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ふとーこーエッセイ【6】トリガー

トリガー

どちらかを選ぶしかなくなった息子は
バスケを捨てた。
何度も確認したが、くつがえすことはなかった。

こうして、バスケに費やしていた時間は
そのまま、塾に当てられることになった。

塾は、駅の周辺にたくさんあった。
手びろく展開して大勢をかかえる有名塾、少人数を手あつく教える寺子屋タイプ、マンツーマンの個別塾。
それぞれの特徴に合わせて、値段も形式も全くちがった。
有名だから実績が良いというわけでもない。

通いやすさ、雰囲気、実績、費用などから総合的に候補をしぼり、家族会議がひらかれた。
費用は割高だったが、寺子屋タイプ2校の最終決戦となった。

ひとつは、よく目にするフランチャイズ塾。
兄が体験授業をしたことがあったから、だいたい把握はできていた。
もうひとつは、タイミングよくポスティングされたチラシの塾。

チラシは手作り感まんさいで、元教師が独自でつくったというテキストを用いて、難関校に過去何人も合格させてきた実績が記載されていた。
これだけ見るぶんには、とても魅力的。

クラスで通っている子がいるらしい。
目立つタイプではないけれど、成績だけはたいてい上位だとか。

みんなどこに通ってるのかね?
なんて話していたから、息子なりにさり気なく調査していたようだ。

余談だが、
仲のいいクラスメイトふたりが1年からそろって通う塾も、はじめのうちとうぜん議場には上がった。
でも、塾通いをしていない息子と順位に大差なく、会議にて満場一致で候補からあっさりはずれた。


とりあえず、チラシで惹かれた塾に面談予約をとり、ふたりで行ってみることにした。
元教師という塾長がたった一人で切り盛りしている。
時間より10分早くついたが、掃除が終わっていないという理由で、少し迷惑そうに外で待つように指示された。
頭が固いな…

予約の電話応対から、すでにイヤな予感はしていたが…それも含めて、初対面の印象がそうとう悪い…

わが家の子どもたちは過去、いくつかの塾にお世話になってきたが、あちらも客商売、親はお客様扱いされることも多かった。

明らかにここは違う。
「まぁ、1人くらいなら枠はとれますが…ついて来られますか?」
しょっぱなから完全に上から目線。

品定めするかのような、いくつか質問。
それに対し、身を縮めて答える息子。
なぜだか私まで、子どもをムダに謙遜するような口調になっている。

自分の実績を、自信満々の表情でトクトクと話す。
その話しを、ほめたたえるように受け答えしてしまう、わたし。

『選ぶのはこちらですから』と言われている気がした。

「そうとう大変ですよ。ですが結果は保証します。よければ申込を」
入塾の許可がおりたらしい…


この時ばかりは悩んだ。
こんな塾も先生も初めてだ。

元教師…
教師もいろいろだけど、
生徒から人気のないエラそうで面倒くさいタイプ…
あのときの息子の萎縮した表情は、今でも忘れられない。

フランチャイズとの最終決戦になった。
最後は自分で決めなさいと言ったが、
「母さんはどう思う?」と聞かれる。

「先生ちょっと怖そうだけど、だいじょうぶ?」
「バスケの鬼コーチよりはマシかな(笑)」
「迷うけど…結果にコミットするなら…チラシの方かな」
と言ってしまった。

息子は不安をにじませつつも、私の意見にしたがった。


※ ※ ※


ちなみにその先生は
のちのち我が家で「暴君」と名付けられた。


塾に通って2ヶ月あまり…
息子は不登校になった。



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