マガジンのカバー画像

妄想のカケラたち

176
書く習慣アプリのお題 シロクマ文芸部のお題 ....などから妄想したもの
運営しているクリエイター

#ショートストーリー

ミッドナイト・ゼリー【ショートショート】

ミッドナイト・ゼリー【ショートショート】

ミッドナイト・ゼリー

形にならずに散らばった言葉を型に入れ、ゼリー液を流して冷蔵庫へ。

夜がいっそう深くなったころ、再び冷蔵庫のドアを開けると、眩く白い光を浴びせられてしまった。

これで今夜も私に「夜」は来ないだろうと確信しながら冷蔵庫から出した型から慎重に中身を外し、皿の上に無事に着地させると、ぷるんっ♪と波打つ深夜のゼリー。

この間、月面に着陸した探査機にもこんな緊張があったのだろうと

もっとみる
踊る彼女【ショートショート】

踊る彼女【ショートショート】

踊る彼女

カラカラと乾いた風に舞う木の葉
赤い靴を履いたパジャマ姿の彼女も優雅に無心に舞っている。

TikTokに載せたらBuZZるかも?
悲嘆に暮れすぎてとうとう打算が生まれ始めたよ(苦笑

彼女の呪いを解くのを諦めた訳じゃないけれど、こうやって見守り続けるのもアリなんじゃないかなって思うんだ。

お題「木枯らし」

書く習慣アプリのお題「木枯らし」から #ショートショート

夢を囮にする者【ショートショート】

夢を囮にする者【ショートショート】

夢を囮にする者

夢から覚めた午前3時
よく覚えていないが、
日向の匂いのする温かくて、ふわふわした心地の良い夢を見ていたような気がする。

現実は真っ暗で冷たく真冬の夜明けはまだ遠い。

でも、再び夢の中に戻るのはためらわれ、寝床からはいだし明かりをつけた。

「ちっ!」

舌打ちした何かの影が部屋の隅から消えたように思えたけれど、それは、気のせいかもしれないし、心地良い夢に乗じて私を連れてゆこ

もっとみる
りんごのつぶやき(シロクマ文芸部)【ショートショート】

りんごのつぶやき(シロクマ文芸部)【ショートショート】

今回はこちらのスピンオフ作品になります↓

りんご箱から鈍色の空を見上げて僕はみゃぁ~と鳴き、まだ柔らかい爪でカリカリと箱底をひっかきました。
箱が深くて小さな僕は外に出られないのです。

何度かこちらを覗く人の顔がちらりと見えたけど僕と目が合うと困った顔をして去っていきました。

ぽつりぽつりと冷たいものが顔を濡らし始めたころ、ある人が僕を拾いあげました。

「寒かったね、大丈夫かい」

彼はし

もっとみる
【SS】フユコの歩く理由はフユコにもわからない(シロクマ文芸部)

【SS】フユコの歩く理由はフユコにもわからない(シロクマ文芸部)

ただ歩く、
ただただ、ひたすらに、歩いています。

歩く理由はあったような気がするけれど、忘れてしまいました。

思い出そうと考えるのもなんだかちょっとねぇ...

ただ、立ち止まってはいけないような気だけはして、夕日に急かされながら、ただただ歩いています。

「フユコおばあちゃん!
 どこ行くの?
 みんな探してるよ!」
息を切らせて走ってきたセーラー服のかわいいお嬢さんから声をかけられました。

もっとみる
『食べる夜』買えました!(シロクマ文芸部)

『食べる夜』買えました!(シロクマ文芸部)

食べる夜 100g 1200円(税別)
やっと買えました〜!!!\( ˆoˆ )/

カルディ5軒はしごしてやっと見つけました💦
調味料コーナーの食べるラー油の隣にありましたよ。最後の1個でしたけど...( ´△`)

瓶の外観はあの「ご○んですよ!」
...っぽい?ww

でも、蓋がしっぶ〜〜い銀色です

夜をイメージしたラベルに描かれた月が素敵!
私の大好きなイラストレーターさんの作品なんで

もっとみる
私の日常に紛れる幸せの美しさについての研究 #シロクマ文芸部

私の日常に紛れる幸せの美しさについての研究 #シロクマ文芸部

私の日常を溶かした液体を蒸留すると綺麗に澄んだ液体と濁った液体に別れた。

澄んだ液体をさらに濾過すると幾らかの粒子が取り出せる。
この小さな粒たちが一般に「幸せ」というものなのかもしれない...と思いながら標本瓶に入れしっかりと蓋をして棚に保管する。

棚にはたくさんの同じような瓶が並んでいて
陽にかざすとキラキラと美しく輝く
でも、その輝きには個体差があって
意外にも、ささやかでより小さな粒ほ

もっとみる
空を泳ぐクジラの歌が聴ける街 #シロクマ文芸部

空を泳ぐクジラの歌が聴ける街 #シロクマ文芸部

街クジラの歌が今日も聴こえてきました。

夕方の支度の手を止めて外に出ると、
オレンジと金色で染めた夕焼け空をゆったりと泳ぐクジラがいました。

どこから来るのか?
なぜここに来るようになったのか?
誰にもわかりませんが、夕暮れになると空に姿を現すクジラはこの街の日常です。
そして、街にやってくるので「街クジラ」と
いつの間にか皆でそう呼ぶようになりました。

今日も歌いに来てくれてありがとう。

もっとみる
そして、大人になろうと決めた #妄想のカケラ

そして、大人になろうと決めた #妄想のカケラ

#100 そして、大人になろうと決めた

じゃーまた明日!

あの日の僕は、手元にあるゲームステージのクリアが重要で、惰性のさよならを君に送った。
何よりも、明日も明後日もずっと今日と同じ朝がきてまた会えるものだと疑う余地もないほど僕は子供だったのだ。

あの頃の僕は君と憂鬱を共有しあえるほど大人ではなかったけれど、
せめて、あの時、君と向き合って「また明日」と別れていたら、もしかしたら、少しは君

もっとみる
妄想のカケラ【みんな寂しがりや】

妄想のカケラ【みんな寂しがりや】

#86 みんな寂しがりや

日の暮れかかる公園のブランコに
ポツンとひとり、少女が座っています。

お母さんと二人暮らしの少女は
真っ暗な家にただいまをして
ひとりで明かりをつけて
お母さんを待っている間が寂しくて
少しでも家でのひとりぼっちが少なくなるように
お友達が帰ってしまった後もこうして一人でブランコに座っているのです。

ひとりは寂しいとか怖いとか
だから公園で時間をつぶしているとか

もっとみる
妄想のカケラ【人生ビール】

妄想のカケラ【人生ビール】

#81 人生ビール

忘れてしまいたい苦い記憶を
忘れてしまったことにしたくて
とりあえず瓶詰にしていたが
とうとう部屋が瓶で埋まってしまった

これでは、忘れたいのに忘れられない
瓶だらけの部屋で途方に暮れた

中身が入っていては町のごみ収集に出すこともできない
産業廃棄物としてなら処理できるのだろうか???
と悩む毎日

ある満月の夜

結局、忘れられないものなのだ
いつまでも。

....と

もっとみる
妄想のカケラ【雨男の朝】

妄想のカケラ【雨男の朝】

#62 雨男の朝

今日の天気は晴れ
ところにより雨が降るでしょう

お天気お姉さんがにこやかに伝える

ところによる...か、
雨男の僕は今日も傘を持って
でも、レインコートはいらないかな...

雨男は毎日荷物が多い。

書く習慣アプリのお題「ところにより雨」から #ショートストーリー

妄想のカケラ【ひなまつりの週末】

妄想のカケラ【ひなまつりの週末】

【ひなまつりの週末】

閉店間際のスーパーに飛び込む

割引シールが貼られ
ぽつんと残る
豪華なちらし寿司が気になって
手に取り
「ひなまつり」という
女の子的なイベントに
急遽のっかってみることにした週末

ひとりぼっちだけど
じゅうぶんオトナだから
甘酒ではなく缶ビール
ひなあられよりもジャーキーだけど__

書く習慣アプリのお題「ひなまつり」から #ショートストーリー

妄想のカケラ【また歩き始めるために】

妄想のカケラ【また歩き始めるために】

【また歩き始めるために】

長い長い旅の途中...

砂漠地帯を歩き続けた彼は
見つけたオアシスで喉を潤し
木陰に寝転がった。

優しい陽射し
心地よい風

もういっそ
こんな旅はやめて
ずっとここでくらそうか...

思わず弱音が出たけれど
気にする暇もなく睡魔が訪れ
自らまぶたを閉じた。

彼は少しだけ
この厳しい現実から
逃れることにしたのだ。

起きたらすぐ
また、歩き始めるために___

もっとみる