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山登りで乗り越えた、「今の自分を認める」という壁 ~摂食障害、心に住むモンスターとの付き合い方~


たまに。
とてつもない恐怖に
全身が
襲われることがあります。

どんどん
太ってしまうんじゃないかという恐怖
食べるのが止まらない恐怖
私には何もないという恐怖
一人になってしまうんじゃないかという恐怖。
反動、過食、喪失感。
それに伴う、希死念慮…。

自分の心のハンドルを
握れなくなるくらい、
得体も知れない感情が
湧き上がってくるのです。

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私は数年前、
摂食障害と診断されました。
ピーク時は30キロ近くまで体重が減り、
骨と皮になっていく身体を
嬉しい、とさえ思っていました。

今は健康的な身体に戻り、
心も元気になって
休日は夫婦で旅を楽しんでいます。

完治というゴールには達していませんが、
「そういう自分もいる」というスタンスで、
症状と折り合いをつけながら
生活をしています。

それでも。
どんなに調子のいい日が続いていても、
何かがフラッシュバックしたかのように
全身が
恐怖に包まれる時があるのです。

他人には理解しがたいかもしれないですが、
自分がとてつもなく
太って見える時があります。
(そう「見えて」しまっている…らしいです。)

実際、最近胸が大きくなりました。
「あれ?おっきくなってきた?」
始めは少し違和感を
感じる程度だったのですが、
「また大きくなってる!」
変化していく体型になかなか慣れず、
そこにワクチン接種の
体調不良も重なって
恐怖のスイッチが
入ったみたいです。

何回も経験してるはずなのに、
この「スイッチ」が入ってしまうと
なかなか負の連鎖から
抜け出せなくなってしまいます。

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いつのまに
こんなに太ってしまったんだろう。

こんなに顔に肉がついて
足も腕も太くなって
全身に脂肪がついて…。

上手く食べれないから?
でもこれが私なりの食べ方なんだ。

制限できる日もあれば、
太りたくない気持ちとは逆に
食べてしまう時もある。
でも運動も続けてるし、
それにもう
昔みたいに食べることを
我慢したくない。

でもこのままでは
どんどん太ってしまう。
 他に何を努力したらいいのだろう。
やっぱり
好きなものを食べちゃいけないの?
お菓子を食べるのはいけないの?

やっぱり私は我慢しないと
太ってしまうんだ。
太るのが怖い。
どこまで太ってしまうんだろう…。

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こんな風に
とにかく太ることへの恐怖が
体中に巡るのです。

それなのに。
前述したように
アンビバレントな私は
「肥満恐怖」が襲ってくると
「過食」の症状が強まってしまいます。

過去の過度な食事制限の反動か、
太りたくないと思うほど
食べてしまうのです。
「食べちゃいけない」
と思うと
「こいつ我慢しようとしてる、
また餓死寸前になるぞ!」
と身体が本能的な危険を感じて
「食べろ!」
と私をコントロールしてるみたいに。

心と身体が違うことをしてしまうのです。

(昔は痩せ願望がとても強く、
「太るのが怖い」と思うと
どれだけでも我慢ができました)

”心と身体が違うことをする”
これが連日続くと
結構、精神的にきつくなってきます。

私の場合は
朝昼晩の最低3回は起こるし、
一日中この相反する気持ちが
消えない時もあります。

そして、上手く食べれないと
「自分は何をしているんだろう」と
自己嫌悪に陥り、
どんどん自信がなくなって、
痩せたいと思うほど
太っていく体に、
「やっぱり私はダメなんだ」
「病気なんだ」と
生きてる価値を感じられなくなります。

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恐怖に耐えきれなくなってくると
押し込めていた気持ちが
溢れ出し、
迷惑と分かっていながら
旦那さんである耳男くんに
確認してしまいます。

「私すごい太ったよね」
「なんでこんなに太ったんだろう」
「どうしよう…」

でも耳男くんは決まって
「太ってないよ」
「脳が太って見せてるんだよ、
大丈夫だよ」
と返してきます。

「本当に?」

「それに体重が増えたとしても
それは太ったじゃなくて
健康になってるってことだよ」

毎回おんなじことを聞いて
申し訳ないなと思います。

「本当に本当に太ってない?
腰回り明らかに脂肪ついたんだけど」

「うん。太ってる人は
手の甲に肉ついてるよ」

耳男くんの言葉が
本当かは分かりませんが、
「太ってないよ」
嘘でもそう言ってもらえると
「そうなのかな、
私大丈夫なのかな」
と少し恐怖が和らいできます。

でも、それでも
「健康的になってるってことは
太ったということだよね」
「そもそも耳男くんの
太ってない基準が甘いんだよ」
「安心して食べてたら
太ってしまった」
と落ち込んでしまうこともあり…。

鏡に映る自分を見ては
どうしようもなく
イライラが募ります。

(スイッチが入るとこんな風に
ドツボにハマりまってしまうのです)

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そしてイライラしてくると
今まで穏やかだった日常が
バランスを崩し始めます。

まず、「食べる」ことに
過敏になります。 
料理を作るのが怖くなったり、
自分がつくる料理に
自信が持てなくなったり、
人が食べる姿が気になったり…。

次に、容姿に自信がなくなります。
外に出たくなくなり、
化粧もしたくなくなり、
パジャマ以外の服を着るのが
怖くなったり…。
しまいには
お風呂に入るのも嫌になります。

頭では「痩せ願望」による
認知の歪みだと分かっているのに、
どうしても
自分が太ってしまったことに
混乱してしまうのです。

笑顔になれなくなって、
食事の時間の空気も悪くなります。

しまいには、
何年経っても上手く食べられない…
一生こうやって悩み続けるのかな…
ずっと辛いままなのかな…?

病気にならなかったら
もっと人生違っていたのかな…
こんなに毎日食べる度に
辛い気持ちになるなら…
と、死にたい気持ちにまで
心がもっていかれる時があります。

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で、最近、
その症状に苦しめられていました。

そして恥ずかしながら、
不安な気持ちを解消したくて
母に訳の分からない感情を
綴ったラインを送ったりしていました。
もう立派な大人なのに。

返信の内容に困ると分かっているし、
母とやりとりすると
甘えが混じってしまうので
症状が強い時は連絡しないように
心がけているのですが…。

この歳にもなって
本当に申し訳ないなと思います。

携帯を片手に老眼鏡をかけ、
悩みながら文章を打つ
母の姿が浮かびます。

でもどんな言葉も
本当の意味で私を救いません。

だって。
頭では分かっているんです。
「自分が自分の今を
認めるしか突破口をはない」と。

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そんなこんなな時でした。

10月10日、朝の4時半。

「よし、今から山登り行こうか」
と耳男くん。

体育の日だから?
嬉しい!と同時に
いきなりの山登りに準備に戸惑います。

でも、この山登りが
今の現状を認められずに
イライラMAXだった私の心に
変化をもたらすことになるのです。

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それにしても。

心は私の一部なのに、
どこか第三者のような
切り離された違う存在に
感じるのはなぜなのでしょう。

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「準備できた?」
「うん!」
「靴下は長いほうがいいよ、
無視に刺されるよ」
「はい!」

「準備できた?」
「うん!」
「羽織るもの持ってる?
山は寒いよ」
「はい!」

「電気消した?」
「うん!」
「クローゼットの電気も?」
「…見てくる!」

出発前は父親と娘のよう。

さあ今度こそ、準備OK!
シュッパーツ!

耳男くんと初めて
山登りをしたのは確か、
茨城の筑波山。

今回はそんな筑波山を
望むことができる
宝篋山に行くことに。

外に出ると、ザ・曇り。
空は雲で真っ白。

でも登ることに意味がある!
久しぶりの山登りに
じわじわとテンションが
上がってきます。

ドライブしながら途中で朝ごはん。
釣り休憩をはさみ、
7時半頃、登山口へ。

6つのトレッキングコースがある中で
(ワクチンの副作用もあり、)
今回は登り時間の短い山口コースを
チョイス。

相変わらず曇り空だけど、
「晴れるよ!(天気の子より)」
と願いながらスタート!


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✴︎✴︎✴︎✴︎YAMANOBORI MODE ✴︎✴︎✴︎✴︎

出迎えてくれたのは
足元に咲く、小さな花

黄色、白、ピンク、紫
秋の花は可愛い儚さがある

整備された
コンクリート道から一転、
ジブリの森
もののけ道へ
草木、緑の世界に囲まれる

地面にはゴツゴツした石
張り巡らされた木の根っこ
ボコボコした突起物
永遠に続きそうな坂道を
登ってゆく

途中には川のせせらぎ
地面を潤す恵みの山水
紅葉した落ち葉が
疲れた足を和らげてくれる
時に木の葉は
クッションになり
雨傘になる 

たくさん集まれば
儚いことも強くなる

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落石した大きな岩
崩れた橋
閉ざされた道
よく見ると
誰かがその場にあるもので作った
渡り道

一見、
行き止まりに見える道も
何度も草を踏み
自分で道をつくる
飛んでも渡れそうにない川も
石と小枝を投げ積み重ね
2人で道をつくる
木の杖を手に
一歩一歩用心して渡る

工夫次第で道はひらける
進めた自分が嬉しくなる

陽が射さない道に
コロンと笑うキノコ
転がるどんぐり

秋の山道には
花が少ないけど
日が当たる場所には
ちゃんと
色のついた花が
小さく可愛く咲いていて
険しかった顔に
笑顔をくれる

ふとその後ろを振り返ると
木々の合間から空
黄緑と薄茶色の田んぼ
小さくなった町並み

こんなに登ってきたんだと
少し嬉しくなる

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一歩一歩は
頼りなくとも
歩幅は狭く、ゆっくりでも
少しずつ着実に
前に進んでいる

どんな景色があるかは
分からない
晴れか曇りか雨かも
分からない
だけど
目指したいゴールがある、
だから進める

椅子変わりの岩
あなたが敷いてくれた
やさしさの上に腰掛け
喉を潤す
足らなくなったら
こまめに水を
つど休養を
我慢しないことそれが大事

人生はもっと長距離山道

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知らない人もここでは同志
挨拶とほほ笑み
それだけでいい
下る人登る人
子どもも大人もみんな同じ

一人じゃ重力に
負けそうな坂道も
「押そうか」とやさしい手
滑り転びそうな場所も
その手が力強く支えてくれる

一人じゃない
ゴールまであと0.5キロ

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「あと少し」

そう思った途端、
最後の最後に今日一番の
急な坂道
少しだけ
心折れそうになる

まだ着かない
あとどのくらいだろう 
それでも
全身を使い、登る

ゴールは必ずある

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『そうだ。
あと少し、あと少しだ。

大丈夫、登れるよ。
強くなったんだ。
もう、負けたくないんだ
自分に。』

なぜだか
いろんな感情が溢れ出し
泣きそうになる。

心を濁らせる、
あの日から心に住み始めた
モンスター。
食べると太るぞと騒いだり
もっと食べろと煽ったり。
私を苦しめる
モンスターとの日々が、
山登りをしている
今の自分と重なった。

『モンスター、聞いて。
君には
負けたくないとか
勝ちたいとか
もうそんな気持ちはないんだ。
だって君は私の一部だから。
私の弱さだから。』

『だから
私は私を受け入れたい。
弱い私もひっくるめて
たどり着きたいんだ、
「自分を受け入れた世界」に。』

『自分に山頂の景色を
見せてあげられるのは
自分なんだから
自分を幸せにするのは
自分なんだから…!』

チカラいっぱい登りながら
漫画の主人公のようなセリフが
湧き上がある。

ワンピースも鬼滅の刃も
読んだことないけど。

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そう、
きっと人生には
「幸せに生きる」という
ゴールがある。

「幸せを望める山頂」がある。

知らず知らず
子どもの頃にたどり着いていて、
山頂からいろんな幸せを
眺めるのが
当たり前の人もいれば。

登り途中に障害が多かったり、
道を間違えたり
案内の看板を見失ったり
突然の災害で遭難したり、
最後の最後で
幸せにたどり着けない人もいる。

山頂までたどり着けるかは
人それぞれ。

私は今どこ?

この場所と同じ、
あと少しなのかもしれない。

あと少しなのに、
急な坂道に惑わされ
かたちのない山頂を見失って、
自分で勝手に
辛くなったり苦しくなったり
してるのかもしれない。

「幸せ」まであと少しなのに、
進むことを諦めたくはないな。

私が進まなくちゃ
山頂は一生現れないんだから。

体型が変化していく自分を
嫌いになりたくないな。
自分を嫌いになって
人生を終えたくないな。

踏みしめる足に力が入る。

いや、待てよ。
実はもうピークを乗り越えて
とっくに山頂に
辿り着いているのかもしれない。

私の感情はいろいろ変わるけど、
耳男くんと生きる日々は
人生の中で一番、
私のまま幸せを感じられている。

昔みたいに頑張って
幸せを作り出そうとしなくても
何気ない日常の中に、
気づけば幸せがある。

幸せを見えなくしているのは
私の心にかかるこの雲だ。
心を濁らせるモンスター、
私が作り出した雲だ。

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「パン子ちゃーん!すごいよ!」

ハッと我に返る。

先に進む耳男くんが手招きしている。
最後の力を振り絞って
広い歩幅で前に進む。



山頂だ。

「わーっ!すごーい!」

「ねっ!めっちゃ景色いいでしょ?」

「うん!ってか空!
晴れてる!青空!太陽!」

「晴れたね」

「うん!嬉しい!」

360度、ぐるりと
空が見える。

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長い緑のトンネルを
抜けた途端、
視界いっぱいに広がる空。

青空が見える。
景色が見える。

登り始めた時は
雲で真っ白だったのに
青と水色と白の空、
そして太陽。
遠くの町並みも見える。
自由が見える。

たまらなく嬉しくなった。

雲に重なる太陽は
オーロラのように
虹色に輝いていて、
青空の中を
ススキが気持ちよさそうに
泳いでいる。

風に流れていく雲。
朝は見えなかった筑波山も
景色を眺めているうちに
顔を出した。

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まさか本当に晴れるなんて
思わなかった。
空からの嬉しいサプライズ。

木のダイニングテーブルに
腰を下ろす。
太陽の光が暑い。
耳男くんがバックから上着を出し、
日除け代わりに
フード被せてくれた。
たったこれだけで
暑さが和らいで
涼しくなるからすごい。

青空を眺め、パンをかじる。
足をグンと伸ばし、
手を広げ風を感じる。
そこにあるのは自然だけ、
自由な自然だけ。
気持ちいい。

幸せだ。

耳男くんは
目を閉じて脱力している。
何を考えてるんだろう。
何を想ってるんだろう。
耳男くんのことだ、
何も考えてないだろう。

その間、目の前の筑波山を
ボーっと見つめていた。

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そういえば
はじめて筑波山に登った時は
「痩せたい」一心で登ってたな。
山登りしたら痩せられる!
嬉しい!
だから登りたいって。

その頃は拒食症で
今の半分くらいしか食べてなくて
エネルギーが全然足りてないのに、
動きたくて仕方なかった。

今から登るのに
登る前から具合が悪くて、
フラフラしてて。
さすがに耳男くんに
「今から登るんだよ!コロッケ食べな!」
って怒られたな。

一生懸命登っているつもりなのに、
どんどん後ろから抜かれて。
「ゆっくり」が
私の最高のスピードで。
岩を登りたくても足があがらなくて、
岩にへばりつきながら
半泣きでよじ登ったな。
服と手が泥だらけになった。

急な坂道にすぐダウンして
「具合悪いよ、もう無理だよ」
と泣きべそかいて、
耳男くんにおんぶしてもらって。
何度もつまずいて、コケて。
周りに咲く花を見る余裕なんて
なかった。

それでも
好きな人と山を登ることは
楽しかった。
一緒に見た道中や山頂の景色は
ずっと心に残っている。

何年か前のことだけど、
もっとずっと
昔のことみたいだ。

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って、ちょっと待てよ。
あれ…?

筑波山を登っていた私と
今、筑波山を眺めている私。

別人だ。

身体も心も。

耳男君と同じペースで
山登りできてるし、
川はヒョイっとジャンプできる。
岩だって楽しくグングン登れる。
周りの景色や花を見渡す余裕もある。
耳男くんに
おんぶしてもらわなくても
自分の力で進めるようになった。
もちろん、コロッケだって
美味しく食べれる。

カリカリ小枝女だったのに。
すごいぞ、私。
たった2、3年前の話だよ?

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最近、
不調がなくなってきて
嬉しい反面、
変わっていく自分に
戸惑っていたけど。

フラフラしなくなったのが
おかしいんじゃない。
体温があがったのが
おかしいんじゃない。

足に肉がついたのが
おかしいんじゃない。
胸がでてきたのが
おかしいんじゃない。
体全体がふっくらしてきたのが
おかしいんじゃない。

これが、
「私」なんだ。
健康な私なんだ。

今までがおかしかったんだ。
命を縮めるために
生きていたようなもんだ。

人は幸せに過ごすために
生きてるんだ。

また痩せることにとらわれて
ストレスを溜めて、
自分で自分を不健康にして
どうする。

体型が全てだと痩せすぎて
早死にした人たちがいるじゃないか。
身体の自由を失って
歩けなくなった人を
見てきたじゃないか。
何歳になっても
過去や誰かを妬み、
鬱になる環境を変えることができずに
心病んでる人たちを
見てきたじゃないか。

日々の行いは
健康になるために、
ある。
健康になるために
人は食べるし、
健康になるために
人は眠るし、
健康になるために
人は運動をする。

幸せになるためのベースは
健康なんだ。

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それなら?
今の私とても良いじゃないか。
とても健康じゃないか。

「大丈夫?」「また痩せた?」と
不健康な見た目を
心配されることもなくなった。

棒みたいに細い人を見て
「ああはなりたくないな」と
思うようになった。
睡眠薬なしで寝れるようになったし、
軽やかに体が動く。

もちろん、心だって。
くじけそうになっても、
「健康が大事」だと
今みたいに自分で自分の心を
立て直すことができている。

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気づいたんだ。

「痩せてていいね」「スタイルいいね」
と言われたり、
「あの人細いな」「痩せてるな」
と思われるのは、
ほんの一瞬。

誰かが一瞬思って、
一瞬で忘れていく。

私の喜びも、
ほんの一瞬。

そんな一瞬のために
ずっと悩み苦しんでいたこと。

不健康になって、
短い人生の時間をさらに
自分で縮めていたこと。

誰かからの
一瞬の評価のために
私は24時間、
体型を気にしてたんだ。

きっかけは些細なことだった。
自分に自信がなかった時、
ダイエットを始めて
痩せていく身体に
少し自信がついた。
痩せれば痩せるほど
「スタイルいいね」と言われて
嬉しかった。
そしたらいつの間にか
体型が自分の価値に
なっていった。

「誰かのためじゃない。
痩せてる自分じゃないと
自分が嫌なんだ」
そうは言ってたけど、
本当は人によく見られたくて
無理をしていた。
痩せてることで誰かから
認められたかったんだ。

よく、摂食障害の根本は
母子関係に原因あると
言われるけど、
そんなの結局、
責任転嫁にしかならない。
人のせいにしてたら
弱いままだ。

誰かのせいにすることも
誰かに左右されることも
誰かのために生きてしまうことも…。
どれも
自分を認められないからだ。

乗り越えるべき相手は、
自分の弱い心なんだ。
自分を認められず、
今を認められず、
逃げてきた弱い心なんだ。

そして、
私はそれに気づけた。

不器用な生き方をしてきたこと、
人に認められたくて
病気になってしまったこと、
その事実を認められたんだ。

なんでこんなステキな状態を
受け入れてあげれないんだ。
愛してあげられないんだ。

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そうだよ。
胸が大きくなったのは
太ったではなく、
ホルモンのバランスが
整ってきているんだ。
もともと胸は
Eカップあったんだから。

よく考えたら、
一番痩せていた時から
何年も経った。
あの頃みたいに
骨張った身体のままじゃないのが
普通だし、
痩せてることだけが
私の価値じゃない。

私の笑顔の旅写真を喜んでくれる
家族がいる。
私の笑顔を何より喜んでくれる
耳男くんがいる。

きっと笑顔こそ、
私の価値だ。

そのために好きなことがあって、
好きな人がいる。

そして、私は
笑顔になれる幸せの景色に
たどり着いている。

こんなにステキな場所にいるんだ。

素晴らしい景色は
もう目の前にあるじゃないか。

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そう想った時。

あれ?なんだろう
何に悩んでいたんだろう?

確かに
何かが抜けた、
何かを越えた。

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いつの間にか
山登りで感じた想いが
私の心にかかっていた雲を
流していた。

暗い雲がはけ、
心の中を温かい太陽が
包んでいた。

とても不思議で、
だけど
とってもスッキリした感覚だった。

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家に帰って、
勇気を出して
身体の変化に向き合ってみた。

「最近違和感だった
この胸と腕が擦れる感じ。
腕が太ったせいだと思ってたけど、
単純にカップのサイズが
合ってなかっただけかも。
胸が収まってなかったのかも」
とサイズを大きくしてみた。

すると、
「あれ?擦れない。
胸がちゃんと収まった。
胸がある…
谷間がある…。


うん、
こっちのほうがキレイだ。」

そう思えた。

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その一瞬がとても嬉しかった。

自分の変化を
認められた自分が嬉しかった。

今の自分を認められたら
「嫌い」と思ってた部分が
「ステキだね」と思えた。

そして、
それがそのまま勇気になった。

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誰だって
病気じゃなくったって、
変わりたいと望みながも
変化に不安になるものかもしれない。

現実から
目を逸らしたくなるのかもしれない。

でも、逃げるから
ちゃんと見ないから
悪い妄想におちいって
自分を「嫌い」になってしまうんだ。

どんどん心の視野が狭くなって
小さな穴から
ひとつの方向からしか
自分を見なくなって、
どんどん負の連鎖に陥ってしまうんだ。

今の自分を肯定してあげないと
たぶん一生、
人生は苦しいままだ。
人生をラクにする近道は
自分を認めること。

そしてきっと
いつかは認めてしまうんだ。
どうあがいても
認める日がくるんだ。
それなら早いほうがいい。
その分、
幸せを眺められるんだから。

あがく時間って苦しいだけで
本当に時間がもったいない。

どうせいつかは
この世界からいなくなるんだから、
生きてる今は
楽しいほうがいいい。

嬉しい、楽しい、大好き、がいい。

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一皮、剥けた気がした。

たった半日の山登りが
私を変えた。

山道を登っていく中で
少しずつ少しずつ
偏った歪んだ考えが
中心に平らに戻っていった。

何より
気持ちがとってもラクになった。

今でも顔が丸いなと思うけど、
「まいいか、次、次。
マスクで隠せるし
好きなことしよ。
一瞬見えた自分の顔に
一日落ち込んでももったいない」

足が太くなったなと思うけど、
「まあいいいか、
ゆったりした服着てるし。
坂道ぐんぐん登れるし」

と思えるようになった。

自然と自分をラクにする
考え方ができるようになっていた。

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今日だって
鏡を見て何も思わなかったわけじゃない。

でも、
さあ、次。

とマイナスの感情を流せた。
心に漂う雲を流せた。

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ねぇ、モンスター。
あの日心に住み始めた
モンスター。

私は君が憎かった。

だけど君はラクに生きることを
教えにきてくれたんだよね。
ずっと悪者だと思ってごめんね。
悪者になってでも
難しい生き方をしていた私に
サインを送ってくれたんだよね。
私の心を
救おうとしてくれたんだよね。

ありがとう。

私をステキな世界に
導いてくれたのは君で、
私にステキな景色を
見せてくれたのは君で、
そんな君こそ
ステキなモンスターだよ。

今度は私が君を救うから。
大丈夫だよ。
キミを愛しているから。

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摂食障害を乗り越えていく中で、
変わっていく部分。

それを
「ステキだね」と思えた時、
私たちは
本当の意味で
キレイになれるのかもしれない。

大事なことは
現実を見ること。
「ステキ」になっている
自分に気づき、
認めてあげること。

そしたら、きっと
自然と心の雲がはけて
笑顔が増えるから。

幸せはつくるものじゃなく、
あることに気づくことなんだ。

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やっぱり笑顔が一番だ。

山登りをして、
いつの間にか
食卓に笑顔が戻った。

私が笑うと本当に
あなたは嬉しそうな顔をして
ニコニコと
身体を揺らすよね。

あなたと同じ。
私もあなたの笑顔が
とっても嬉しい。
あなたが笑うと
心がニコニコになる。

「笑顔が日常」って
一番幸せな景色かもしれないね。

笑ってくれてありがとう。

山登り、空、雲、花、景色、
ありがとう。

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泣き虫 パン子

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