記事一覧
《短編小説》ネオチェリーブロッサム空港
大粒の涙が、暫く止まらなかった。
息苦しかった、この世の終わりのような朝を迎えた。
夢から醒めて良かったと心から思った。
時計もまだ止まったままだった。
最終章が先に来てしまったのでまとめた記事です。
あとがき考え中。いつか更新します。
《ⅱ》ネオチェリーブロッサム空港
毎日飽きずに色々な話をした。
彼の生い立ち、好きな音楽の話、バンドメンバーの話、料理が好きなこと。
私の仕事、友達のこと、昔バンドマンを追いかけていたこと、飛行機が好きなこと。
とにかくたくさんの言葉を交わした。
週末はライブハウスで彼の歌う姿を眺めた。
そして休みの日には、空港まで散歩した。
私にとっては、どれも至福の時間だった。
彼にとってもそうであって欲しかった。
彼の生き様が好
《ⅰ》ネオチェリーブロッサム空港
街灯の光だけを頼りに歩く。
こんな夜も深い時間に、人は街を歩かないんだ。
そんな消えかけの薄暗い灯りの先に
遠くからでも目が眩むような光を放つ建物があった。
「ライブハウス?」
こんなところにあったんだ。
昔、友達とロックバンドを追っていたのを思い出した。
たまには良いか、と不自然にも吸い込まれるように
ライブハウスの中へと引っ張られていった。
フロアは、ほぼ満員と言っていい程に人が溢れ
《最終章》ネオチェリーブロッサム空港
「…ここの空港のロビーって、もうバンドマンしかいないね」
私は無理やり笑って見せた。
「なんだそれ。」
君は馬鹿にもしない、興味のない声色で応えた。
空港の出口を抜けると
君は中に留まった。
私に見向きもせずに
さよならのコトバも無く。
しばらくして振り返ると
桜色の髪をした女の子と楽しそうに話す君。
長い冬が終わった。
これが私達の最後だった。