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#小説

ポアロのクリスマス

ポアロのクリスマス

・アガサ・クリスティ著

・早川書房

毎年クリスマス近くに刊行するよう執筆を続けた、晩年のアガサ・クリスティ。

出版社が「クリスマスにはクリスティを」というキャンペーンを行っていたそうです。

「ポアロのクリスマス」は、意外ですがアガサ・クリスティの長編作品の中で唯一「密室殺人」を扱った傑作と言われている作品です。

高齢の富豪シメオンは、
息子達とその妻、1度も会ったことのない孫娘にクリスマ

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RAVELラヴェル

RAVELラヴェル

・ジャン・エシュノーズ著

・関口涼子訳

・カバー画
リュック=アルベール・モロー
「ボレロを指揮するラヴェル」1930年

・みすず書房

公的な人物でありながら謎めいていた作曲家モーリス・ラヴェルの晩年をテーマにした、「音楽のような小説」と評される、詩集の雰囲気も持つ作品です。

ル・アーブルの港から、演奏旅行へ旅立つ日の朝。

不機嫌な入浴場面から物語が始まります。

「ラヴェルがアメリカ

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ハロウィーン・パーティ

ハロウィーン・パーティ

・アガサ・クリスティ著

・早川書房

「リンゴの木荘」というお屋敷で、夜に行われたハロウィーン・パーティ。

招待された推理作家オリヴァ夫人に、13歳の少女ジョイスが「殺人を目撃したことがある」と言い出します。
その後事件がおきてしまうのですが…。

オリヴァ夫人が直ぐに向かった相談先は、当然ですが、エルキュール・ポアロ宅。

「アップルポビング」、「スナップドラゴン」、「小麦粉切り」など、十代

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読書セラピスト

読書セラピスト

・ファビオ・スタッシ 著

・橋本 勝雄 訳

・ヴィルヘルム・ハンマースホイ装画

・東京創元社

「読書セラピー」を始めた、元国語教師のヴィンチェ。

訪れる人々の悩みを聴き、それに合った文学作品を処方。

ある時、同じ建物内に住む、読書家の女性が失踪する事件が起こり…。

「読書療法」
個々の相談者が何を必要としているのか、どれくらいの読書習慣があるのか、どのような問題を抱えているかなどを確

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わたしのいるところ

わたしのいるところ

・ジュンパ・ラヒリ 著

・中嶋浩郎 訳

・新潮社クレスト・ブックス

イタリアに住む、45歳独身女性の日常を描いた物語。

著者の両親はベンガル人、出生国はイギリス、育った国はアメリカ、40歳を過ぎて夫と二人の子供と移住した都市はローマ。

「孤独はわたしそのもの。孤独に動かされてわたしは書いてきた」という、著者ジュンパ・ラヒリのイタリア語による初の長篇小説。

目次

歩道で
道で
仕事場で

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失われた時のカフェで

失われた時のカフェで

・パトリック・モディアノ著

・平中 悠一 訳

・作品社

パリのカフェ。
常連客である、「ルキ」と呼ばれるミステリアスで魅力的な若い女性。

「ルキ」について、4人の人物それぞれの視点で語られる構成です。

人気作家であり、ノーベル文学賞受賞作家であるパトリック・モディアノの作品の中では、今のところこの作品が個人的に一番好きです。

・パトリック・モディアノ

1945年、フランス生まれ。

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鯨オーケストラ

鯨オーケストラ

吉田 篤弘 著

角川春樹事務所

地元のラジオ局で深夜の番組を担当している主人公。
ある日、17歳の時に絵のモデルをしたことを話したところ、彼によく似た肖像画を美術館で見た、という葉書が届きます。
主人公が肖像画を観に行ってみると…。

「自分が天国へ持っていきたいのは、何よりも音楽だ」

ここからは余談です。
ラジオが好きで、地元のラジオに出させて頂いていた時期もありました。

「もしかしてラ

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黒後家蜘蛛の会

黒後家蜘蛛の会

黒後家蜘蛛の会
アイザック・アシモフ著
創元推理文庫

ニューヨークにあるレストランの個室を舞台に月1回行われる晩餐会「黒後家蜘蛛の会」。
化学者、数学者、弁護士、画家、作家、暗号専門家の6名と、初老の優秀な給仕ヘンリーがいつも登場します。
毎回、未解決問題を抱えたゲストが一人招待され、登場人物達が真相を推理。
結局行き詰まりますが、最後はヘンリーの控え目な語りに皆納得し、無事幕が下ります。