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批評&書評&音楽批評&散文

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どこまでも善良な文章を集めました。読んで心地よい気持ちになってもらえたら嬉しく思います。
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2019年10月の記事一覧

金字塔

金字塔

私の現在の立ち位置を述べてみたいと思う。立ち位置などと表すほど大層な経歴は皆無である。ただのサラリーマンとしか客観視に耐え得る呼名はない。しかし「何もない」おっさんが大層に振る舞うことこそが譲れない私の立ち位置だと表明したい。高校生が不滅の金字塔を打ち立てると宣言すれば美しい。51歳の爺さんがそれをやることは滑稽であり、しかも笑えない。つまり見苦しいと言えるだろう。そのようなことはわかっているし、

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まるちぷる あうと

まるちぷる あうと

みなさんが気がついていないか未体験なだけで別の世界はある。パラレルワールドとは少し違う。でも同じかな、なんていうものに時々出くわす。たとえば海外ドラマのフリンジ。あのドラマに出てくるいくつかのツール、アイテムには、あーこれだっていうのがある。たとえば彼ら彼女らが別の世界とシンクロをする時だ。どうやって?幻覚剤を使って。あれはLSDだ。たぶん。

そのシンクロを仮に「飛ぶ」と呼ぼう。シンクロも飛ぶも

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漆黒の存在を知っている

漆黒の存在を知っている

岡崎京子展を訪れたのは2016年だったと思う。この展示会をきっかけにして画家の方と知り合うことがあった。その人も同じ印象を展示会のあるブースについて語っていた。リバーズエッジの展示ボックスだ。

体感したあの空気はどこから流れてきたものだったのかと今でもあの感覚の元を探している。不思議な現象があったわけではないが、でも文字通り鳥肌が立った。漆黒のクロスに囲われたあの場所には未完成の物語があったのだ

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苦笑い運転手さん

苦笑い運転手さん

ある方の旅日記マガジンへ拙者の記事を入れてもらえた。とても嬉しいので海外での出来事もnoteに書いていこうと思う。そもそも文章がとても下手くそだから、少しでも人の興味をそそるネタで更新を重ねていきたいと思う。仕事の出張で中国やタイなどの東南アジア諸国へ行くことがある。そこで、閃いたのは異国の地における単独行動について。

先に断っておくと、英語も中国語も私は話せない。いや、話せなくても移動も寝泊ま

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孤立する独り善がりが孤独だよ。愛すべき孤独などというな

孤立する独り善がりが孤独だよ。愛すべき孤独などというな

先日、発売された中田満帆さんの新刊本を買った。それで中田満帆さんについて記事を書きたいと思った。でも書けないでいる。今夜は中田満帆さんの記事を書くことを宣言しておくに止める。この記事のタイトルは中田満帆さんとは関係ない。関係ないが関係ある。さっきTwitterで独り善がりな孤立は孤独じゃないなどと言っているバカをみつけてしまい、またそのツイートにいいねをするたくさんのバカに憎悪が湧いた。私の憎悪は

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絶望とはなんですか?

絶望とはなんですか?

2016年の9月に書くことが上手くなりたいと、詩の投稿サイトというものへ足を踏み入れた。詩を書く趣味をもっていたわけでもなかったし、詩を読むことが好きなわけでもなかった。読んだことがあった詩など宮沢賢治と中原中也とランボウの地獄の季節ぐらい。初めて覗いたその詩の投稿サイトでは自分の作品を投稿する前にまず、他人の投稿作品へのコメントが義務付けられていた。どうせなら一番上手くて一番人気がある作品を読ん

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私の現代詩2.0宣言「私は今も中身の無いこどもな異邦人です」

私の現代詩2.0宣言「私は今も中身の無いこどもな異邦人です」

読書人口はひと昔前とは違いかなり少ないと実感する。知人たちの様子からすれば10%いかないとみる。多くの人は日々の営みに疲れ文字を目で追い思考する忍耐が辛くて仕方がないのではなかろうか。

文字を打って創出するのがメインのSNSさえも、その思考の労力に疲れてしまうものではと察する。ところが、詩を趣味にされてる人々のコミュニティに身を置くと、実感する読書人口10%が70%になる。倍率が微妙かと思われる

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指差すことができない/大崎清夏 詩本評

指差すことができない/大崎清夏 詩本評

どう読めばいいのか困惑した、という感想が多い。
私が初めて詩集本というものを買った「指差すことができない」は中原中也賞を受賞された作品。これを読むと詩の手法がある小説とは何か、が逆説として理解されるだろう。外界を書いている言葉が自己の内側を表しているということ。形而下の外界を現す言葉が形而上の存在を書いているということ。読者は形而下から外界の実存を認識しようとする。しかし書かれている言葉は形而上の

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塩狩峠/三浦綾子書評

塩狩峠/三浦綾子書評

キリスト教がどうして人を惹きつけるのか、キリスト教によって人は救われているのか、宗教によって人は救われるのか。 私が持つ宗教への疑いを黙らせる書がいくつかあって、その一つが「塩狩峠」。 信仰がもたらす崇高な生き方とはその宗教が持つ源に殉教がなければならない。なぜならば非合理が持つ訴求力の最大値は死であるから。

すべて真夜中の恋人たち/川上未映子書評

以前から気になっていた川上未映子作品を買った。
ありきたりの恋愛話だという感想があるけれども、ありきたりな恋愛がこの小説のテーマだろうし今の世の中、ありきたりな恋愛さえも手に入れることが難しい。本当はありきたりではないのだと思う。
人の巡り合わせはとても確率が低いなかで起きていて、その出会いを描くにはありきたりな物語とする以外にない。奇跡は感じるか感じないかだということ。

ヘブン/川上未映子書評

ヘブン/川上未映子書評

ラノベかという読み始めの印象。
いや、最後までライトなプロットではあるのだけれども、宗教的な要素が一部にある。「学校のイジメ」を赦しの原理にまで至らせている。
中学生が吐く台詞としては少し違和感があるけれども。
舞台設定が世紀末以前であるよりも00年代の現在にしたほうがよかったように思う。90年代の終わらなかった中学生たちと、今の「破滅するかもしれない国の中学生たち」では大きく違っていて、他者から

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批評への酷評

批評への酷評

survofさんの作品は詩に馴染みのない人が読んでも良さがわかりやすいと思うのです。それはつまりカタルシスがあるってこと。「良さがわかりやすい」。それはわかりやすい浄化作用の体感とは違う。言うなれば村上春樹作品を読んだ時に受ける「読後のなんとなくな気分」であり、その気分を喩えるならばカタルシスであるということ。夕狩さんの批評文にはカタルシスは示されていないし、そのなんとなくな「読後の心地よい気分」

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