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Photo by
hiro_hasuike
妄想のカケラ【人生ビール】
#81 人生ビール
忘れてしまいたい苦い記憶を
忘れてしまったことにしたくて
とりあえず瓶詰にしていたが
とうとう部屋が瓶で埋まってしまった
これでは、忘れたいのに忘れられない
瓶だらけの部屋で途方に暮れた
中身が入っていては町のごみ収集に出すこともできない
産業廃棄物としてなら処理できるのだろうか???
と悩む毎日
ある満月の夜
結局、忘れられないものなのだ
いつまでも。
....と諦めのような
割り切りのような
開き直りのような
ともかく、
そういう記憶とも共にあることを決め
栓抜きで瓶をかたっぱしからあけはじめた。
瓶の中身がシュワシュワとあふれだし
月夜に溶けはじめる。
長い間、瓶詰にされていた大半の忘れてしまいたい記憶は
すでに時間に溶かされ、ただの炭酸水になっていたけれど
溶け切らなかった多少の記憶が苦く濁りながら胸の中にしまわれた
これも時間とともになくなっていくかもしれないし
そうではないかもしれないし....
でも、もうどちらでもいいことだ
これからは人生の苦味もビールのように
味わって飲み干していくのだから_
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