見出し画像

映画レポ「ウィッシュ」:多くが中途半端。家で気軽に観た方がよい

【約3,600文字、写真約5枚】
ディズニー100周年記念の新作『ウィッシュ』を鑑賞しました。その感想を書きます。

(以下、ネタバレを含みます)

・・・・・

・・・・

・・・

・・

結論から言うと、満足度は低かったです。映画館ではなく、家でゆったり観た方が良いディズニー映画です。世界観・ストーリー・設定・キャラクター・日本の声優など、多くの点で「中途半端」と感じたためです。同時上映の動画『ワンス・アポン・ア・スタジオ』(約9分)の方が楽しめました。

映画名:ウィッシュ(原題: Wish)
おすすめ度:★★★☆☆
監督: クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン
上映時間:95分
公開日:2023年12月15日(米国:2023年11月22日)
HP:https://www.disney.co.jp/movie/wish


▶︎あらすじ

どんな“願い”も叶うと言われている “ロサス王国”を舞台に、17歳の少女アーシャは、ある出来事によって王国に隠された秘密を知り、ディズニー史上最恐のヴィランに立ち向かう(wikiより)。

▶︎『ウィッシュ』感想

映画館入り口の柱巻き広告

✔️全体の印象

私は、事前情報なしで子供と観に行きました。全体の印象は「ディズニー100周年の記念すべき作品がこれ…?」でした。作品を思い返した時、記憶に残る歌や、セリフ、シーンがありません。多くが中途半端でした。同時上映された約9分の『ワンス・アポン・ア・スタジオ -100年の思い出-』(後述)の方が面白かったです。

一緒に観た子供に、良かった点を聞いたところ「星に願ったところが好き」とのことでした。

✔️メッセージ性が中途半端

物語全体を通したメッセージは「夢は自分で叶える」「みんながスター(特別)」「自分を信じる」といったところ。登場人物から直接セリフがあったため、メッセージは理解しました。しかし、ストーリーにそのメッセージ性は希薄でした。実際に、努力するなどして夢を叶えた描写はほぼありません。その「考え・意志」のみが示されたため、説得性が低かったです。

✔️世界観・ストーリーが中途半端

世界観やストーリーで、素直に受け入れられない部分が多くありました。どんな“願い”も叶うと言われている “ロサス王国”をつくったマグニフィコ王。そもそもマグニフィコ王が、なぜ魔法を使えるようになったのか、彼の過去にあった悲しい背景などは具体的に分からないままでした。

さらに「ディズニー史上最恐のヴィラン」という触れ込みは、優良誤認表示です。もっとすごいヴィランはたくさんいると思いました。

マグニフィコ王(声:福山雅治)(引用元

また、この物語の重要なキャラクターである「スター」。子供が見たら「かわいい」で済みます。しかし、私にとって、スターは違和感の塊でした。

スター(声:不明)(引用元

アーシャが強く祈ったら到来したスターに、私は少しずっこけてしまいました。アーシャに特別な能力や血筋があれば納得します。しかし、そのような描写もありません。ただ「強く祈った」だけで彼(?)は登場しました。

アーシャとスターが出会ったシーン(引用元

さらに、ティンカーベルのように、スターから出る光る粉に触れると、キノコや動物が言葉を話すなど、トンデモ能力(魔法)があります。ベイマックスのような顔や、かわいらしい全体の見た目も、作品の世界観と不釣り合いなことに加え、設定が飛び抜けているため説明不足感が否めませんでした。

✔️ダイバーシティ設定が中途半端

主人公のアーシャ(声:生田絵梨花)(引用元

主人公のアーシャはソバカスのある黒人系です。鼻筋が真っ直ぐのアマヤ王妃と並ぶと、人種による顔立ちの違いがはっきりと分かりました。美醜で人を判断すべきでないと理解しています。しかし、ディズニー100周年の記念すべき主人公が、これで良かったのか疑問でした。視聴者が望んでいた主人公は、もっと「ディズニー然」としたキャラクターではないでしょうか。

アマヤ王妃(声:檀れい)(引用元

また、友人たちの人種は明確に分かれていました。まるで世界の縮図です。おかっぱ黒髪の女性は、劇のストーリーと必然性もなく杖を突いて歩いています。これもダイバーシティを重視した結果でしょう。新しく王国を築いたことを考慮しても、こんなにも多様な人種がうまい比率で混ざり合っているような、ダイバーシティを過度に意識した世界観は違和感がありました。

なお、この友人たちの設定があやふやでした。マグニフィコ王の城で、クッキーを作るために働いているほとんどが18歳未満の子供たち。クッキーだけ作り続ける工場こうばが、なぜマグニフィコ王のオフィス直下にあるのか?、アーシャはなぜ工場こうばに簡単に侵入できるのでしょうか…?

アーシャの友人たち(引用元

2023年12月、ディズニーのボブ・アイガーCEOは、ポリティカル・コレクトネス(政治的正さ)を修正するとコメントしたようです。今後は、視聴者が望む「ディズニー然」とした作品が増えてくることを、私は期待しています。

✔️主人公の声が中途半端

映像が始まった瞬間、主人公:アーシャの声に強い違和感を感じました。声優は、生田絵梨花さん。彼女は、元来、アイドルではなくミュージカル女優をめざしていた乃木坂46の元メンバーです。実際に『ロミオ&ジュリエット』『レ・ミゼラブル』などで役を演じた実績もある実力派のようです。『ウィッシュ』の声優を務めたことで箔が付いたでしょう。

主人公の声の違和感は作品が終わるまで続きました。特に、欧米アニメ特有のギャグっぽいセリフが世界観に染まりきっていないと感じました。主人公の声に「リアル感」がないため、作品の世界観にも入りにくかったです。

子供が映画館で映画を見られるようになったため、私の映画を見られる機会が増えたのは嬉しいです。しかし、全てが吹き替えなのは少し複雑な気持ちです。作品を鑑賞する上で、声は重要な要素のため、製作者が意図した純度100%のまま鑑賞したいのが本音です😯

✔️作画表現が中途半端

作画の表現が、3Dとセル画の中間のような点が特徴的でした。『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』でも、そのような表現が使われていました。『エウレカ』では完成度が低かったため「なぜCGにしたんや」と疑問でした。一方で『ウィッシュ』の映像は非常に美しかったため、技術力の点は全く問題ありませんでした。

しかし、この表現も若干違和感がありました。漫画っぽい表現がある一方で、水などの表現はすごくリアルで本物のようでした。このように表現がないまぜになっている点が中途半端のため、世界観が「リアル」に感じませんでした。セルアニメ風かCG風か、どちらかにはっきり寄せてほしいです。

✔️良かった点

良かった点は、ユーモアのある山寺宏一の声を久しぶりに聞けたこと。目を閉じれば、アラジンのジーニーがいるようでした。そのほか、有名な俳優や芸人が多数出演しているため、誰が誰の声か探すと楽しいかもしれません。

バレンティノ(声:山寺宏一)(引用元

✔️追伸

「ウィッシュ」を映画館で観た同日、アマゾンプライムで映画「スーパーマリオ」を観ました。マリオは、世界観やストーリーが明快だったため、ウィッシュよりもマリオの方がはるかに満足度が高かったです。

マリオの内容は、愚直に、素直に、真っ直ぐに振り切っていました。マリオと比べると、ウィッシュは企画のコンセプト段階で失敗したと思います。

▶︎まとめ

(左)アーニャと(右)アーシャ

いかがだったでしょうか?ディズニー100周年作品と期待した反面、設定・世界観・日本の声優など、多くが「中途半端」に尽きました。映画館ではなく、家でゆったり観る方が良いと感じた映画でした。私にとって、同時上映された『ワンス・アポン・ア・スタジオ』の方が満足度は高かったです。

▶︎『ワンス・アポン・ア・スタジオ -100年の思い出-』感想

「ウィッシュ」本編の前に流された約9分の短編動画です。 12月25日から、公式YouTubeにもアップされています。

ミッキーマウスとミニーマウスが壁の絵から飛び出し、スタジオ中のキャラクターを集めて集合写真を撮るだけのシンプルなアニメです。しかし、ディズニーに登場した543ものキャラクターが登場するため、見どころは十分でした!(トイ・ストーリーなどは、製作会社がピクサーのため登場しない)

まるでマーベル・ユニバース、プリキュアオールスターズのようでした。過去に見たことのあるキャラクターがわんさか出てくることに加え、日本語の声も当時と同じため、思考力ゼロのまま観ることができ、ワクワク楽しかったです。何よりディズニーへの愛を感じた点がほっくりしました。

▼全543登場キャラクター紹介動画。すごいの一言(動画のほぼ全編を引用しているため、著作権で保護される範疇を超えているのでは…)

この記事が参加している募集

アニメ感想文

映画感想文

Thank you for your support!