美朏

いつかの幻想を思う日まで

美朏

いつかの幻想を思う日まで

記事一覧

あたたかい 橙色の生温い液体が 身体に、指に、口に纏わりつく 眠い まだ生きてる? 違う、今生まれたばかりかもしれない 誰かの腕の中にいるような心地良さ 今にもまた…

美朏
8日前
2

Sweety dream

根拠のない空想の雲の上を歩こう 赤く冷えた氷河をペンギンたちと游ごう 杞憂の森を幾何学模様の鹿と駆け抜けよう ピンク色のジンベエザメと海底の街で 焼きたてのパン…

美朏
2か月前
7

unknown

潤いを知らない海底 星の輝きを知らない夜 黄色を知らない鶯 風を知らない子供 君を知らない僕 愛を知らない僕 僕を知らない僕 漂流したシーグラス 削られることのない鉛筆…

美朏
2か月前
6

《短編小説》ネオチェリーブロッサム空港

大粒の涙が、暫く止まらなかった。 息苦しかった、この世の終わりのような朝を迎えた。 夢から醒めて良かったと心から思った。 時計もまだ止まったままだった。 最終章が…

美朏
3か月前
3

《ⅱ》ネオチェリーブロッサム空港

毎日飽きずに色々な話をした。 彼の生い立ち、好きな音楽の話、バンドメンバーの話、料理が好きなこと。 私の仕事、友達のこと、昔バンドマンを追いかけていたこと、飛行…

美朏
3か月前
5

《ⅰ》ネオチェリーブロッサム空港

街灯の光だけを頼りに歩く。 こんな夜も深い時間に、人は街を歩かないんだ。 そんな消えかけの薄暗い灯りの先に 遠くからでも目が眩むような光を放つ建物があった。 「ラ…

美朏
3か月前
2

《序章》ネオチェリーブロッサム空港

疲れ切っていた。 こんな小さな街で 人間関係と理不尽な社会に嫌気が差し 波打際に立っているような日々を過ごしていた。 休みの日に、徒歩30分の場所にある空港へと足を…

美朏
3か月前
3

ホテル

「会いたかった」 凍てるあなたの姿 痛いほどに冷えた黒い躰 少しずつあたためる 脊髄から赤く続く一本の線と 紅深く染まる小さな海の中で 少しずつ火照るあなたを見て…

美朏
3か月前
2

猫の笑う夜

猫が笑いながら僕に問いかける 人は人を助けられない 誰もお前を助けられない お前が手を差し伸べなければ お前は何の代わりにもならない お前のままなのだ

美朏
3か月前
1

溢れる

こんな良い夜の月は見えない 満月でも朏でも朧月でも構わない どんな形でも愛しているから こんな良い夜だから見なくて良いの 君と交わした言葉だけで 僕は充分満ち溢れた…

美朏
3か月前
7

《最終章》ネオチェリーブロッサム空港

「…ここの空港のロビーって、もうバンドマンしかいないね」 私は無理やり笑って見せた。 「なんだそれ。」 君は馬鹿にもしない、興味のない声色で応えた。 空港の出口を…

美朏
4か月前
5

料理上手な君のごはん

---------------------------------------------------------------- 朝5時、お腹空いたって言ったら笑ってた。 キムチ鍋の残りで、うどんを作ってくれる君。 すこし辛く…

美朏
4か月前
4

跳ぶとき

青の砂漠に立つ 何万ものピンク色の傘 一本の傘だけが 重たい枷を引き摺って、無心で歩く 「傘をひらけば、風に乗れるかも」 淡い期待が、走馬灯の中では おやすみの合図…

美朏
4か月前
2

星屑に

輝く君に模られて、初めて僕の姿が写った 輝く君の背中を追って、陰にならないように走った 君が好きな世界に僕を巻き添えにしてよ 君の作った僕で良いから連れ出してよ…

美朏
4か月前
4

あす

地球儀が廻り終わる日 カーテンも靡くのを辞めた 落ちてきた満天の星屑を搔き集めた 天使の梯子に照らされた道を のらりくらりと登った 走馬灯が終わりに差し掛かる頃…

美朏
7か月前
6

アオイヒ

百日紅の花を摘む猿を思う 補助輪の音が五月蝿く鳴り響く 葵の舟が川を渡らう 金木犀の香りに嫌気が差す ロイヤルミルクティーの甘ったるさに涙が伝う 物語の終止符の打ち…

美朏
8か月前
6
朏

あたたかい
橙色の生温い液体が
身体に、指に、口に纏わりつく

眠い
まだ生きてる?
違う、今生まれたばかりかもしれない

誰かの腕の中にいるような心地良さ
今にもまた、眠ってしまいそう

山吹の花のような賑わいが聴こえてくる

—良いことでもあったの?

青楓が風との出逢いに嬉々としている

—私も忘れられないよ、この景色が!

菖蒲の花のように、凛と佇んでいる

—でも、なぜ震えているの?

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Sweety dream

Sweety dream

根拠のない空想の雲の上を歩こう

赤く冷えた氷河をペンギンたちと游ごう

杞憂の森を幾何学模様の鹿と駆け抜けよう

ピンク色のジンベエザメと海底の街で
焼きたてのパンの香りを追いかけよう

純白のシマウマに乗って
エアーズロックを横目に散歩しよう

ルーブル美術館に迷い込んだ
蟻の行列に横入りしよう

夜にしか咲かない金青の桜を眺めよう

美しくて憂鬱な世界に君と出かけよう

unknown

潤いを知らない海底
星の輝きを知らない夜
黄色を知らない鶯
風を知らない子供
君を知らない僕
愛を知らない僕
僕を知らない僕
漂流したシーグラス
削られることのない鉛筆

灰色に塗られた文字に盈ち盈ち虧け
造花で色取られたコンクリートを足早に駆く

《短編小説》ネオチェリーブロッサム空港

《短編小説》ネオチェリーブロッサム空港

大粒の涙が、暫く止まらなかった。
息苦しかった、この世の終わりのような朝を迎えた。

夢から醒めて良かったと心から思った。
時計もまだ止まったままだった。

最終章が先に来てしまったのでまとめた記事です。

あとがき考え中。いつか更新します。

《ⅱ》ネオチェリーブロッサム空港

《ⅱ》ネオチェリーブロッサム空港

毎日飽きずに色々な話をした。

彼の生い立ち、好きな音楽の話、バンドメンバーの話、料理が好きなこと。

私の仕事、友達のこと、昔バンドマンを追いかけていたこと、飛行機が好きなこと。

とにかくたくさんの言葉を交わした。

週末はライブハウスで彼の歌う姿を眺めた。
そして休みの日には、空港まで散歩した。
私にとっては、どれも至福の時間だった。

彼にとってもそうであって欲しかった。

彼の生き様が好

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《ⅰ》ネオチェリーブロッサム空港

《ⅰ》ネオチェリーブロッサム空港

街灯の光だけを頼りに歩く。
こんな夜も深い時間に、人は街を歩かないんだ。

そんな消えかけの薄暗い灯りの先に
遠くからでも目が眩むような光を放つ建物があった。

「ライブハウス?」

こんなところにあったんだ。
昔、友達とロックバンドを追っていたのを思い出した。

たまには良いか、と不自然にも吸い込まれるように
ライブハウスの中へと引っ張られていった。

フロアは、ほぼ満員と言っていい程に人が溢れ

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《序章》ネオチェリーブロッサム空港

《序章》ネオチェリーブロッサム空港

疲れ切っていた。

こんな小さな街で
人間関係と理不尽な社会に嫌気が差し
波打際に立っているような日々を過ごしていた。

休みの日に、徒歩30分の場所にある空港へと足を運び1日1便 東京行の飛行機を眺めることが唯一の楽しみであり、心の安らぐ時間だった。

だが今は、その余裕すらもない。

気が付けば、今年も終わりに差し掛かっていた。

最後に友達と会ったのはいつだっけ
思い出そうとしても思い出せな

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ホテル

ホテル

「会いたかった」

凍てるあなたの姿
痛いほどに冷えた黒い躰

少しずつあたためる
脊髄から赤く続く一本の線と

紅深く染まる小さな海の中で
少しずつ火照るあなたを見て

私は咽をならす

あなたの顔は知らない
このまま知らなくてもいいの

「もう離れないでね」

猫の笑う夜

猫が笑いながら僕に問いかける

人は人を助けられない
誰もお前を助けられない
お前が手を差し伸べなければ
お前は何の代わりにもならない
お前のままなのだ

溢れる

溢れる

こんな良い夜の月は見えない
満月でも朏でも朧月でも構わない
どんな形でも愛しているから

こんな良い夜だから見なくて良いの
君と交わした言葉だけで
僕は充分満ち溢れたから

どんな形でも側にいたいから
今夜だけは月を見ないことにしたの

《最終章》ネオチェリーブロッサム空港

《最終章》ネオチェリーブロッサム空港

「…ここの空港のロビーって、もうバンドマンしかいないね」
私は無理やり笑って見せた。

「なんだそれ。」
君は馬鹿にもしない、興味のない声色で応えた。

空港の出口を抜けると
君は中に留まった。

私に見向きもせずに
さよならのコトバも無く。

しばらくして振り返ると
桜色の髪をした女の子と楽しそうに話す君。

長い冬が終わった。

これが私達の最後だった。

料理上手な君のごはん

料理上手な君のごはん

----------------------------------------------------------------

朝5時、お腹空いたって言ったら笑ってた。
キムチ鍋の残りで、うどんを作ってくれる君。
すこし辛くて、でも木綿豆腐が優しくて。

----------------------------------------------------------------

誰かのた

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跳ぶとき

跳ぶとき

青の砂漠に立つ
何万ものピンク色の傘

一本の傘だけが
重たい枷を引き摺って、無心で歩く

「傘をひらけば、風に乗れるかも」
淡い期待が、走馬灯の中では
おやすみの合図

青の砂漠に、躰を委ねる

傘が呟く
「なんて気持ちが良いのだろう!」

星屑に

星屑に

輝く君に模られて、初めて僕の姿が写った

輝く君の背中を追って、陰にならないように走った

君が好きな世界に僕を巻き添えにしてよ

君の作った僕で良いから連れ出してよ

君は待たない何もかも
それが僕の望みだから

何億光年離れても見える一番星でいてくれればそれで

僕の願いを叶えるのは君だけ

あす

あす

地球儀が廻り終わる日

カーテンも靡くのを辞めた

落ちてきた満天の星屑を搔き集めた

天使の梯子に照らされた道を

のらりくらりと登った

走馬灯が終わりに差し掛かる頃

物語の終末なのだと知る

地球儀が廻り終えて
もう一周だけ、と手を架ける

アオイヒ

アオイヒ

百日紅の花を摘む猿を思う
補助輪の音が五月蝿く鳴り響く
葵の舟が川を渡らう
金木犀の香りに嫌気が差す
ロイヤルミルクティーの甘ったるさに涙が伝う
物語の終止符の打ち方をいつまでも考える