マガジンのカバー画像

きゅんとした話

28
運営しているクリエイター

#小説

愛とか、恋とか

愛とか、恋とか

 母からテキストメッセージが届いた。そこには「卒業することにしました」と書いてあった。それを読んで、わたしは首を傾げた。母がなにか学校とか、そのようなものに通っていた記憶がなかったからだ。わたしを産むだいぶ前に高校を卒業して、それ以来なにかに入学したりはしていないはずだ。入学してなきゃ、卒業もできない。とはいえ、わたしが大学に入って以来、それほど頻繁に帰省しているわけでもないし、電話だってほとんど

もっとみる
嫉妬してもいいし、不安になってもいい。

嫉妬してもいいし、不安になってもいい。

何かを手に入れた瞬間から、それを失う恐怖が始まる。

モノに限らず、人間関係にもそういうことってあるものです。
最初は「仲間になりたい」だったのが、いざ仲間になると今度は「仲間外れにされたくない」が始まります。

男女の仲も同じで「あの人と付き合いたい」と思ってる時が一番ドキドキしていていざ付き合いが始まると「あの人が離れていくのが怖い」と思うようになるケースもチラホラ。

F子の場合。

その典

もっとみる
I Miss You

I Miss You

その女性は美しく、優しいまなざしで僕を見つめている。

静かな温泉宿。かすかに聞こえる川のせせらぎが心地いい。

今朝の夢。

もう20年以上も前のことだ。

見た夢にいちいち運命を感じるほどロマンチストではないが、なぜ今なのだろうか。

普段は頭の奥の引き出しにしまったままにしている思い出。そのまま、そっとしておいたつもりなのに。

なぜ今、彼女が夢に。

なぜ今、彼女のことを

僕は思い出して

もっとみる
「おやすみ」と「おはよう」のあいだ

「おやすみ」と「おはよう」のあいだ

「おやすみ」と彼が言い、「おやすみ」とわたしが言う。
「いってらっしゃい」とわたしが言い、「いってきます」と彼が言う。
 わたしが眠りにつく頃、彼は仕事に出かける。彼がどんな仕事をしているのか、わたしは知らない。
「些細だけれど、とても大事な仕事」とだけ、彼は自分の仕事のことを言う。それ以上は絶対に教えてくれない。何度か聞き出そうとしたけれど、適当にはぐらかされてしまう。
「それを知ったら」と、彼

もっとみる
ラブホテルに愛なんてないよ

ラブホテルに愛なんてないよ

相方は眠ってしまった。コンビニで買った、小さな日本酒の瓶を抱えて。ここら辺の相場よりちょっと高いよ、と言っていたラブホテルの一室。換気扇の音がうるさくて、スイッチを探した。

ラブホテルは、とても素晴らしいと思う。ラブホテル、という響きに、人々はあまりいい顔をしないけれど、今まで彼氏との貧乏旅行で泊まってきたホテルを思い出すと、あれならラブホテルの方がよかったな、と思ってしまうことが多々。ちなみに

もっとみる
飲み会悲喜交々

飲み会悲喜交々

 今日は職場の飲み会である。「またクラスター出てるんだからやめときゃいいのに」と皆が思っているが、部長が乗り気なのだから仕方がない。
 ちなみに私は、飲み会が大の苦手である。飲みニケーションの必要性を否定するわけではないが、会話の受け答えからお酌に至るまで、他人に気を遣うポイントが多すぎるのだ。飲み会が終わると、反動で夫に八つ当たりをしてしまう。いつも駅まで迎えに来てくれるのに、私は毎度のように、

もっとみる