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《ⅱ》ネオチェリーブロッサム空港


毎日飽きずに色々な話をした。

彼の生い立ち、好きな音楽の話、バンドメンバーの話、料理が好きなこと。

私の仕事、友達のこと、昔バンドマンを追いかけていたこと、飛行機が好きなこと。

とにかくたくさんの言葉を交わした。

週末はライブハウスで彼の歌う姿を眺めた。
そして休みの日には、空港まで散歩した。
私にとっては、どれも至福の時間だった。

彼にとってもそうであって欲しかった。



彼の生き様が好きだ。
私が持ってないものを持っている彼が好きだった。
いつしか彼の夢が、私の夢になっていた。
私の人生なんてどうでも良かった。
鮮やかな景色を彼が見せてくれれば、それだけで充分だった。


そんな気持ちが大きくなりすぎて
無意識に彼にプレッシャーを与えていたんだ。



歯車が徐々に崩れ始めた。
止まっていたはずの時計が動き始めた。


いつの間にか口数が減っていた。
最後に話したのはいつだっけ。
最後に会ったのは?


考えても、何にもならなかった。
考えても、何にもならないことを考え続けた。

 

日曜日は久しぶりに、空港へ散歩しようと伝えた。


「わかった。」

一言だけ、彼は呟いた。




《最終章へ続く》

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