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嫉妬してもいいし、不安になってもいい。

何かを手に入れた瞬間から、それを失う恐怖が始まる。

モノに限らず、人間関係にもそういうことってあるものです。
最初は「仲間になりたい」だったのが、いざ仲間になると今度は「仲間外れにされたくない」が始まります。

男女の仲も同じで「あの人と付き合いたい」と思ってる時が一番ドキドキしていていざ付き合いが始まると「あの人が離れていくのが怖い」と思うようになるケースもチラホラ。

F子の場合。

その典型的なパターンのようです。


意中の人だった男性とやっと付き合えることになったF子。しかし、その彼は、有名な遊び人。それがわかって付き合い始めたのですが、これまでは我慢ができたことでも、彼女という地位を手に入れたからには許せないことが出てきます。

先日、軽く新年会をと二人で飲んだ時のこと。F子はソワソワしていました。それが僕に伝わっているのをわかったF子は僕に言いました。

「あ、ごめん。さっきね、彼氏にLINEしたけど、返信がなくて。こういう時不安になっちゃうんだよね」

「さっきって?」

「2時間前くらい。まだ既読にならない」

「そっか。アイツなら2時間あれば他の女の子に行く可能性はあるからな」

F子の彼氏はそういうヤツです。

一日で朝昼晩と三人の女性と関係を持ったこともあるほどの、相当にヤヴァいヤツなのです。(彼氏については性依存症の可能性もあるので、現在勉強中)

「不安になるのって、よくないのかな。信じてないってことなのかな」

「んー、どうだろ。信じてないから不安を感じるのかもだけど。でも、全く信じられないなら付き合ってないでしょ。ということは信じてもいるんだよ」

「そうね。信じてるし、信じたい。でも、やっぱり不安はある」

「それでいいと思うよ。それが普通の感情だよ。不安になるのは、信じてないからとか言われれば、そうかもしれない。でもそもそも他人を100%信じることなんてなかなかできないからね」

「そう?」

「例えばさ、毎日一緒に暮らして、ちゃんと信頼関係のある親子でも、子供の言動や将来に不安を感じることがある。
それは自分の子がとても大切で、愛してるからだよね。よその子に不安になることなんてないから」

「そりゃそうだ」

「だからね、不安になることがいけないことじゃないと思うよ。それは『好きという感情の中に含まれているもの』と考えた方がいいと思う。相手がどうでもよくなったら不安もなくなるから、その時には実感できると思うなw」

「じゃさ、ヤキモチはどう思う? この前彼氏に『私が他の男と浮気したら嫌でしょ?』って聞いたら『俺も浮気する』って答えたんだよね」

「それは、まず会話になってないよね。『嫌かどうか』を聞いてるのに、それに対して答えてない。
それと彼氏、子供だよね。『嫌だよ』と言えばいいのに、それが素直に言葉にできない」

「それって子供ってこと?」

「子供といっても高校生くらいのね。もっと小さい頃は素直にヤキモチもやけるんだけど、成長するにつれ、例えば『お兄ちゃんは我慢しなさい』とか言われて、感情を抑えるようになってくる。
すると『俺、お前のことなんて全然好きじゃねーし』みたいな高校生ができあがるw」

「いるいるww」

「ヤキモチってさ、ストーカーが事件起こしたりする原因にもなってるかもしれないけど、ホントはとても自然な感情で、それってつまり人間にとって必要な感情だと思うんだよね」

「そうね。動物でも、赤ちゃんでもヤキモチ妬くしね」

「ナイフと一緒で、大切なのはその使い方なんだと思う。『ナイフは人を殺す道具、だから持っちゃダメ!』なんていう人いないでしょ?
それと同じで『ヤキモチは嫌な感情!』みたいに思ってたらさ、危険だと思うよ」

「なんで?」

「だって、自己否定につながるから。『ヤキモチは嫌な感情で、ヤキモチ妬くのはダメな人』→『それでもヤキモチ妬いちゃう私』→『私ってダメな人』になったら大変だろ」

「そうね」

「ヤキモチはとても自然な感情。ヤキモチ妬くのは全然悪いことじゃない。俺は女の子から『ヤキモチ妬いちゃうなー』とか言われたら『素直でかわいいなぁ~』とか思うよ」

「そう? ウザい女だなとか思われない?」

「全然ウザいだなんて思わない。でもね、やっぱり使い方なんだよ。例えば俺が他の女性と仕事の話しで二人で食事に行くとする。そこで『ヤキモチ妬いちゃうな~』はOK。
その先に何が続くかが大切でね。
『だから行かないで!(怒)』となると『仕事だよ!ヤキモチ妬くなよ!(怒)』とケンカになる。
それはね、ヤキモチじゃなくて、相手の行動をコントロールしようとしたから」

「うん」

「その先に『でも行ってらっしゃい。お仕事だもんね。そのかわり私も今度連れてってね』となるとこちらも『わかってるよ。君が一番だから。終わったらちゃんと連絡するからね』となる。ヤキモチがお互いの愛情確認の手段になってくれた。
ヤキモチ妬かないのが信じてるってことじゃなくて、
ヤキモチは妬くけど相手の行動をコントロールしようとしない、それが信じてるってことだと思うよ」

「そっかー」

「ヤキモチ自体は悪くない。問題はその使い方。経験上、素直に『ヤキモチ妬いちゃうな~』が言えない人の方がこじらせてる傾向にある」

「そうなの? 」

「相手に『ヤキモチ妬いちゃうな』の言葉も言えない方が、よっぽど相手を信じてないってことだからね。
だからね、不安になるのも悪くはない、嫉妬するのも悪くはない。それは信じてないからじゃない。ただ、使い方にはちょっと注意、これでいいんじゃない?」

「うん、わかった」

「お互い素直に。相手に今の感情を伝えてく事。これが一番。
で、どう? LINEの返信、入ってる?」

「えっと、あ、入ってる。『ごめん、寝てた』ってww」

「よかったなw」



F子が自分の気持ちを素直に言葉していき、彼もそれに安心して自分の気持ちを素直に言葉を出せるようになっていけば、この二人、案外うまくいくような気がしています。

いつまでたっても嫉妬も不安もなくなることはないような気もしてますが、でもそれも使い方。

ちょうどいいスパイスになってくれるといいなと思っています。



--藤原さくら 『Soup』--

ほんのちょっとの嫉妬だったり
ほんのちょっとの秘密だったり
逆にそれもふたりのスパイス

年をとっても
しわになっても
一緒にいて
恋のsoupを
ふたりで味わいつくしましょう

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