戦争は女の顔をしていない(著:小梅けいと:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ:速水螺旋人)【「早く撃ちなさいよ」「そっちこそ早く撃ちなさいよ」ううっ、私はマンガ紹介の中を覗き込んだ。そこには】
旧ソ連のドキュメンタリ作品を、
まさかの日本でコミカライズ。
第二次大戦でソ連軍に従軍した女性兵士たちの物語だ。
著者が戦後20年くらいたってから、
それぞれの女性兵士たちに丹念に取材した成果を元にしている。
ノンフィクション・オムニバスである。
旧ソ連軍は女性を兵士として積極的に採用したことで有名だ。
女性スナイパーは数知れず、女性のエースパイロットまでいる。
現在ではなく、第二次大戦の頃の話である。
だがその実態は言わずもがな、華やかさとは対極にある。
それも男性兵士と違って理解されることは少ない。
その貢献はソ連にあっても常に過小評価されてきた。
ソ連は独裁国家であるため、
体制側の公式見解に逆らう内容は危険である。
だが日本でのコミカライズ版だからなのか、
ぎりぎりまでリアルな発言に肉薄している。
元女性兵たちもついつい公式見解に沿った無難な発言をしてしまいがちだが、
できるだけ当時のありのままの心情を知りたいという著者の試みによって、
本音を可能な限り救い上げる努力に成功していると言える。
といって本書の目的は決して反ソ連。
反体制というわけではない。
今の現実からかけ離れた「あのとき」をどうにかして再現することが目的。
何があったのか。
ただ真実を知りたい。
マンガは、当時の戦地目線で描かれたり、
あるいは取材に訪れる著者目線に切り替えられたり、
あるいは銃後や戦後の話にフォーカスされることもある。
ウクライナ戦争が始まってからも刊行が続けられている本シリーズは、
きっと今のロシアではもう読めないのだろう。
著者もだいぶ前にロシアから離れてしまったらしい。
悲しいだけの話もあれば、少しでも報われた人生もある。
圧倒的なリアルの前ではそれを悲劇と片付けることすらおこがましい。
単に「戦争の悲劇」として片付けてしまうのは信じられない傲慢さに感じる。
リアルには色がある。
ありのままの世界を、そのままの色彩で観れる自分でありたい。
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