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真夜中の深呼吸。

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私のままで生きるために、深呼吸をするように綴った文章たち。
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#恋愛エッセイ

あなたと一緒に、仕事がしたい。"働く理由" はそれしかなかった。

「みなさんに、退職のご報告があります。」

部長の口からその言葉が飛び出したとき、辞めるのは彼ではないと知っていたはずなのに、大きく心臓が波打った。

実際は、部下の退職報告を代わりにしたというだけの話だ。けれどわたしはそのとき、不意をつかれて思わず息を呑んだ。

そして、考えた。

もし、彼が今、本当に会社を辞めてしまったら。
わたしは一体、どうするのだろう?

しばらくの間、放心状態になってし

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恋人の家族と1泊2日のキャンプをしたら "ちょうどいい距離感" を越えたくなった。

恋人の家族と1泊2日のキャンプをしたら "ちょうどいい距離感" を越えたくなった。

彼の家族と、はじめて1泊2日の旅行をした。
正確には、泊まりでキャンプに行った。

ちなみに、「彼」というのは付き合って1年半の恋人のこと。

まだ正式に結婚や婚約などをしている間柄ではないのだけれど、将来のことはふたりで話していて、お互いの家族にも何度か会ったことがある。

「今度の休みに家族でキャンプに行くんだけど、一緒にどう?」

1ヶ月前、彼にそう誘われたわたしは、

「楽しそう。行きたい

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"結婚は自由になるための選択" って言葉の意味が、ようやくわかった

"結婚は自由になるための選択" って言葉の意味が、ようやくわかった

結婚して、家庭を持つこと。たったひとりの人と、一生を添い遂げること。わたしにとって「自由を奪うもの」としてそれらを恐れていた時から、1年半。

彼と過ごしているうちに、まさか自分がこんなにも「結婚」や「家庭を持つこと」に対して前向きになるなんて、思ってもみなかった。

つい最近まではまったく想像もしていなかった自分が、いまここにいる。

「結婚することで、自由でいられなくなるのが怖い。」

そんな

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"その一回" の選択が、未来のふたりをつくるから

"その一回" の選択が、未来のふたりをつくるから

「〇〇さん、いま離婚の危機なんだって。」

友人と話している時、ふとそんな話題が飛び出した。共通の知り合いであるその人は、「子供をつくるかどうか」という問題で相手と意見がすれ違い、平行線になり、とうとうその関係性すら解消しようとしているという。

他人の話とはいえ、それを聞いた瞬間すっと血の気が引いた。

ふたりはもう結婚してからだいぶ長い年数が経っているはずなのに、どうしてそんな大事なことを、も

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他人同士のふたりでも、一緒に生きてみたいのは

「結婚したい」と思っている彼に、「それをする相手がわたしである必要はあるの?相手は誰でもいいんじゃない?」と言うことは、なんて残酷なことなんだろうと思った。

だけど、わたしは言ってしまった。

彼を傷つけてしまうかもしれない、と心の隅では思いながら。

どうしても、言わずにはいられなかったのだ。

「結婚したい」と思ってくれていることは、心の底からうれしかった。だけど具体的な話が進むにつれて、"

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"ふたりで人生をつくる"って、難しいから愛おしい

"ふたりで人生をつくる"って、難しいから愛おしい

恋人に「今年中に、京都に住みたいって言ったらどう思う?」と聞かれてから、ずっとこれからの人生について考えていた。

これは、彼と一緒にはじめて京都を訪れ、大好きな鴨川でのんびりとした朝を過ごしていた時、わたしの耳に飛び込んできた言葉だった。

その時わたしは、やわらかな朝の日差しに目を細めながら、きらきらと輝く水面をぼんやり見つめていた。穏やかな時間に、ぴりっとした何かが走ったような感覚。

川沿

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わたしの世界を変えたのは、全部きみの言葉だったよ

わたしの世界を変えたのは、全部きみの言葉だったよ

彼からもらった言葉を、どこかに残しておきたい。
そう思ったのは、年が明けて数日経った、ある日のことだった。

残しておきたい。

そう思ったのは、昨年のわたしが「今年はいい1年だったなあ」と思えていたのは紛れもなく、彼の言葉たちのおかげだったと気づいたから。

やさしい言葉ばかりじゃない。

時には、目を背けたくなるような現実を突きつけられたこともあった。

だけどそれも含めて、彼の言葉には無視で

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「夏の匂いがわからない」彼にわたしは、救われた。

「夏の匂いがわからない」彼にわたしは、救われた。

わたしの恋人は、夏の匂いがわからない。

夏の匂いだけじゃなくて、金木犀の香りが空気に溶けはじめたら「秋がきたなあ」と感じることとか、春になったら明るい色の服を身に纏いたくなる気持ちとか、そういった季節にまつわるものすべて、「わからない」のだと言う。

「菜波は俺が、夏の匂いがわからない人でもいいの?」

以前、彼にそう聞かれたことがある。

「それでも、いいよ。」

そのときのわたしは、たしかそ

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「お裾分け」は、愛しいあなたの生への祈り

「お裾分け」は、愛しいあなたの生への祈り

昔から、好きな人にやたらと食べ物をお裾分けする習性がある。

以前付き合っていた恋人には、親戚の家からさくらんぼが届く度に「お裾分け」と言って、わざわざ家まで取りに来てもらった。

好きだった会社の先輩には、わたしが愛してやまない食パンを一枚、お裾分けしたいからという理由でお昼休みに会いに行った。

いま考えてみると、たいして仲良くもない別の部署の後輩から突然「食パンをお裾分けしたいんで…」と呼び

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"誰かと一緒に生きる" に一歩近づいた私と、これから。

前よりも少し、自分が他人に対して優しくなったかもしれないと思うできごとがあった。

数ヶ月前に別れた元恋人と久しぶりに会って、近況報告を聞いていたときのこと。

彼は、仕事が想像以上に激務で、睡眠や食事もまともに取れない生活をしていること、業界や組織に対する不満や苛立ち、などを語ってくれた。

しばらく彼の話を聞いていて、あれ?と思うことがあった。

以前のわたしなら、こういう類の話を聞くと

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「円満な関係」と引き換えに、「愛する力」を失っていた。

「円満な関係」と引き換えに、「愛する力」を失っていた。


「人は誰しも完璧じゃないから、一人の相手で、全ての欲求を満たすことはできません。だから私は、複数の人との関係性の中で、自分の欲求を満たすことができれば、それでいいんじゃない?って思います。一人の相手に固執して、傷つく必要なんてないんです。」

ある人のインタビュー記事に書かれていたこの言葉に、数年前、わたしは大きなショックを受けた。

そもそもこの記事は、その頃毎日のようにLINEでやり取りをし

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君がいない夜とごはん

君がいない夜とごはん

料理がおいしければ、それは最高の食事だと
思っていた。

もしかするとそれは違うかもしれない、と
気づいたのは、つい最近のことだ。

なかなか手の届かなかった、高級フレンチ。

会員制の、中華料理店。

予約困難な焼肉屋。

数年前まであれほど夢みていた「憧れのお店」に
足を運んでも、その瞬間は幸せな気持ちでいっぱい
になるのに、帰り道、いつもなぜか虚しくなった。

「この鴨肉は臭みがなくて、焼き

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「好きになる」の共通項は、「心の空白」なのかもしれない。

「好きになる」の共通項は、「心の空白」なのかもしれない。

「恋愛感情としてわたしが好きになる人の共通点って、なんだろう?」

ここしばらく、わたしはこんな疑問を頭の中で燻らせていた。

今日、こんなnoteを書いてみようと思い立ったのは、少しだけその「答え」に近づいた気がしたからだ。

まだ完全な答えにはたどり着いていないのだけど、少しだけ心がすっと軽くなったので、今、ここに小さな気づきを書き留めておこうと思う。

「恋愛感情として」好きになる人の定義っ

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流れる月と君に。秋の夜長に「ことば」と向き合う手紙の展示

流れる月と君に。秋の夜長に「ことば」と向き合う手紙の展示

先日、表参道のNOSE art garageという場所で催されていた展示に訪れた。

@nose_tokyo

タイトルは、「流れる月と君に」。
作家の吉岡りんこさんの小説から始まる、15名のクリエイターによる手紙の展示、というコンセプトに惹かれて、はじめて見つけたときから気になっていた。

こういうイベントや個展は、いつも行こう行こうと思っているうちに終わってしまうことが多い。

けれど今回は、

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