息を吹きかけて
しゃぼん玉は空へ泳ぐ

春風が付き添って
気の赴くまま旅をする

時には流れに委ねていいかもね
時流を読み解くのは難しいから

透明な柔な円のように
時に僕らはふわふわと夢心地
時に僕らは破裂が待ち構えても上へ

先の見えない未来
気まぐれに変わる空模様
何かに脅かされても今はこのまま宙を目指して
#詩 #詩のようなもの #日記 #創作 #しゃぼん玉 #自由詩

真っ白な世界

目をパチリ開ける
一月前とは異なる住空間

スペースが有り余る部屋のカーテンを開けると
燦々とした黄金色の輝き

1日のはじまり
いつかの未来に立っている

電車に揺られ
交差点を右に曲がる

青信号に切り替わり
人々は一斉に歩き出す
地元では見慣れない風景

この街は未知の世界
真っ白な未知の世界
余白が有り余る世界

きっとこれから
色彩豊かな世界へ移ろうから

今は不安さえ馴染ませて
前を向

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春、白昼、詩

想いを風と光に乗せ
春の白昼に詩を綴る

光は屈折するもの
水が入ったグラスに着地した
誤って器に入った水が袖に飛びかかった

今は僅かな水滴のみ器に残って

光は直線に進むもの
矢のように前を突き抜ける
渇きはどこへやら濡れた衣服は乾いた

過去と決別するよう梢越しに陽を見つめて

光は虹のようなもの
星彩に青光りまで色彩豊か
忘れかけていた七色の表情が反射した

その美しさに改めて気付いて

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風光る午後

風光る午後

「君らしくいてね」

風光る午後
あなたがくれた言葉

ありふれたそれも
君からだと意味を帯びる

挫けそうなとき
つまづきそうなとき
真夜中眠れないとき

先が見えなくて
不安が喉に詰まっても
記憶の欠片を拾い上げて
その言葉を馴染ませる

たったそれだけで
光芒が視界に映るように
立ち上がる勇気が湧く

気付けば四季は何度も巡る
香りをゆらゆら移ろわせて

今の世界に君は不在でも
眼を閉じて耳

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既定通り春は訪れる

既定通り春は訪れる

既定通り春は訪れて
君が不在の世界でも

柔らかな風がそよぐ
髪と戯れて頬を掠める

最後の言の葉
変わらない面持ちと声の高さで
君からの「ありがとう」

刻々と針は動き
2人の思い出は
クリスタル色に染まる

既定通り春は訪れて
君が不在の世界でも

木漏れ日は揺蕩う
その円形の眩さに
記憶の君を重ねる

既定通り春が訪れるその前に
君は世界から去っていった

その事実が
ガラス色の心に響いて

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気球葬

気球葬

「僕の心臓が止まったら、気球葬してちょうだい」

従兄弟の君は普段と変わらない口そぶりで告げる。夕暮れ、陽は傾いて影は伸びる。

「なんで気球なの?」
「気球なら、物理的に星に近づくから。僕は死後、お星様になれるかもしれない。」

血が繋がっているのに時折突拍子もないことを口にする、不思議な人。

「大きな病を抱えていないのに、どうして死に耽るの?」
「保険だよ。自分が死んだ後、空に還るのか、違う

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窓から眺める桜(詩版)

窓から眺める桃色がひらひら踊った。病室のベッドで足を伸ばす私はそっと手を差し出して窓越しに春を掴む。

窮屈な日々が色褪せないのは、一年に一度、君に会えるから。年々、恰幅の良い出で立ちで私を驚かせる。

舞う桜との真反対ではドアを開ける音。君がこの小宇宙に入ってきた。今年もまた、一段と背丈が高くなったね。

「だって育ち盛りだから。」と切り返す、淡々とした君の言葉選びは嫌いじゃない。「桜が綺麗。」

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